【ハード】PS3
【メーカー】5pb
【発売日】2013年4月25日
【定価】7480円(税込)
【購入価格】0円(PSプラスフリープレイ1603)
【プレー時間】40時間
シュタインズ・ゲートである。近年(?)の読みゲーでは最大のヒット作であり、人気作だ。また知名度も非常に高い。
シュタゲ用語である「世界線」という概念はネタとして人気があり、未プレー層にも広がっていると言っていいと思う。
そんな俺がシュタゲをプレーしたのが、4年前。……もうそんなに経つのかよ!? と愕然とするが、厳然とした事実である。
それから約2年後、続編(ファンディスク?)である「比翼連理のだーりん」をプレー。……これももうそんなに前なのか。
だったら次作をやるなら2年後の今だ、と取り出したるは「シュタインズゲート ~線形拘束のフェノグラム~」である。
PSプラスのフリープレイで入手した一本だ。特に意識せず確保しておいて、今更起動。いいことだと思う。多分。
ちなみに初代はPS4版、比翼はXBOX360で、見事に機種が違う。……どうでも良すぎだ。今の時代、ハードの個性は然程ない。
純読みゲーだけにプレー前の気負いは全くない。少なくとも難しさに悶え苦しむ可能性はゼロだ。楽に遊ばせてくれるのだ。
「ボタンを押して話を読むだけで、それってゲームw?」はい、ゲームです。ボタンを押して面白さが出れば何でも可。
こういうのばかりでは困るが、たまにこういうのがないとゲームに疲れてしまうのだ。歳を食ってからは尚更に、ね。
初代シュタインズゲートは、実に偉大な読みゲーであった。緻密な内容に個性的なキャラ達、そして圧倒的なボリューム。
時間移動という創作の禁じ手を扱ってはいるものの、説明に手を抜かず、フィクションなりのリアリティを構築していた。
……そのために、せいで、シュタゲには大きな問題もあった。あまりにも綺麗に、目出度く「完結」していたのである。
シュタゲはその品質から、当然売れた。売れたんだから続編を望まれた。作りたい。けど、それは簡単な話ではない。
初代で掘り損ねた伏線等は殆どなく、また「その後」も非常に描き難い。ファンの望みは単純にして超高度なものだった。
これがファンタジーなら不思議事件や新悪を簡単に出せるが、現代劇のシュタゲではそうもいかん。現実とは平穏なのだ。
読みゲー故にシステムを弄るようなことも出来ない。読みゲーは物語とキャラで魅力を作らねばならないジャンルである。
多作の末にネタに困るなら仕方ないが、1作目の時点でそうなるんだから、読みゲーはつくづく難しい。気の毒に思うほどに。
2作目である比翼が、続編ではなく外伝、ファンディスクの類になってしまったのは仕方なかろう。それしかなかったのだ。
そして3作目である線形。……も、やはり比翼に続く外伝タイプの作品であった。続編ではない。「その後」は描かれない。
形態は、オムニバス読みゲー。登場キャラそれぞれを主人公にしたシナリオが、各話完結で全10本収録されている。
従って今作の主人公は岡部だけではない。まゆりシナリオではまゆりが、紅莉栖シナリオでは紅莉栖が語り部となる。
岡部(プレーヤー)の知らないラボメン達の姿。まぁ魅力的だ。時間が先に進むことはないが、世界が厚くなる作品である。
システムは一切合財容赦のない読みゲー。シュタゲの特性となる「選択肢がない」も引き継いでいて、ゲーム性はほぼない。
選択肢の代わりに受信メールの返信(3パターンから選べる)にて分岐があるのがシュタゲだが、今作にはそれも多分ない。
メールシステム自体は残っているが、完全にお遊び、おまけであるようだ。ガン無視してもシナリオに影響はない。多分。
最初は岡部シナリオその1だけだが、それをクリアーすると新たに3つが追加され、それらを終えると今度は4つが出現する。
と言っても各シナリオがそれぞれ絡んでいるわけではなく、完全に独立している。プレー順序はテキトーで構わない。
最後は岡部その2が出現し、これを終えるとED……だが、ED後にクリア後要素として綯シナリオが出現。これが本当の最後。
プレーヤーはとにかく只管に文章を読んで聞いていけばいい。攻略要素、つまりゲーム性は皆無だが、今作の場合それでいい。
