腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

キャプテン★レインボー

2011年06月13日 23時52分07秒 | Wiiゲーム感想文
俺は、値崩れソフトには一家言ある男である。キリッ。
そんな俺に言わせれば、値崩れソフトの「値崩れ度」を見るには、2つのパラメータがある。
一つは「値崩れスピード」、もう一つは「底値」。スピードは漠然としか定義できないが、底値のラインは980円だと思っている。
そして値崩れソフトは「スピード」の条件を満たすものは多いものの、「底値」を達成できるものは少ない。
例えば1年半前に醜態を晒した「ゼルダの伝説 大地の汽笛」は、値崩れ速度は凄まじかったが、底値は980円前後で大体安定していた。
このソフトの場合、せいぜい大関レベルで、値崩れ横綱ではない。と俺は思っている。
ちなみに俺自身ゼルダ大笛は発売日に買い、普段と逆に先行購入者の痛みを感じることとなった。ったく値崩れってやつぁ……。


で。今作「キャプテン★レインボー」は、速度に加え底値ラインをもブチ破り、500~300円ラインまで持ってきた、正に値崩れ横綱級の作品である。
任天堂発の値崩れソフトは数あれど、ここまで落ちる作品はそうない。Wiiでは他に思い浮かばない。
もちろん、需要に対して出荷が過剰だったという、ゲーム内容とは関係ない理由もあるだろう。
しかしここまで落ちたんだから、ゲーム内容もそれに準じる出来なのではなかろうか。
漠然とそんなイメージを持ちつつ、新品500円発見時に購入。
去年8月、ちゃっかりクラニンポイントを期限ギリギリに登録しておき、先日ゲームをプレー開始した。



今作は「ラブデリック」系のゲームである。プレー開始してすぐ肌で実感した。
ラブデリックは初代PSの「moon」で名を上げ、独特の雰囲気を持つゲームでファンを獲得したゲーム会社である。
その後会社は解散したらしいが、関係者はゲーム業界に残り、ラブデリック色を残したゲームを作り続けてきた。
俺自身は去年「いろづきチンクルの恋のバルーントリップ」をやっただけだが、これ一本だけでも
「ああ、これがラブデリックゲームというものか」と感じられる独特の色があった。
だから今作のプレーを開始したら、もう一瞬で分かった。これはラブデリックゲーだ。そうに違いないと。
クリア後にwikiやらで調べたら、やはり確信は当たっていた。
チンクルとは製作会社が違うのに、ここまで共通性を感じられるんだから、ラブデリック色とは相当濃いものなんだなと思う。



ゲーム内容は、一応公式では「アクションアドベンチャー」となっている。
主人公ニック(キャプテンレインボーに変身できる)が舞台となる「ミミン島」にやってきて、そこの住民達と色んなイベントをこなしていく。
アクション要素はあるにはあるが、かなり低いので、どっちかっつーと「お使いアドベンチャー」と呼んだ方がいいと思う。
島の住人とのイベントはお使いとミニゲームが殆どで、この辺特徴的な部分は何もない。
ラブデリック色はゲームの世界設定においては非常に濃いが、ゲーム内容は別にそんなことはない。
これもいろづきチンクルで感じたことと同じである。



ミミン島は「願いが叶う島」と言われていて、返り咲きを狙う落ち目のヒーロー・ニック(レインボー)は自分の願いを叶える為に島にやってきた。
しかしひょんな事から、逆に自分が他人の夢を叶えられる存在になってしまった。
ただし、他人を出し抜けば、自分の願いを叶えることもできる。二者択一なのだ。
真のヒーローは、そんな時にどうするか……? ここにゲームのテーマがあるらしい。





ゲームを開始して、まず欠点として強く感じたのが、「分かり難い」ことだった。
不名誉な値崩れ横綱の立場を獲得してしまったのも、このゲーム全体に漂う分かり難さに原因があったのではないかと思う。


・タイトルが分かり難い
「キャプテン★レインボー」。パッケージにはアメコミ調のヒーローが描かれている。これだけだと派手なアクションゲームのようだ。
だがパッケージには絵と共に大きく「実はカッコいいヒーローのゲームではない! くわしくは裏面の説明を冷静に読もう!」と書いてある。
……この時点で、かなり分かり難い。タイトルと絵柄と楽屋落ち的な文章が、少なくとも第一印象では噛み合っていない。
そして言われた通り裏面を見れば、確かにゲーム内容の説明が書かれているが、正直読んでもピンとこない。
これは人によって違うだろうが、俺は今作がどんな内容なのか、パッケージだけではちっともイメージが掴めなかった。


