腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

大逆転裁判 ~成歩堂龍ノ介の冒険~

2015年08月14日 02時46分04秒 | ニンテンドー3DSゲーム感想文
自分の誕生日に発売されるゲームってや、特別な存在って感じがするやん。まるでそのゲームが、俺を祝福してくれているかのような。
クリエイター様が俺のために作ってくれたかのような。これは嬉しいよ。もちろん、買うしかないだろう。それも特別装丁版を。
という訳で、予定にはなかったんだが、発売日に購入した次第である。ありがとう巧舟氏。ありがとうカプコン。
……誕生日プレゼントを自分の金で自分に買うって、おかしくない? 言うな。言うな!! 黙って乾いた笑いを堪えとけ。
大人はな、時に馬鹿にならなきゃやってられんのだよ。ゲーム業界に貢献したんだからいいじゃねーか。はぁ……。

「大逆転裁判 ~成歩堂龍ノ介の冒険~」である。シリーズの外伝なのか仕切り直しなのか、久々の「巧舟製作の逆転裁判」である。
逆転裁判シリーズは、1~3までは極めて順調に展開したものの、皮肉にもシリーズ最大の売上を記録した4にて、大きく頓挫。
その後生みの親である巧氏は外伝「レイトン教授VS逆転裁判」を手がけ、本編の続編5は別人が製作するようになった。
まぁレイトンVSも大型タイトルだから、形としては問題ないかもしれんが……肝心の出来が、な。売上も、相応のものだったし。
俺は正直、巧舟氏の力量にそろそろ疑問を抱いてきている。逆裁3までは文句なく面白かったが、それ以降はどうなのか。……。
ここは「帰ってきた巧逆裁」をやってみるしかなかろう。時代設定に大きな変化があるが、ゲームにはあまり関係なかろう。
ADVは、クリエイター個人の力量が大きく反映されるジャンルである。誤魔化しが効かないが、質が高ければ名声は独り占めだ。
さぁ見せて下さい巧さん。俺は良けりゃ絶賛悪けりゃ糞味噌。非常に分かり易く身勝手で、善良ないち受け手でさぁ……。


……うーむ。取り敢えず、ゲーム内容はいつもの逆転裁判である。舞台はもちろん裁判所で、相手の矛盾を突いて事態を壊していく。
裁判前には証拠と情報集めの探偵パート。全5話。主役も時代も変わったけど、シリーズを知っていれば説明書不要である。
「逆転裁判の巧舟」は、やはり「逆転裁判の巧舟」だった。これを安定した作風と取るか、幅がないと取るか。……うーん。
タイトルデモ無しも同じ。BGMはあったけど。テキストが流れる際の「ココココ」という音も同じ。あれうるさいから嫌いなんだが。
難癖をつけると、「大」を付けるスケールは感じなかったな。いつもの逆転裁判であり、想像を超えるものではなかった。はぁ。

今作の全体的な感想は「不快感が溜まる作品」かな。イライラとは少し違うが、ムカムカするものが腹にずっと残り続けた。
初代逆裁のキャッチコピーは、確か「嘘を暴く快感」だったはず。「異議あり!」と証拠を叩き付ける快感こそ、シリーズの肝である。
……が。今作にももちろんそれはあるのだが、それが不快感をブッ飛ばす域に達していなかった。それだけ不快感が強かった。
プレーを続けられないほどの、ではない。3DSを叩きつけたくなるような、でもない。でも顔を顰め、低い唸り声を上げたくなるような。
プレーヤーにストレスを与え、要所でそれを一気に快感に変換する……てのはゲーム制作の常套手段だと思う。
今作はそこがキッチリ出来てなかったんかなぁ。それで売ってきたシリーズだったはずなんだがなぁ……。

ゲーム開始。第一話の被告は、いきなり主人公である。プレーヤーはワッパを嵌められた男の分身としてこの世界に入ることになる。
主人公が被告になることは、過去の逆裁でもあった。……でもこれ、多用していい手段ではないと思う。プレーヤーへの負担が大きい。
言うまでもなく主人公は無実であり、また逆裁の常として、馬鹿みたいな異常理屈により殺人犯扱いされ、検事らに罵倒される。
もちろん主人公はそれに反発するが、まだ法廷に不慣れという設定なので、声も態度も弱々しい。俺としては腹立ってしゃーないのに。
単純に非常に不愉快だった。何で俺がこんな目に、と。こんなこと思うの俺だけなのか。巧さんはこんなこと考えないのか。
更に、何と第二話でも容疑者となる。おいおいおい。まさかの連続殺人犯扱いに唖然としたよ。巧さん、成歩堂のこと嫌いなの?
ユーザーに強い不快感を負わせる設定を、二話連続で採用。「それを覆す快感をちゃんと用意している!」と自信があったのだろうか。
裁判の結果当然疑いは晴れるが、それで検事らが土下座するわけでもない。マスコミが騒いでくれるわけでもない。ただ無実になるだけ。
これでは腹に溜まった澱は消えないよ。俺を犯人扱いした連中は懲戒免職にくらいしろよ。ふざけんな、人の人生を何だと思ってる。

