3月20日は、詩人フリードリヒ・ヘルダーリンが生まれた日(1770年)だが、心理学者B・F・スキナーの誕生日でもある。
バラス・フレデリック・スキナーは、1904年、米国ペンシルヴェニア州サスケハナに生まれた。父親は弁護士だった。
若いころ、スキナーは作家志望だった。ハミルトン・カレッジの学生だったころ、彼は詩人のロバート・フロストと知り合い、短編小説を見てもらった。フロストから「印象深い」という評価をもらったスキナーは、大学を出た後、ニューヨークのグレニッチヴィレッジに下宿して小説を書きつづけた。彼は、父親に紹介してもらった石炭会社での苦情処理係の仕事の経験を題材にした小説『無煙炭会社の苦情処理委員会』という処女作を出版したが、ぱっとしなかった。
スキナーは、自分に作家として表現すべきものがないと悟り、進路を変えた。彼は、自分がずっと人間の行動に興味をもっていたことを思い出し、また、バートランド・ラッセルの『哲学』や、イワン・パブロフの『条件反射』を読んで、こう考えた。自分のするべきことは人間の行動を正確に描くことで、それは文学でなく、科学である。
スキナーはハーヴァードの大学院へ入学し、人間行動の反射について研究した。
27歳のとき、ハーヴァード大学で博士号を取得したスキナーは、ミネソタ大学、インディアナ大学で教え、そして41歳からハーヴァード大学で教鞭をとり、斬新な発想による実験や理論をつぎつぎと打ち出し、新しい行動主義心理学を構築した。20世紀でもっとも影響力のあった心理学者の一人とされる。
44歳のとき、彼は小説『ウォールデン2』(邦題は「心理学的ユートピア」)を発表した。これは、行動主義の理論にしたがって注意深く設計された環境下に人間をおくのなら、そこに住む人間はおのずと善をおこなう、創造的で魅力的な人間になっていく、という行動主義の主張を物語化したもので、小説では、千人の住む大規模な共同生活体「コミュニティー」の生活ぶりが描かれている。
『ウォールデン2』は、ロングセラーとなり、この本の読者たちがツイン・オークス・コミュニティーやロス・オルコネスなど、実際にコミュニティーを立ち上げ、それらは現在でも続いている。スキナーは、1990年8月、白血病により没した。86歳だった。
スキナー博士の名は「オペラント条件づけ」で有名である。
ここに、てこを押すと、えさが出てくる仕掛けのついた箱「スキナー・ボックス」を用意し、ねずみを入れる。あるとき、ねずみが偶然てこに触れ、えさが出てくる。これが何度か繰り返されるうち、ねずみは自分から進んでてこを押すようになる。これが「積極的な強化」である。逆に、てこに触れると電気ショックが走る仕掛けだと、ねずみはてこに触れなくなっていく。これが「消極的な強化」で、このように、みずからの行動の結果に影響されて行動を起こすようになる条件反射を「オペラント条件付け」と呼ぶ。学校で、いい成績をとった生徒を教師がほめるのは積極的な強化であり、悪い点数の生徒をしかるのは消極的な強化で、オペラント条件付けの理論は教育現場でよく応用される。
スキナー博士は言っている。
「教育とは、学習したことがらが忘れ去られたとき、なお残っているところのものである」(Education is what survives when what has been learnt has been forgotten.)
(2025年3月20日)
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