・ゲーム内容も分かり難い
今作は大きく「日常モード」と「流星夜モード」に分かれていて、このうち日常モードはただのアドベンチャーであり、何も問題ない。
だが流星夜モードは、具体的にどうすればいいのか、説明書を読んでもこれまたピンとこない。
このモードで住人達の願いを叶えることになるんだが……住人達は日常モードでイベントをこなして仲良くなっていないと、流星夜モードで同行してくれないのだ。
こちらがお前の願いを叶えてやろうというのに、それをする前に相手の信頼を得ておかねばならないのだ。
どうにも筋が通ってないと言うか、ゲームの流れに釈然としないものを感じる。何かおかしくないか?
仲の良い住人がいない状態、つまり願いを叶える相手がいない状態でも流星夜は起きるのだが、その場合「願い叶えるチャンスを捨てる」ことになる。
これも何とも理解し難い。ものすごくゲームシステムに世界設定が引っ張られているように感じる。
今作にラブデリックな雰囲気は非常に強く感じられるが、世界設定がよく練られているとは残念ながら思わない。はぁ。


・キャラクターが分かり難い
これは言い掛かりに近いかもしれんが……今作に登場するキャラは「任天堂歴代マイナーキャラ」で固められている。
「新・鬼ヶ島のひかり」「ゼルダ夢をみる島のトレイシー」と言われても、パッと思い出せる人は殆どいないだろう。
まぁ「パンチアウトのリトルマック」「パネルでポンのリップ」など、俺でも知ってるキャラもいるにはいるのだが。
制作者は「裏スマブラのようなことをやりたかった」らしいが、正直この面子は「知る人ぞ知る」を超えていると思う。
単に無名キャラを集めただけになっていて、洒落の利いた似非オールスターという感じがしない。コンセプト通りになっていない。
もう少しセンスある人選を見せてほしかったと思う。まぁキャラの魅力はまた別の話ではあるが。

ニックと違い、他力本願で願いを叶え、礼を言って去っていく連中の性根にもやや違和感が残る。
上にも書いたが、こちらが願いを叶えてやるのなら、仲良くなるまでに尽くすのは向こうであるべきではないか?
俺は無償の奉仕など出来ない糞野郎なので、この設定は大いに疑問だった。うーん。



・イベントフラグが分かり難い
登場キャラとの間には様々なイベントがあり、中には必須ではないサブイベントも多く用意されている。
また、単独ではなく複数のキャラが関連するイベントも多く、その場合対象キャラそれぞれのフラグを立てて置かねばならない。
ここまでは別にいいんだが、このゲームには「願いを叶えたキャラは島から消えてしまう」という問題があるのだ。
流星夜で願いを叶えてやると、そのキャラは星に乗って旅立ち、ミミン島を去る。
すると翌日からはそのキャラの姿が島から綺麗さっぱり消える。となると当然、そのキャラが絡むイベントはもう見られなくなるのだ。
こうなると、そのキャラのイベントが起こらなくなるのはもちろん、関連イベントが存在する他キャラにも影響が出てくる。
さすがにクリア必須のイベントには関係してこないが、この仕様のせいでサブイベントを見逃した人は多いと思う。

こういう作りにするなら、そのキャラのイベントがどの程度進行してるか、どの程度残っているか、プレーヤーに分かる形にすべきだっただろう。
ゲーム序盤は仲良くなったキャラをどんどん空に送ってしまい、面白そうなイベントを多く見逃してしまった。
それを気にして少し前のセーブデータからやり直したほどだ。非常に不愉快な気分になった。
今作は明らかに「スローライフ」と言うか、のんびりした空気を楽しむタイプのゲームであり、こんなフラグを気にすべき作品とは思えない。
製作者だって、せっかく用意したイベントの数々を、隅々まで見てほしいと思っていたはずだ。
クリア後にイベント回収できるようになっていればベストだと思うんだが、それも無かった。はぁ。