検察や警察はもちろん、濡れ衣を着せた真犯人(や協力者)に、強烈なお返しが出来ない。この点は今作全体で非常に不満に思った。
第一話では、外交的理由から罪に問えず、なぁなぁで裁判が閉じられる。第三話では、捏造の無実の末、真犯人は謀殺される。
更に第四話では犯行の自覚が全くない。……こんな事件ばかりで、「極悪犯を論理と粘りでボコり、地獄へ落とす」ことは一度もない。
逆裁は言わば「正義の物語」である。対立軸に強烈な極悪がいれば、それがより映える。でも今作にはそういう悪役がいない。
3のゴドーのような「魅せる」悪役でもない。極悪はいても、逃げられたり勝手に死んだり。不快感は晴れずに残るだけ。
どうしてこんな構成にしたんだろう。中で作ってる人は麻痺してるのか? 矛盾を解く快感だけで全部賄えるわけじゃないんだよ……。

そしてやっぱり、今作でも「逆転裁判ピンチ」の不快感は強い。分かっていたことではあるが、改善に期待してもいた。
しかし全く変わっていなかった。いつも通り被告は出鱈目な状況で殺人犯扱いされ、思考能力のない裁判官や陪審員に人生を左右される。
逆裁シリーズの逮捕にはとにかく「動機」の視点がない。また凶器は重視されるが、それの入手経路等は一切鑑みられない。
「通ってる大学の教授を、飲食店で他の客もいる中、白昼堂々射殺した」……これが第一話で主人公にかかる容疑だ。
主人公と教授に怨恨の関係があったのか、銃の入手経路は、そんな議論は一切ない。「普通に考えて」こんなアホなことは起こらん。
その後も「人を殺した後に部屋の鍵を閉めて密室にし、クローゼット内で寝てた」や「前を歩いてた人をいきなり刺した」で犯人扱い。
裁判に入ってもそんな出鱈目に突っ込むのはプレーヤーだけで、主人公ら弁護側でさえ真面目に議論しようとする。ンな次元ちゃうやろ。
また当然、裁判中には何度もピンチが訪れる。主人公が頭を抱える。絶体絶命の危機であると同時に、「逆転」が起こる前振りである。
……が、いつも通り、その「作られたピンチ」にちっとも納得出来ない。まだ突っ込みどころあるし、向こうの主張は穴だらけだ。
けどプレーヤーが直々に裁判に乗り込んで異議ありを唱えることはできない。俺はあくまで成歩堂の脳に寄生させてもらってる身だ。
詰まる所、感情移入ができない。キャラと一緒に悩み苦しめず、いつも違和感と置いてけぼり感に纏わり付かれる。はぁ。

……それと……「文明開化の日本と世界最先端の大英帝国が舞台」と聞いて予感はしていたが……「日本侮蔑」の描写も多かったな。
「極東の未開文化」「野蛮な猿」のような言い回しが多い。こんな直接的な表現ではないが、いちいち日本を馬鹿にされる。
問題なのは、巧氏が「日本ならこんな表現をしてもいい」と思ってることだ。まぁこれは日本の創作全体に言えることかもしれんが。
もし朝鮮半島が舞台ならこんな表現は絶対にない。他の国でもそうだ。何故か日本だけは、貶めても問題ない。ムカつくねぇ……。
これ言い出すと話がそれまくるからこの辺にするが、嫌な予感が的中したのは残念だったな。巧さんもそういうクリエイター様だった。
まぁこんなもんだよな……。

極めつけは、終わり方だな。今作、ちっとも物語が完結していない。数々の伏線を残してEDを迎える。殆ど「前編」と言っていい。
逆裁はこれまでシリーズが続いているが、各作品はそれぞれでちゃんと解決していた。「各話」であれば、謎を残して終わるけども。
しかし今作は、露骨に謎を残したまま終わる。「次回作への引き」レベルではなく、プレーヤーがずっと引っ掛かってるた謎を、だ。
DLCで補完する様子もないし、完全に続編前提だ。事前情報一切なくこれは、どう考えても不誠実である。どうなんだよ巧さんよ。
こんなことをされると、仲間キャラでさえどこか信用できなくなる。亜双儀は本当に「良いもん」なのか? 味方なのか?
少なくとも今作だけでは分からんよ。後編のラスボスになってても不思議じゃない。理屈? そんなん逆裁だから何でもアリだよ。
続編前提なら、今作にそれと分かるサブタイをつけること。そうでないなら、せいぜい匂いを残す引き程度に収めておくこと。
今作はどちらでもなかった。当然終わり方に納得などできず、不快感が残ってしまった。はぁ……。

