フェズからバスで450㎞も南下し、サハラ砂漠への入口にある都市・エルフードへ到着したのは11月2日。
翌朝、50㎞先のメルズーカ大砂丘を目指し、暗い中をジープで出発した。
電燈がないので、星空がとてもきれいだ。
オリオン座も北斗七星もはっきりと見えた。
砂漠では朝晩かなり冷え込む。
ありたけの衣類を着込み、スカーフで頭を覆い、日の出前の砂丘を歩いた。
ズブズブと足が砂の中にめり込む。
ラクダに乗った人が、悪戦苦闘する私たちをゆうゆうと追い抜いていく。
隣にいたモロッコ人の男性が腕を取って、引っ張ってくれた。
30分ほどで小高い丘に到着。次第に東の空が明るくなり、太陽が昇り始めた。
なんと美しい光景だろう。
言葉もなく立ちすくみ、日の出を見ていた。
すると、腕を組んで引っ張ってくれた男性が、「シットダウン」という。
座ると、私の名前を聞き、アラビア文字で砂に名前を書いてくれた。
感激していると、おもむろにポケットから砂の入った瓶やアンモナイトの化石やらを取り出し、砂の上に並べ始めた。
旅行会社が用意したガイドだとばかり思っていたら、そうではなくて、土産売りのおじさんだったのだ。
欲しいものはないので、チップをあげて退散したが、中には断りきれずにたくさん買い込んだ日本人もいるようだ。
異国では親切な人には注意せよというが、まさにその通り。