以上。ここに更にラブデリック独特の作風も加わるかな。今作はとにかく、分かり難い、伝わり難い作品だと思った。
今作はただでさえ完全新規タイトルであり、なのに宣伝も小さく、これを売る為には口コミによる評判拡散が必須だったはずだ。
なのにその辺全く考えていない俺様仕様。正直、これでは売れなくて当然だと思う。値崩れ横綱の地位は、妥当だった。はぁ。

昔「ゲーム批評」という、多分一般人から見たら死ぬほど痛いであろう雑誌を読んでいたことがある。
それのある号に「中村光一×宮路洋一対談」という記事があった。時代は「グランディア」と「街」が発売された頃だった。
その中の会話に


「ゲームの面白さって、パッと一言で伝わるかどうかってのが、結構重要だと思うんです。
例えば『ペットを飼ってみる(たまごっち)』とか『電車を運転してみる(電車でGO!)』とか。
でも『街』の面白さはズバリ何か? と問われると、いつもうーんと悩んでしまう」


こんな感じの箇所があって、今も覚えている。なるほどと思った。
分かりやすいこと、伝わりやすいのが絶対とは言わないが、確かにゲームの魅力の一つではあるだろう。
この観点では、キャプテン★レインボーは殆ど最悪の作品だったと思う。
伝わらないから売れないし、売れないから伝わらない。もう誰にも思い出されないタイトルになってしまった。
かつてはラブデリックの作風を押し通しても、それなりの数のファンに支持され、販売本数も保てていたのだろう。
だが今作に関してはその作風が完全に空回りし、モロに売上に響いてしまった。自業自得である。
今作は、どっちかっつーとDSで出した方が良かったかもしれない。Wiiの特性が要るゲームではなかったし。
まぁWiiにおけるこういったゲームの需要を満たす為に作られたのだろうな。そしてそれは存在しなかった……。




さて、大分貶してしまった今作だが、それは主に分かり難さ・伝わり難さについてだ。
一度ゲームをプレーし始め、システムや仕様に慣れてきたら、もうそれらは気にならなくなった。
そうなると、無難に面白い。基本はごく普通のお使いアドベンチャーなのである。そして俺はそれが嫌いではない。

そこそこ広い島をトコトコ適当に歩き回り、消費アイテムを拾ったり、住民に話しかけたりして、時間を潰す。
住民達は時間によって居場所と行動が決められており、イベントを起こしたい場合は決まった時間に話しかける必要がある。
と言ってもそんなにシビアではなく、序盤にダラダラ散歩プレーをしていれば各人のタイムスケジュールは概ね把握できるので、困ることはない。
今作はそもそもガツガツとクリアーを目指すタイプの作品ではない。ゆっくりのんびりチンタラと、主に雰囲気を楽しむべき作品なのだ。
主人公の移動速度は遅く、Wiiリモコンのポインタを使うチェックシステムは扱い辛く、インターフェースも良いとは言えない。
俺は基本ガツガツとクリアーを目指すタイプの人間なので、最初こそこれらの欠点が気になったが、
「このゲームはそういうもの」だと気付いてからは、ゆったりとプレーするようになり、いつしかゲームの雰囲気に馴染んでいた。

イベント数はよく考えるとそんなに多くないが、テキトーに島を歩き回っていれば退屈しない程度に発生するので、不満はなかった。
内容も意外な毒があったり、任天堂らしからぬ妙な色気があったりで、バラエティに富んでて楽しかった。
ちなみに今作はCERO「B」である。理由は恐らく色気だと思う。トレイシー関係はそんなんばっかだったからな。


作中にはミニゲームが色々用意されており、これもまぁどっぷりではないが無難に楽しめる。正しい姿のミニゲームだ。
フラグを立てた後も挑戦することは可能なので、気に入ったものがあれば黙々とやり込んでもいい。
ただ、挑戦が一日一回に限られるなど、余計な制限があるのは不満だった。キャラの願いを叶えれば、以後一切出来なくなるし。
クリア後はメニュー画面から遊べるようにするとか、その程度の配慮は欲しかった。うーん。
ミニゲームの中では、鷹丸にやらされる「ボタン押しっぱなし耐久ゲーム」が絶妙に難しく、熱くなれた。
A,B,C,Z、といったボタンを指示順通りに押しっぱなしにし続けるという単純なゲームなのだが、自分の手だけでやるとこれがなかなか大変で、それが面白い。
意外と今までなかったネタだと思う。それにこれはWiiリモコン+ヌンチャクでこそ可能な遊びであり、普通のコントローラーじゃ上手くやれないだろう。
まぁアイデア賞ってとこかな。残念なことにイベントクリア後は一切プレーできなくなってしまうのだが……。