俺は「逆転検事」以外全部やってるから、シリーズファンを名乗っていいと思う。……そんな俺は、今作で、正直逆裁に限界を感じた。
作られた逆境、無理矢理なピンチ。思考停止した裁判官に陪審員、そんなキチガイに真面目に取り組まなければならない環境。
矛盾を突き事態を動かしていく快感は今もあるが、様々な不自然さから溢れる不快感はそれを凌駕するようになってきた。
作品を重ねて巧氏のシナリオ作りが進化したわけでもなく、逆にネタを消費し続けることで、ピンチ作りがますます強引になってる。
昔は斬新さやキャラの魅力で補えたけど、今作にそれは正直ない。遊べないわけじゃないし、まぁ面白いんだが、不快感が募るという。
俺はもう、こんな「人工ピンチ」は飽きました。制作側にそれをスムーズに見せようとする努力が一切見られないのが不快です。
矛盾の論理性を考えるだけで、シナリオ製作は手一杯なのかねぇ。そんな風に暖かい目で見てきたが、もう割と限界である。
……つっても、こんだけ前編丸出しな作りだと、後編も買わざるを得ないってところがあるが。やったね巧さん、大成功だよ。はぁ。
俺はもう、長くプレーしているシリーズ作品には、なるべく甘く接したいのよな。そうしないと何もかも消えちまいそうだから……。


舞台が19世紀ということで、今では当たり前の「科学捜査」の類は一切不可能になっている。具体的には指紋摂取や血液型検査等だ。
俺は現実でも以前から不思議に思ってるんだが、科学捜査のない時代って、事件をどう調べてたんだ? どうやって犯人逮捕してたんだ?
曖昧な証拠や出鱈目な証言に左右されまくって、冤罪の発生率が洒落にならんことになりそうだが……あんま考えん方がいいか。うーむ。
今作でもプレー前にそこを心配したが、ここは上手くすり抜けていたと思う。科学捜査がなくてもいいように裁判が工夫されていた。
一応血液型で個人を特定する装置……のようなものも登場するんだが、「根拠が無い」として証拠採用されない。そんな世界だ。
逆に言うとどの事件も現代でなら一瞬で解決するので、そう思うと妙な虚しさがあった。現代凄い。今最高。多分……。

周知の通り、主人公は成歩堂龍一の祖先「成歩堂龍ノ介」である。「勇盟大学」に通う20歳の大学生である。
ガッコはかなりの名門であるようだから、相当優秀な学生なのだろう。ただし当初は弁護士になる気は全くなく、なし崩し的にそうなる。
ここで鍵となるのが成歩堂の親友「亜双儀一真」で、彼こそが弁護士として大英帝国に留学するのだが、結果的に成歩堂が代役となる。
まぁぶっちゃけこいつは死ぬのだが……それはゲーム開始時点で見えていたが……その死に様がなぁ。あれでええんか巧さん。
前述したが、コイツは今作だけでは謎を残しすぎていてまだ信用できない。「実は生きていて後編のラスボス」さえあり得ると思う。
死ぬにしても、退場が早すぎ、かつネタがアホすぎだっと思う。もっと劇的に殺され、成歩堂に激怒させるべきだったのではないか。
見た目や立場はカッコ良いのに、好感をちっとも持てない「親友」であった。お前何をやってたんだよ。全部俺に投げやがって……。

舞台が19世紀の大英帝国。なら出て当たり前なのが、かのシャーロック・ホームズである。有名すぎて最早実在する創作キャラである。
今作に登場するにあたり、どんなキャラになっているのかは、個人的に心配の種であった。だってホームズて、世界一の名探偵だよ?
謎解きゲーである逆裁において、メインキャラに名探偵。……これ、成歩堂の立場をぶち壊すのでは? という懸念があった。
実際、レイトン逆裁で一度やっちまってるのだ。あのゲームの「完璧なレイトン」「格下の成歩堂」な構図はどうにもアレだった。
……だが今作のホームズは、妙なアイテム作りに才を見せるものの、推理能力はそうでもない。少なくとも劇中ではそうだった。
劇中でも「シャーロックホームズの冒険」が小説として書かれ、出版されてるから、幾つも事件を解決したのは間違いないようだが。
ちなみに小説は、ホームズが解決した事件を元にワトソンが執筆したフィクションという設定のようだ。多分。まぁあんま関係ない。