初代も比翼も、ゲーム性が酷薄なくせに半端にややこしいフラグ立てがあって、寧ろ作品の足を引っ張っていたからな。
読みゲーはゲーム性の不足が一大欠点だが、無理にそれを入れようとして不快になれば本末転倒だ。ま、難しいとこだね。
システムについて語ることは何もないんで、シナリオについて順繰りにやっていく。読みゲーの感想だものな。
各シナリオには、例えば岡部その1は「捜査線上のジキル」といったタイトルが付いているが、正直一つも覚えていない。
この手の名付けはシュタゲの特色として継承されているが、ファンは喜んでいるのだろか? 俺には分かり難いだけである。
なので身も蓋もないが、キャラ名で呼ぶことにする。すまんのう。おっちゃん、もう厨二のノリはちょっとキツぅてな……。
・岡部倫太郎編その1
最初にプレーすることになるシナリオ。そのためか軽いノリで始まる馬鹿シナリオ。……取り敢えず、途中までは。
最近、岡部はアルパカの着包みを纏った「アルパカマン」として秋葉原界隈のトラブルを解決する活動をしていた。
任務に失敗しても、岡部にはDメールと電話レンジで挽回が可能。無欠のヒーローとして、彼は満足していた。
アルパカマンの着包みを作ったのは、もちろんまゆり。彼女は今も、そしてこれからも岡部の「人質」であり続ける。
……はずだったのだが、中盤で岡部とプレーヤーは「現実」を突きつけられる。ここは初代で言うバッドED後の世界だった。
岡部はその現実を受け止めきれず、アルパカマンという存在にまゆりを託して逃げていたのだ。完全に精神病者状態。
……うーん。初代の続きどころか、初代の途中にあるバッドの流れの間に挟まれる物語。これ、今更読みたいか?
続きを描けないから、縦ではなく横に世界を広げる必要がある。それは分かるけど、そこを膨らませる? と疑問しかない。
アルパカマン活動なんて物理的に無理がある(着包みを常時持ってパトロール?)し、その辺の突っ込み所にも事欠かない。
初代で散々見せられたまゆりの悲劇をまた掘り起こして、一体何がしたいのか。ギャグ面も含めて笑えないシナリオだった。
あと、シド。このシリーズでずっと引っ掛かってる「コイツはギャグなの? 悪なの?」という混迷が、また深まっちまった。
コスい転売屋のバイトをした痛い奴と描写したと思ったら、人質にナイフを突きつけてテレビ沙汰に。全然笑えないよ。
元ネタは「ガイアが俺にもっと輝け~」であり、そういう意味では完全にギャグキャラだ。なのに作中、何度も変貌する。
製作者はプレーヤーにシドをどう見せたいのよ? そこは未だに全く分からん。故に俺はコイツ嫌いだ。もう出さんでくれ。
シナリオ中に「転売屋も悪とは言い切れない」て擁護を入れてたのは謎だったな。悪だよ。それは仲介屋とは全然違うよ。
世の中に需要があれば仲介だけど、転売屋は無理矢理流れに割り込む行為だろ。犯罪ではなくても悪事だよ。俺は断言する。
まゆりがいない現実を突きつけられた岡部は紅莉栖に叱咤され、「本当の世界線」に戻ることを決意する。
それが可能なのがこの作品だからな。プレーヤー視点ではもう既に解決済みだから微妙な空気だが、まぁ頑張ってくれい。
シュタゲシリーズはプレーすればするほど時間操作に拒否反応が出てくるところがある。何気に不思議な現象だと思う。
比類なき青狸に脳の隅々まで刻み込まれた「夢」をいい加減捨てろというメッセージなのだろうか。そうですよね。はぁ。
・橋田至編
岡部の右腕兼凄腕のハッカー・ダル、本名は橋田至。見た目はデブ(体格は良い?)で、言動や行動はオタクそのもの。
岡部はアイデア出しや行動力はあるものの、それを実現する能力にはハッキリ言って乏しい。そこを補うのがダルだ。
電話レンジという世紀の発明を成し遂げたのはダルと紅莉栖の力が9割である。岡部も中心に必要なのは間違いないが。
そんな凄まじい能力の割に作中での待遇が悪いと初代では感じていたが、比翼、そして今作でそこはかなり埋められている。
ダルには設定的に娘の存在が確定しており、つまり未来の妻がいる。初代では謎の存在だったが、比翼で明らかになった。
その未来の妻と、今作では第三者ではなく主人公としてやり取りが出来る。ダルとしてはこんな嬉しいことはないだろう。
シナリオはSERNの絡ませ方が強引であんまし良いとは思わなかったが、ここはダルが喜んでいればOKとすべきであろう。