ゲーム中、ニックはいつでもキャプテンレインボーに変身できる。
変身すると移動速度が上がり、必殺技が使えるようになるが、技の使い道はあまりなく、重要なのは移動速度。
常時ニックのままだとさすがに島探索が面倒になってくるので、早く進みたい時は変身してさっさと移動するのが得策だ。
しかしキャプテンレインボーに変身は無制限ではなく、ゲージによって時間が決められている。
そしてこの制限時間が、非常に短い。あっという間に終わってしまい、しかもゲージがゼロになると、何とゲームオーバーなのだ。
島に生えている食べ物を摂取することでゲージは回復するが、回復量は少なく、変身し続けるには何度も何度も食べなくてはならない。
更に言えば食べる動作が遅くてイライラするし、食べ物にポインタを合わせ難いのも困る。ったくWiiリモコンはこればっかしだ。
言うまでもなく「キャプテン★レインボー」は今作のタイトルであり、ニックが己を賭けている理想のヒーローだ。
だがその割に、ゲーム中でのレインボーの扱いは非常にちっちゃいと言うか、移動と幾つかのイベントの為の形態でしかない。
元々「カッコいいヒーローのゲームではない」んだから、もっとヒーローらしくしろとは言わない。
しかしこれではB級ヒーロー的間抜けさ・情けなさすら表現できていない。
ハッキリ言ってレインボーへの変身システムは、アイデア不足で失敗していると思う。
もっとこの形態ならではの動作を用意し、それをゲームに絡めるべきだった。例えば、飛行移動が出来るようになるとか。
どうも今作は、全体的にゲームとしてキッチリ纏まってない印象がある。うーん……。




前述の通り、ニック以外の登場キャラクターは、歴代任天堂ゲームのマイナーキャラから選ばれている。
つっても「ギフトピア」などの新しい作品を除けば、性格も見た目も殆どオリジナルなので、既存キャラという気はあまりしない。
まさか「新・鬼ヶ島」や「デビルワールド」の頃に、細かい性格付けが行われてたとは思えんしな。
つーわけで、該当作品を知っていなけりゃ楽しめないということは全く無い。
逆に言えば該当作品を知っていればより楽しめるというタイプのゲームでもないのだが。


各キャラクターの描写は、ラブデリック色を全開に、真面目な奴ボケた奴変な奴と色んなタイプが実に個性的に描かれている。
願いの成就をニックに依存すると言う点がどうしても引っかかるが、基本的にイベントをこなすことで全員好きになれた。
どいつもこいつもなかなかの存在感である。上手く説明できないが、多分製作者に優れたキャラクター作成能力があるのだろう。

特にヒロイン・ひかり(出展は「新・鬼ヶ島」)の可愛らしさは素晴らしく、不覚にも大いに萌えてしまったよ。
今作のグラフィックは所謂ヘタウマ(死語?)っぽい感じで、ひかりは決して美少女には見えないんだが、台詞や態度がいちいち可愛い。
実は今作、単純にニックとひかりの恋愛物語でもあるのだ。ここにはラブデリックの異色さなど皆無で、清く正しい純愛である。
料理を頼めば喜んで作ってくれたり、会話が少ないと寂しがったり、微妙に嫉妬したり、自分が他の男キャラと会話することを遠慮したり……。
色気も美少女絵もなくても、キュンと来る萌えは描写できる。何気に近年味わえなかった感覚だよ。ありがとう任天堂。
ひかりは特別扱いのキャラなので、最後まで願いを叶えて送り出すことはできない。
自らの願いだけを優先する他の住人とは全く違う。この点だけでも好感度は大幅アップだ。
美少女絵や有名声優ボイスがなくても、萌えキャラは作れる。いいなぁ。はぁ……。