ホームズは主に探偵パートに登場し、「論理と推理の実験劇場」なる一人舞台を展開する。
これは探偵パートの登場人物の不審な点を指摘していき、その人の隠している事実を暴くというゲームなんだが……まぁ、無茶苦茶。
非常にトンチキな推理を並べられて、完全に的外れ。そこに成歩堂が登場し、この推理を修正、「真相」に辿り着かせるというわけだ。
今作には「サイコ・ロック」のような探偵パートでの謎解きがなく、実験劇場だけが唯一の謎解き要素である。
実験劇場は演出が面白く、指を弾いてライトを照らすあれは「いかにも」な感じでいい。成歩堂がチョーシこいて同調するのも面白い。
ただ、謎解きとしては簡単すぎるのが難点だ。本当にどれもアホみたいに分かり易く、実験劇場で詰まった人はいないのではなかろうか。
サイコ・ロックみたいに証拠品を選ぶ要素がなく、正解が明確だからなぁ。もう少し困らせてくれてもよかったのではないか。
実験劇場は低難度で、他は各地を巡ってフラグを立てるだけ。今作の探偵パートは退屈で、ハッキリ言ってつまらない。
思ったんだが、逆裁はミニゲームを導入すればいいのではないか。ある程度の成績を収めないと、ヒントや証拠品が貰えないというやつ。
もちろん後で別途プレーすることも可能。高得点を取れば隠し要素が開放されるとか。……我ながら良いアイデアだと思うんだが。
現状だと探偵パートの退屈さが半端ない。裁判を控える以上、ここで詰まらせるわけにはいかんのだろうが、つまらんのだ。洒落。
どうも逆裁シリーズは、フォーマットが初代でガッチリ出来てるから、それに甘えてる感じがするなぁ。「変えない続編」である。
今作で「大」のフォーマットが出来たから、後編は話だけ考えて終了ですかね。……個人の能力に頼る弊害かのう。はぁ。

ホームズは、推理面では大ボケだが、キャラとしては良かったと思う。見た目、動き、台詞、どれも「それっぽさ」があった。
一方相棒のワトソンは……天才少女、である。シリーズでも珍しいレベルの露骨な媚びキャラで、悪くはないが、ちと……。
ワトソンはホームズと違って能力的にも完璧超人に近い。出しゃばることは少ないが、あまりに隙のないキャラにし過ぎだと思った。
もう一人のヒロイン、成歩堂の補佐役は、「法務助士」なる立場の「御琴羽寿沙都(みことばすさと)」である。……名前が覚えにくい。
このキャラは、まぁ見た目はいいのだが……「何で惚れないの!?」と。そこが不満でならなかった。いやおかしいだろこれ。
成歩堂とたった2人で大英帝国へ留学し、更に2人で弁護士事務所を作り、同居。……これでくっ付かんて許されるの? マジで。
成歩堂20歳に対し、寿沙都16歳。同居までしてて「いい相棒」止まりは、不自然と言って差し支えない。何でなんだよ。
まぁ寿沙都はホームズ(の小説)の大ファンで、ホームズに憧れてるのかもしれん。けどそっちでも別に色気ある方向にはいかない。
何で逆裁はラブコメ展開をこうまで避けるのかね。巧さんが相当嫌いなんだろうが、今作の場合は明確に不自然である。
惚れはしないのに「寿沙都投げ」とかいう暴力描写は頻繁にあるしな。今の時代、こういうのギャグで済まない所もあるんですよ巧さん。
あと寿沙都も亜双儀同様、隠し事をしている。さすがに敵ではないだろうが、気分は悪い。俺だけ除け者にしやがって……。
もちろんその他の登場人物にも、成歩堂の相手は出てこない。「先祖」なんだから、子を作ったのは間違いないのに。
まぁ一応、続編に期待かねぇ。……ったく、いつまでも殻に閉じこもらず、新境地を開けばいいのに……。

裁判パートには、レイトン逆裁から陪審員システムを持ってきてる。どっちかっつーと裁判長より陪審員を説得するケースが多い。
陪審員はどいつもこいつもアホ揃いで、ロクに考えずあっさり白黒を翻す。何か全てが軽すぎて、裁判まで軽く感じちまった。
陪審員が全員黒を出すと、その理由を述べるので、各人の理由の中から矛盾した2つを「ぶつける」ことで説得していく。
……まぁ面白いんだが、ここも難度が低かった。全員をゆさぶれば明白な矛盾が出てくるから、ぶつける際に迷うことはまずない。
このパートに限らんが、今作ではある人と話してる際に他の人間がおかしな態度を取った時に「ちょっと!」と問い詰めることがある。
これも、おかしな態度の合図をハッキリ出してくれるから、馬鹿でも分かる。ゲーム性がない。「ちょっと!」て言葉も何か合わない。
「複数の証言を照らし合わせる」て要素は面白いんだから、もうちょい複雑にすべきだったと思う。ゲーム性が薄いんだよなぁ。

