1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

12月1日・ウッディ・アレンの名ぜりふ

2019-12-01 | 映画
もう師走。12月1日は、かつて旅客機が突っ込んで崩壊した世界貿易センタービルの設計者である日系米国人ミノル・ヤマサキが生まれた日(1912年)だが、天才映画監督ウッディ・アレンの誕生日(1935年)である。

ウッディ・アレンは、1935年、米国ニューヨーク市のユダヤ人家庭で生まれた。本名は、アレン・スチュアート・コニグズバーグ。父親は宝飾品の細工を手がけたり、ウェイターをしていた。
 アレンは、16歳のときにマジシャンとして舞台にでた。それ以後、しだいにコメディに興味をひかれ、高校時代、コメディアン風のギャグの原稿を書いては、雑誌に投稿するようになる。
 19歳のころ、ギャグ作家、放送作家となり、コメディアンとして舞台に立ったりもした。
 29歳のとき、映画「何かいいことないか子猫チャン」で、脚本、主演を担当して映画デビュー。以後、彼独特の映画作りをつづけてゆく。

映画監督には、どんな状況で撮っても、映画全編のシーンというシーンに、その監督の署名がべたべたとなぐり書きされたような映画を撮ってしまう奇才監督がいる。「映画の悪魔」と呼んでもいいこのタイプ監督たちのなかには、チャールズ・チャップリン、ルイス・ブニュエル、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ジャン・リュック・ゴダール、北野武、そして、ウッディ・アレンが入るだろう。

ユダヤ人であることを前面に押しだし、痛烈にそれを皮肉った脚本。
日常生活のなかでのユーモアを徹底的に集めてちりばめたくせの強いせりふ。
コメディのなかに人間のやさしさや悲しみを浮き彫りにする詩情あふれる独特の作風。
作品に「ボギー! 俺も男だ」「アニー・ホール」「マンハッタン」「カイロの紫のバラ」「マジック・イン・ムーンライト」などがあり、本国アメリカ国内よりも、むしろ日本やフランスなど外国で評価の高い大監督で、映画「さよなら、さよならハリウッド」のウソのような皮肉な結末は、じつはリアリズムだった。

「ウッディ・アレン」監督の映画なら、まずみて損はない。
アカデミー賞を総なめにした「アニー・ホール」など、ため息の漏れるような名品である。この映画の最後のせりふがまた、とてもいい。
作中、主演のウッディ・アレンが、自分が手離してしまった、とりもどしたいけれど、もうもどらない恋をふり返り、映画をみている観客に向かって語りかけ名セリフがある。
「すてきな彼女と知り合えた喜びを思うとき、こんなジョークを思いだします。ある男が精神科医を訪ねて、こういうのです。『先生、うちの弟は頭がいかれているんです。弟はすっかり自分がニワトリだと思い込んでしまって』。すると医者が『では、どうして弟さんを連れてこないんですか?』と尋ねます。そして、男はこういうのです。『そうしたいんですが、でも、たまごが必要なものですから』と。この話は、わたしが人間関係について感じるところそのままです。人間関係というのは、まったく道理にあわなくって、いかれていて、ばかばかしいものです、それでも、わたしたちはまたひどい目にあいつづけるわけで、きっとそれは、わたしたちがみんな、卵を必要としているからだと思うのです」
(2019年12月1日)



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