ボイスと言えば、今作はキャラの台詞に妙な演出を施している。
各キャラは表示されるメッセージ(当然普通の日本語)に合わせて一応喋るには喋るのだが、その内容が意味不明なのだ。
例えば「ニックさん、おはようさん。ええ天気やなぁ」て台詞が、ボイスだと「メッティーオー、トカシクツー」になる。
何を言っているか分からないと思うが、本当にこう言ってるんだからこう書くしかない。
もしかしたら実在の言語かもしれないと思ったが、違う台詞でもボイスは使い回されるので、多分それはないだろう。

これは恐らく、ミミン島が「異世界」であることを示す演出なのだろう。文字は翻訳されても、ボイスは「アッチの世界」の言葉のままなのだ。
そう考えるとこの奇妙な演出が妙に納得できる。ゲームワールドが異世界なのは当然っちゃ当然だが、上手い手法だと思った。
序盤はこの演出に違和感があって仕方なかったが、慣れると寧ろ自然に感じたからなぁ。見事なり。

ちなみに「メッティーオー、トカシクツー」はひかりのボイス(の一部)で、これがまた妙に可愛らしく、最近軽く俺様口癖化している。
プレーしたゲームの台詞等がしばらくmy口癖になることは珍しくないが、ここまで意味不明なものは初めてだろう。
やっぱ俺は頭のおかしいゲーオタなのだろう。でも楽しいからいいや。メッティーオー、トカシクツー。ハッ。




グラフィックはハッキリ言って汚い。Wiiの中でも低いレベルにあるだろう。
多分製作者は「味」と言うのだろうが、ニックが常にニヤケ面ある等、手抜きに思える部分も多い。
このレベルなら、やはりDSで出した方が良かったと思うなぁ。
音楽はゲームの雰囲気に合っていて、なかなか良かった。
当然と言うべきか、メインテーマたる「キャプテン★レインボーのテーマ」は歌になっており、結構燃える。
このノリを少しはゲームに絡めてほしかった。変身ヒーローらしい活躍は皆無だったからなぁ。

プログラムはややレベルが低いのか、最近のゲームでは珍しく、読み込み時間が見苦しいと感じた。
建物に入ったり昼夜が切り替わるだけでギッチリ読み込むので、「今時これはないだろう」と呆れてしまった。
のんびりした作風とは意味が違い、ただ技術力がないだけである。情けない。




物語は、中盤までは雰囲気通りののんびりしたものだが、そこから願いを叶える度に島が崩壊していき、徐々に世紀末的空気になっていく。
同時にミミン島に住む不思議な生物・ミミンが徐々に死滅していくという演出が入り、これが痛々しく、良くも悪くも嫌な描写だった。
そもそも今作の「願いを叶える」システムは、ミミンの死骸が元になっているという設定がある。
つまりニックが叶えたキャラの願いは、ミミンの死の上に成り立っているのだ。それをニック以外が知っているかどうかは分からんが。
この設定をどう考えるかは、人それぞれだろう。俺は……どうかな。それがミミンの性質なら、深くは気にしないかな。
ただゲーム上、レインボーの必殺技を使って能動的にミミンを殺すことができるのは、幾らなんでも酷いと思った。
知らずにクエイクの技を使ったら周囲のミミンを殲滅してしまい、非常に嫌な気分になったよ。
製作者にとっちゃミミンの命はこの程度の認識なのだろうか、とガッカリきた。



そうそう、ゲームに登場する「ミミンの壁画」で語られる設定話を何となくメモしたので、ここに残しておこう。
重要な基本設定なので、ゲームをやるなら覚えておくべきだと思う。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この壁画ではミミンについてのお話をするのじゃ……
今から遠い昔、大地はミミンという精霊を生み出したんじゃ……
ミミンは大地と共に生き、大地から受けた喜びを体内に溜め死んでいくんじゃ……
ミミンが死んだ時、その大きな耳が大地の結晶「キラリン」となり、再び樹木を育む力となるんじゃ……
これがミミンと自然の長年繰り返して来た奇跡じゃ……
そして……
更にもう一つ、不思議な現象が起きる……
それは……
大地の力「キラリン」を集めて大空に返すと、大きな星が落ちてくるんじゃ……
その星に願いを込めて何処かの祭壇に捧げると……
どんな願いも叶えることが出来るんじゃ……
それが「流星夜」の奇跡と呼ばれるものなんじゃ……