「いつもの」証拠品を突きつける裁判パートも、難度は低い。……まぁ「逆裁論理」の出鱈目さで躓くことは多いかもしれんが。
自分なりに解答を説明できても、あくまで実際にやるのはゲーム中の成歩堂だから、「設定された正解」を提示しなくてはならない。
子孫と同様、感情移入度、一体感覚は希薄だった。思考を重ね合わせる必要があるゲームだけに、それが際立ってしまう。
ゲームの裏に、裁判の裏に、論理の裏に、巧舟氏がいる。真の裁判長は彼で、彼を満足させなくては勝てない。そんなことを強く感じる。
それは紛れもない事実だが、実際にゲーム中そんなことを感じちゃいかんだろう。うーむ。納得いく論理の組み立て。難しいねぇ……。

一つ良かったのは、大英帝国での検事「バロック・バンジークス」だ。コイツは、少なくとも歴代のライバル検事よりはまともだった。
歴代の逆裁検事は、御剣も含めて、キチガイ論理での立件に追求、それが出鱈目と分かっても悪びれも謝罪もしないという屑揃いだった。
だがバロックは、もちろん基本的には被告を有罪にしようとするが、要所要所で「本当に大事なの真相解明だ」という態度を取る。
これはプレーヤーたる俺も同じだ。ゲーム中では「被告人を信じることが大事」と頻繁に説かれるが、俺はそうは思わない。
大事なのは事件の真相を明らかにすることだ。もちろん被告が無罪であればそれの立証に全力を尽くすが、そうでないなら逆になる。
心情的に孤立した被告の味方になることと、真相追求は別の話だ。成歩堂一族はどうもこの割り切りができてない。好かん。
バロックはその点、誠実さが感じられた。あんた、敵ながらいいよ。それなら負けても恥ずかしくない。誇り高き大英帝国の検事ナリ。
……だから今作の3話は非常に不愉快だったし、俺はジーナなんて大嘘つきを信じる気には全くなれなかったよ。
主人公との一体感を得られないADV。……うーん。もっとこう、なぁ……。

俺が逆裁で好きな要素、キャラのアニメーション。裁判所で見せる馬鹿げたリアクションは毎回面白く、今回も楽しみにしていた。
……しかし、残念ながらここも期待ハズレだった。それどころか、歴代最低と思えるくらいどいつもつまらなかった。
一番バカバカしく動いてたのは一話の証人の軍人で、その後はつまらん奴ばかり。製作者のセンスの衰えを強く感じた。
バロックがワイングラスを投げつけたり握り潰す姿も外しまくってたように思う。あれに威厳や怖さを感じろと? 俺には無理です。
名前が一番面白かったコゼニー・メグンダルのつまらなさは呆れるしかなかった。あれでリアクション芸人やれると思ってるんかボケ。
論理作りは徹底的に真面目にやってほしいが、キャラアニメーションは徹底的に悪ふざけしてくれていい。それを強く願っていたのに。
逆裁は「破天荒さ」も売りだったのになぁ。実にこじんまり。地味ゲー。ホームズくらいか、らしく動いてたのは。
ここは巧氏以外が頑張るべきところだよなぁ。具体的にどうしろとは言えんけど、「もっと面白く」動かしてほしかったなぁ……。

アニメの質にはガッカリだが、グラフィックはまぁ良好。レイトン逆裁、逆裁5と来て、3D化の技術は完全に体得出来た模様。
……けど、要所で挟まれるアニメムービーが立体視非対応なのは非常に情けない。前2作は対応してるのに、退化してるやないか!!
何やってんだよ巧さん。アンタの責任だよ。責任者なんだから。これは問答無用で駄目だったな。ムービーの数もかなり少ないし……。
音楽は、なかなか頑張っていたと思う。特装版に付いてたミニサントラは、選曲もいい感じで、楽しく聴いている。
「大尋問」と「共同推理」のテーマが気に入った。各人のテーマ曲もいいな。……ただ旧作の「追求」に当たる曲は印象に残らなかった。
俺にとって逆裁と言えばあの曲なんだが、これはもう初代(と2)を超えるのは無理かな。刷り込みってのがあるからね。
サントラと一緒に特装版に入ってた設定資料集も割と楽しめた。キャラ一体描くのも、当然ながら何度も何度もやり直してるんだねぇ。
細部の拘りも凄いもんだが、正直ユーザーはンなとこまで見ないよ。……作り手もそれは分かってんだろうが、手を抜くわけにもいかん。
より突っ込んで見てもらえるこういう冊子を出すことは、絵描きさん冥利に尽きるのかもな。まぁ描けん俺には分からん。はぁ。


