マァちゃん その１

マジックというメスのアフガンハウンド。

その子は、冷たい雨の日、飛行機に乗って三沢空港に着いた。
生後二ヶ月、猫より小さな、堅太りの子だった。
前日からケージに入れられて、貨物室で過ごしたこの子は、北国の寒さと
始めての場所、初対面のわたしに緊張して、ぷるぷる震えていた。
目と目が合ったら、ちょっと上目遣いに、あたしを見たのだが
その目がまた、なんと大きい！
車に乗せるのに、ちょっと躊躇してから、ケージから出して
あたしの黒い革ジャンの懐に、そっと入れた。
ジッパーを少し開けて、顔を出させてやった。
顔を見たとたん、マジックという名前が浮かんだ。
わたしは、革ジャン越しになでながら、静かに何度も呼びかけた。

マジック。マジックや。仲良くしようね。

マジックは、おとなしく抱かれていた。
家に着いたら、猫の部屋に驚いたようだったが、すぐに慣れた。
自分より大きな猫に囲まれて、雌猫を母親と間違えた。
写真の真ん中、黒い子がマジックです(*^。^*)
吸い付かれてるのは、未婚の雌猫。とても迷惑そう(^▽^;)>゛

甘えん坊のマジックは、すぐに自分のことを「猫」と認識してしまった。
猫が行く所は、どこにでも行く。
しまいには、タンスにまで上がってしまった。
当然のことに、猫のように飛び降りることは、できなかった。
「きゅー、きゅー」
鼻にかかった、甘えた声で鳴き続けた。
テーブルには上がる、椅子には座る、猫に叱られるとまっしぐらに
いつも、あたしの懐に飛び込んできた。
しかも。
最初に抱かれたように、後ろ向きに潜ろうとする。
なにしろ大型犬なので、あたしの膝に、後ろ向きに座る格好になる。
座ったらあたしより大きくなっても、まだ、その癖が抜けない。

マヌケだねぇ。
苦笑いするあたしに、甘えて鼻をこすりつけてくる、マァちゃん。
とっても可愛いのです。