この壁画ではミミンの腕輪についてのお話をするのじゃ……
本来「流星夜」はミミン達でこっそり行われる儀式じゃったんじゃ……
ミミン達は樹木や動物や魚……生ける物全ての幸せを願っておった……
しかし……
1匹のミミンが1人の人間と仲良くなり、この儀式のことを伝えてしまった……
ところが人間には「キラリン」を空に返す力はなかったのじゃ……
人間に頼まれたミミンはその力を腕輪の形にし、人間に渡したんじゃ……
それがミミンの腕輪と呼ばれるものじゃ……
この腕輪を持つものは不思議な夜「流星夜」を起こせるようになる
それを聞いた人間は大層に喜び、去っていった……
しかしじゃ……
人間に教えたことが悲劇の始まりとなったんじゃ……

この壁画では人間についてのお話をするのじゃ……
ミミン達は「流星夜」で樹木や動物や魚……生ける物全ての幸せを願っておった……
それはミミン達が自然と共にあり……
自然から受けた恩恵を、自分よりまず誰かに与えることを考えていたからじゃ……
じゃが、人間はじゃ……
誰かの為にではなく自分の為に願いを叶え始めたんじゃ……
そして……
人間の欲求が溢れ……「流星夜」を起こすキラリンが足りなくなると……
たくさんのミミン達が殺されたんじゃ……
ミミンや樹木が死んだ大地……
その大地を嫌った人間はそこから出て行き、石で固めた街に住んだんじゃ……
そうじゃ……
人間は死んだ大地の見えない場所に逃げたんじゃ……


この壁画ではシャドーについてのお話をするのじゃ……
シャドーとは……
己の欲望を満たそうとした人間がスターを掲げし時に生まれた、その者の欲望を映した影なのじゃ……
生きているのか死んでいるのかもわからない
ただ自らの汚物で気に入らぬ物を塗り固めるのみ
そして……
「流星夜」になると突然騒ぎ出すんじゃ……
きっと誰かの為に願いを叶えられるのを伝えているのかもしれんな……
わしもシャドーのことはよくわからんが……
ただ……嫌いにはなれんのじゃ……

この壁画では呪いをかけられたミミンについてのお話をするのじゃ……
人間に「流星夜」を伝えたミミンじゃが……
シャドーを生み出したことで自然から呪われてしまったのじゃ……
呪いを受けたミミンは未来永劫死ぬ事が出来なくなってしまったんじゃ……
その呪いを解くたった一つの方法は……
誰かの為に願いを叶えられる強い心を持つ人間を探す事……
つまり本当の意味での流星夜を起こし……
人間が犯した間違いを浄化する者のみが呪いを解けるということじゃ……
そして……
選ばれたのが君じゃ……
君がどの道を行こうがわしは知らん……
君の信じる道へと進んでくれれば良い……
じゃが……
ミミン達の気持ちを分かってやって欲しいんじゃ……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


全員の願いを叶え、天に送ると、ゲームはエンディングを迎える。恐らくベストエンディングだ。
が、敢えて他人を無視し、自分の願いを優先することも選択肢により可能である。
先に書いたが、この選択が「ヒーロー」たるキャプテンレインボーの在り方を示す答えなのだ。

……なのに、「自分の願いを優先する」を選ぶと、「本当にいいのか?」と何度も問われるばかりか、明らかなバッドEDに入るのはどうかと思った。
どちらを選択するかはあくまでプレーヤーに委ねるべきであり、少なくとも製作者が強制するものではないだろう。
これではせっかくの選択肢に全く意味がない。製作者が「正解」を決め付けているからだ。
かつて自分を優先し他人を出し抜いたことを悔やみ続けるヒーロー……そんな姿を是としても、それはそれでいいじゃないか。
やはり今作の流星夜システムと世界設定は、練り込みが足りないと思う。残念だ。
はぁ。






ふぅ。
今作はとにかくさっぱり売れず、値崩れ横綱の地位を獲得した。
ここまで失敗すれば、任天堂の心証も著しく悪いに違いない。スタッフに次回作の機会は、果たしてあるのだろうか。
奇しくも同じラブデリック系である「いろづきチンクル」も、底値500円級まで値崩れした。値崩れ速度はそうでもなかったと思うが。
今作とチンクルはどちらもラブデリック派生であるが、製作会社は違う。その両方が、同じ様に劣悪な値崩れを示してしまった。
ちなみにチンクルの前作は、DS大ブーム期に発売されたこともあるが、20万本ほどの中ヒットを記録したはず。
これはもう、ラブデリック系のソフトが支持を完全に失い、時代遅れになっていると判断するしかない。
冷たい言い方だが、数字がハッキリそれを証明しているのだ。はぁ……。