ふぅ。
今作も今の時代に合わせ、DLCが配信されている。もちろん有料だ。甘ったれてんなよコラ。
けど5のように一本の章ではなく、各話の後日談や小ネタを見せるという程度のようだ。正直、あんまし欲しく思わない。
複数回に分けて配信されていて、各回300円、まとめ買いで2000円。……うーん、やっぱ買う気にならん。これはいいか。しゃーない。

今作は、続編前提である。だが続きを出すには当然今作の売上が大事である。全然売れなかったらやっぱ出せないだろう。
……で、発売5週目で18万本。5よりかなり落ちている。巧舟の名と力は別に重要ではなかった。そういうことだろうか。
まぁ赤字と言うほどもないだろうし(多分)、面子もあるから予定通り続編は出すだろうが……何だか寂しいねぇ。
俺としては、やっぱシステムの摩耗が激しいと思う。ぶっちゃけマンネリなのだ。皆「いつもの逆裁」に飽きてきているのだ。
それでいて論理の組み立てはより荒っぽくなり、不快係数が上がっている。……抜本的に見直す時が来ているのではないか。
「嘘を暴く快感」はもちろん作品の骨子だが、それだけではもう弱い。今まで大して変わってないだけに、やれることは多くある。
今作では、第二話に裁判パートがなく、探偵だけで終了する。これは少々物足りなかったが、一方で新しさも感じた。
こういう、裁判を経ない短編を幾つか入れるとか。重厚な5話構成ってのもずっと続くお約束だが、それが本当に好評か?
ちなみに今作、ボリュームはある。プレー時間は5より長かった。……けど、話の間延び感も強かった。ダレてしまった。
もうちょいコンパクトに纏めることも可能だったと思う。その分話数を増やして。……高望み? そう言われると困るが。

シリーズは壁にぶつかってるが、やれることはたくさんある。手詰まりではないと思う。次回作ではそこに期待したい。
ええ、買いますよ。ずっとやってる家庭用ゲーム機のシリーズだから。それが理由です。もうそれで十分なんです……。
巧氏だけじゃなく、複数人でシナリオを創るってのはどうかね。他所もよくやってる手法だし、おかしくはないと思うけどな。
「成歩堂龍ノ介の冒険」は、これからだ。巧舟先生の次回作にご期待ください!!

……不吉な纏め方をするな、って? けど、実際そう言うしかない終わり方なんだよ。悪いんは巧さんだよぅ。
はぁ……。








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14 コメント

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Unknown (mizz)
2015-08-14 10:14:39
CAPCOMは、BASARAといい逆裁といい
節度というものが欠けている気がします。

ポップなんて域は遥かに超越した
CAPCOM的馬鹿馬鹿しさというか
CAPCOM的ぶっ飛び方というか…。

BASARAの方は、武将ゆかりの方が
片っ端からブチ切れても良さそうな人物設定だしw

そういう、かの会社独特のぶっ飛び方と
犯罪、推理、謎解きという要素は
ひっじょーに相性が悪いような。

本来、そういった要素って
緻密なロジックとかが必要なものだと思うので
設定や前提や人物がぶっ飛んでいると
全然感情移入できないです。

ミステリフリークが、初代かまいたちの夜やクロス探偵物語あたりを愛してるのって
ちゃんと実在しそうな人物で固めていて
設定も壊れてなくて
考える作業や世界観に没頭できるからなんじゃないかなぁ。

逆裁は、状況を跳ね返す快感のみに的をしぼってるのかな。
そもそものめりこめないと、快感も何も無いと思うんですが。

逆裁は2作ほどプレイして
『なんじゃそらwwwww』とふっと我にかえっちゃうので
多分全部プレイしてもハマれることはないな、と
以後触ってません。

ダンガンロンパも、同じような部分を重視して作られてると思いますが
あちらは設定や黒幕はぶっとんでますが、その他の登場人物の言動やロジックは破綻してないから
のめりこんでやれたんですが…。




ゲームは、音や映像がある分
推理小説よりもいろいろ可能なことがあると思うんですが
ミステリ不毛の地な気がします。

こういう題材のもので、好きになれた作品って
未だに数えるほどしかない。

ここ最近だと(といっても数年単位ですが)
同じく裁判が主題の『有罪×無罪』が、地味ながら面白かったです。
返信する
Unknown (サク)
2015-08-14 20:37:25
逆転裁判は本編は1~4、検事などの外伝的作品も数本やってますが、なんか停滞感を感じるシリーズですよねえ
やってみると面白いけど、段々新作にワクワクしなくなってくる感じが…。やっぱりマンネリなんですかね
かと言って何か新しい事をやってほしいという感じもしないんですよね、何か新システムを取り入れれば劇的に面白くなるという予感がしませんし
マンネリだ!と言いつつも、じゃあどう変えて欲しいんだと聞かれたら答えられない人ってこのゲームのユーザーには結構多い気がするんですが、どうでしょう

ADVですし、結局は面白い話を書いてくれというところに尽きるのかなあ…
返信する
Unknown (ota)
2015-08-15 03:38:29
>>mizzさん

>そういう、かの会社独特のぶっ飛び方と
>犯罪、推理、謎解きという要素は
>ひっじょーに相性が悪いような。
んー……BASARAは知らないんですが、俺は逆転裁判の破天荒さは作風としてアリだと思ってます。
旧作だと「霊媒」という要素があり、それはミステリとして反則だろという声もありましたが、ゲームの謎解きがキチッとしてれば無問題かと。
ただ、もうそういう部分関係なく、違和感が非常に目立つようになりました。今作だと破天荒さも寧ろ抑え気味だったしなぁ。
逆裁はシステム上、キャラ達を「アホ」にする必要があります。明々白々な矛盾も、プレーヤーが指摘するまでは誰も理解できない。
その辺がもうなぁ……。登場した時は非常に斬新なシステムのADVだと思いましたが、色々と限界が来ていると感じます。うーむ。

>逆裁は2作ほどプレイして
>『なんじゃそらwwwww』とふっと我にかえっちゃうので
>多分全部プレイしてもハマれることはないな、と
>以後触ってません。
>ダンガンロンパも、同じような部分を重視して作られてると思いますが
>あちらは設定や黒幕はぶっとんでますが、その他の登場人物の言動やロジックは破綻してないから
>のめりこんでやれたんですが…。
むぅ、そうですか。ダンガンロンパは明らかに逆裁のフォロワーですが、それ故に論理性には気を配ってるのですかね。
そのうち是非やりたいタイトルです。もう一回DL版1・2セットのセールやってくれんかな……。

>ゲームは、音や映像がある分
>推理小説よりもいろいろ可能なことがあると思うんですが
>ミステリ不毛の地な気がします。
絵や音、そして双方向性があるというのが素晴らしいことですが、それが想像力を損ねるケースもありますね。
ある意味ではゲーム機の進化と相性の悪いジャンルかもしれません。人間、結局脳内ワールドが最高ってとこがありますからね。

>ここ最近だと(といっても数年単位ですが)
>同じく裁判が主題の『有罪×無罪』が、地味ながら面白かったです。
おお、マイナーなタイトルですが、面白いんですか。あざます覚えておきます。
返信する
Unknown (ota)
2015-08-15 03:52:08
>>サクさん

逆裁1~3はどう考えても名作でした。発売間隔も短く、巧舟氏が「熱かった」のがよく分かります。そして一旦完結しました。
……でも商売としては人気シリーズを止めるわけにはいかない。気持ちとは別問題で続ける必要がある。それでは、熱くなれない。
4以降も最低限の質はプロとして確保していると思いますが、そういう製作側のどこか冷めた気持ちも伝わってくる気がします。
今作は仕切り直しとして心機一転熱くなってくれると期待してたんですが……残念ながらそれはありませんでした。
巧氏が行きたい方向に突っ走ってコケるのは、ファンとして一向に構わないんですけどね。中途半端だったなぁ……。

>マンネリだ!と言いつつも、じゃあどう変えて欲しいんだと聞かれたら答えられない人って
>このゲームのユーザーには結構多い気がするんですが、どうでしょう
まぁ本来、受け手のユーザーはそんなこと考える必要はないんですけどねw 製作側もそんな声を聞く必要もないし。
「面白いもの」という抽象的だけど絶対的なモノを作ればOK。面白ければマンネリでもOKだと思います。なんて身も蓋もないw
今作の続編は、もう製作に入っている思います。個人的にはガラッと変えてほしいですが、さてどういう答えを出してくれるのか……。
返信する
Unknown (S・R)
2015-08-24 01:41:34
要するに嫌なところばかりリアルなんですよね。
他人の尻馬に乗っかってホイホイと有罪とか言い出す陪審員とか、金で無罪を勝ち取ったりとか……
しかしさすがに親友のあの死に様はひどすぎました。もうちょっと位見せ場があるかと思ったんですが。