それでなくても最近はゲームの規模が肥大化し、こういう奇天烈なタイプの作品が作り辛く、発売され難くなっている。
今作が発売に漕ぎ着けられたのは、経営に余裕がある任天堂だからこそであろう。他社にそんなゆとりがあるとは思えない。
だが任天堂も現状は大変に厳しく、今後もこういうタイプのゲームを気楽に出させてくれるほど甘くはないだろう。
王道・売れ筋だけを出すわけではないだろうが、実験的・ニッチ向けに対する目は今までより厳しくなるはずだ。
先日大々的に発表された「Wii U」により、ついに任天堂がHD画質に乗り出したことも、こういうゲームにとっては逆風でしかない。
ある意味今までの任天堂は、低画質に甘えることが出来ていたのだ。その路線を自ら捨て去った。
Wii Uで今作のようなゲームが出るとして、ヘタウマを「味」と客は受け取ってくれるだろうか。ただの手抜きに思われないだろうか。


……ああ、とことん未来が暗い。暗すぎる。
俺の願いは、任天堂のゲームが売れ、栄えること。SCEも同じ。XBOX360も同じ。携帯機その他も同じ。
ハードが売れてソフトが売れて、メーカーが潤ってユーザーが喜んで、もちろん俺も楽しむ、そんなゲーム業界が俺の願い。
排気ガスで汚れきった空に疎らに瞬く星にこの純な願いを祈っても、もちろん叶うことはなく、キャプテン★レインボーも来てくれない。
祈りとか願いとか、糞の役にも立たねーよ。現実だ。ああ現実だ。現実だ。
だから人は娯楽に夢……いや妄想を託してゲームするのか。ああそうだよ。それで幸せならそれでいいじゃねーか。
それで幸せなら、な。
はぁ……。












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2 コメント

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ラブデリック (S・R)
2011-06-25 20:27:14
まあもちろんこれも発売日買いしたわけだけれども。ちびロボは面白かったんですよ。まじで。
キャプレボはオープニング曲もエンディング曲も良かったし。いやエンディング曲一度しか聴いてないけれども。売りに行ったから。
お気づきの通り、まさにネックになるのは仲良くしたやつから帰っていくと言う点にあって、要は鑑賞の対象として住人を点数化したときの下位から追い出すことになります。なんともいえないむなしさっていうか自分の願いをかなえ無ければこういうことやっちゃっていいのかよ的な、ミミンも人間の事情には見てみぬ振りをするのかと、やーな感じの生活になってしまいますね。
ところで声の件ですが、ラブデリの作品が最初からこんな感じだった気もしますし任天堂もルイージマンションあたりからこういう手法を取り入れていたはずです。どうぶつの森とかにも受け継がれてたかな。
返信する
Unknown (ota)
2011-06-26 02:59:56
おお、この作品も発売日買いですか。非常にイカスと思います。

住人が二度と帰って来ないことに気付いてからは、なるべくイベントを潰してから空に送るようにしたのですが、
そうすると星がいちいち余ってしまい、流星夜が何度も無意味なイベントと化してしまいました。
設定とシステムが全く噛み合っておらず、製作者の力量不足を強く感じました。あれはあかん。
クリア後のセーブデータからなら、流星夜関係なく全キャラのイベント消化できる……など、何かしら配慮が欲しかったです。
キャプテンレインボーのテーマ曲は良かったですね。リトルマックのテーマ「あさっての情」も妙に耳に残りました。

ボイスに関しては、確かにラブデリック系作品共通の仕様のようですね。
独特の味があるのは確かですが、割と乱暴な手法なので、多くの作品でやってほしいとは思いません。
そういやどき魔女などの「一言ボイス」制も、ちょっとしたアイデアなのに面白い味が出てるなと感心しました。
音声ひとつとっても、必ずしも豪華声優によるフルボイスが正しいわけじゃない。面白いものですね。
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