昔はどうやって捜査していたかって?まあ普通に冤罪だしまくりですよ。そしてバンバン死刑にしてました。警察官が犯罪とか、まあリアルなら多分死刑でしょうあの人。
血の色で個人識別とか言う超技術はさておいて指紋も1901年にスコットランドヤードが使い始めたといいますし、まさに逆転裁判向けの時代ですね。

……逆転裁判5で100年以上前と同じくらいひどい冤罪やら捏造やらやっちゃってますけど……6どうすんでしょうね。

あとホームズについてですが、推理劇場はナルホドの前でしかやってないし漱石の住所とかを普通に推理できているので単純に狂言でトンチキなことを言っているだけという可能性はあります。麻薬中毒者だし。
アイリスはもうアレでいいと思います。まさにこのゲームの癒し。スサトもイマイチ信じられない以上、アイリスだけが唯一の味方です。最終裁判でアイリスが発言する時のヌルゲー感よ……
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Unknown (ota)
2015-08-25 01:33:10
おお、さすがS・Rさん、プレーしてますか。
>しかしさすがに親友のあの死に様はひどすぎました。もうちょっと位見せ場があるかと思ったんですが。
続編を見越して「実は生きていた」展開をやる余地を残したとしか思えませんね。大不評でしょうからやらない可能性もあるでしょうけど。
成歩堂がハッキリと死体を見てない以上、ホームズが関与して死を隠蔽した……というなら一応可能だと思います。
無論納得なんて出来ませんけどねw

>昔はどうやって捜査していたかって?まあ普通に冤罪だしまくりですよ。そしてバンバン死刑にしてました
でしょうねぇ。そう考えると、科学捜査の確立以前に裁判の概念が出来たのは不思議でなりません。冤罪を恐れてなかったのか……?
逆裁シリーズの裁判は、成歩堂がいなきゃどれも「暗黒」ばっかしですよねw まぁゲームにする以上やむを得ないんでしょうけど。

>あとホームズについてですが、推理劇場はナルホドの前でしかやってないし漱石の住所とかを普通に推理できているので単純に狂言でトンチキなことを言っているだけという可能性はあります。
この可能性はありますね。彼には真相なんて2秒で分かるけど、全部自分がペラペラ喋ったら面白くないから掻き回して遊ぼう、と。
続編ではそういうちょっと壊れた破綻者な側面も見せてくれれば、と思います。まぁホームズはそれなりに良いキャラでした。
アイリスは、ホント唯一「マトモ」で信用できる子でしたねw 他キャラが味方含めてアレな奴ばっかしで……。
あまりの隙の無さはある意味欠点ですが、次回作でも頑張ってほしいです。スサトはね……隠し事はアカンよ……。
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大逆転裁判2やりました? (可符香)
2018-05-27 18:50:34
私も大逆転裁判は"期待を裏切られた"と感じるガッカリな出来栄えでした。
伏線ばら撒きっぱなしで消化不良なのは言わずもがな、
遊んでて何度も寝落ちしてしまったしテンポが悪く緊張感も無いダラダラしたシナリオ展開には心底ガッカリでした
もう二度と逆転裁判を買いたくないと思ったほどでした
そんなときこのレビューを読んで、大逆転裁判2 を遊んだ今だからこそこのコメントをしたいです
大逆転2が面白かったよということを書いておかねばなるまいなと
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Unknown (ota)
2018-05-28 01:33:24
大逆転裁判2は未プレーです。今作をプレーした時は、EDに腹を立てつつもやるつもりはあったんですが……1年後に「逆転裁判6」をプレーした時、このシリーズで延々続く「無理やりなピンチ作り」がちょっと我慢ならなくなりまして。
シリーズをやっていれば分かると思いますが、逆裁は謎解き作りを重視するあまり、リアリティをガン無視してるんですよね。
「窒息死した人間のダイイングメッセージについて真剣に議論する」とか、あり得ないでしょ。そういうゲームなのは分かっていたつもりですが、最新作でもその流れがより強められていたことで、気持ちの糸が切れてしまったのです。もう、浸れない。
てことで大2はスルーしてしまいました。本編を含め、もう逆裁はいいかな……という気持ちです。うーむ。

……と言いつつ大2の内容に興味はあるので、廉価版(多分出るでしょう)が出た頃に買う、かもしれません。
>大逆転2が面白かったよということを書いておかねばなるまいなと
おお、そうですか。わざわざありがとうございます。覚えておきます。巧みさん、ちゃんと名誉挽回したんですね。よかった。
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Unknown (Unknown)
2018-10-31 16:38:46
廉価版出ましたよ!
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Unknown (ota)
2018-11-01 01:39:45
ぬっふっふ、はい、出てすぐ買いましたナリ。廉価版万歳。
……プレーは、そのうちに……。
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