妻を助ける際には娘に助けられもしたしね。羨ましいこった。人間は外見じゃない、中身という良い見本だ。……はぁ。
シナリオでは暗号の謎解きにかなり注力されていたが、結果としては「分かるか!」なもので、ガッカリした。
ゲーム的に解かせろとは言わんが、プレーヤーも一緒に考えて楽しめるようなものにしてほしかった。……望みすぎかね。
ダルというか、シュタゲは初代から「2ちゃん(作中では@ちゃん)語を多用する」作品であった。ダルはその代表だ。
これほど2ちゃん語を取り込んでるゲームは多分他にない。冷静に考えれば非常に痛いのだが、非常にリアルだとも思う。
……が。初代当時ならともかく、今作が発売された2013年では、2ちゃんは既に随分廃れていた。現在はもう見る影もない。
そんな中で多用される2ちゃん用語の数々は、正直微妙だった。個人的には懐かしくて悪くないが、それは違うよなぁ。
思えば今作の骨子でもある「厨二病」だって、時代と共に変遷するものだ。岡部のそれは、今だと古く感じるところがある。
この辺も読みゲーのしんどいとこだな。時代の空気を取り入れるのは悪いことではないが、諸刃の剣だよなぁ……。
・牧瀬紅莉栖編
シュタゲのヒロインと言えば~? 紅莉栖である。疑う余地は無い。ないったらない。まゆりも大切な存在だが、「人質」だ。
別にネタではなく、初代ではその解釈でいいと思うが……比翼での「ヒロイン度」だと、正直まゆりに完敗していた。
恋愛を主軸にした続編において、サブヒロインに内容で完敗。これは相当恥ずかしい話である。いや紅莉栖は何も悪くないが。
じゃあ3度目の正直、今作ではどうなのか!? ……うーむ。そもそも、こんな早い段階でシナリオが登場してる時点で……。
クリア状況に応じて段階的にシナリオが増えるんだから、真ヒロインならもっと後にしてほしかった。無論、二つ目もないし。
そんな紅莉栖編だが、状況としては初代の途中、岡部がまゆり地獄(悪い表現)で精神的に追い詰められていた頃が舞台だ。
この頃の岡部は完全に袋小路に行き詰っていたが、紅莉栖の叱責により気力を取り戻すという描写が初代にはあった。
その辺りの紅莉栖側の動きを大きく膨らませて描写している。……また今更過去を? それは言うな。仕方ないんだよ。
初代での紅莉栖は電話レンジを開発したものの、タイムリープを体験したのは岡部のみだった。……あと狂人少女もか。
それも岡部が孤独と苦悩を深めた理由だったのだが、今作において、実は紅莉栖もタイムリープをしていたことが判明する。
岡部の異常を察知した紅莉栖は、あの叱責の前、何とか彼を助けたいと裏で奔走していたのである。……無論、好きだから。
そう、今作において、つまり初代の範囲内で、紅莉栖は岡部が好きとハッキリ自覚し、独白しているのである。
あの段階でだとちょっと早い気もするが、まぁ細かいこたいい。恋する少女を応援しない理由はない。ヒロイン度も上がる。
そうして紅莉栖なりに色々動くわけだが、理屈に関してはまぁ正直どうでもいい。問題は人だ。紅莉栖の頼れる仲間だ。
一人ではどうにもならない事態に、紅莉栖は人を頼る。それはもちろん構わんのだが……最大の協力者が、父親なのである。
紅莉栖の父親、通称ドクター中鉢。……ユンゲラー方向で怒られないか心配になるな。当人は多分存在を知らんだろうけど。
初代で登場した、まぁ悪役だ。娘である紅莉栖が天才であることから嫉妬と憎しみを抱くようになり、一度は殺害までした。
紅莉栖自身はそんな父の心情を察しつつも仲直りを模索するが、頑固無能親父は聞く耳を持たず、父娘の溝は広がるばかり。
初代では終始そんな役柄で、好感の持てる要素はなかった。紅莉栖よ、もう父は忘れろ。君には岡部がいるさキラン。
……だったのに、今作では紅莉栖のお助けキャラとして大躍進。ひょんなとこから連絡が付くと、怒涛の有能ぶりを見せる。
天才・紅莉栖の話を電話・FAXだけで理解し、議論し、最後にベスト助言を与える。凄い。パパ大好き。紅莉栖もニッコリだ。
けど!!! プレーヤーにとっちゃ中鉢は悪役オブ悪役でしかない。肉親である紅莉栖に情が残っていても、俺は違う。
別に中鉢を殺せ、痛い目に遭わせろとは言わんが、こうまで強力な協力者(洒落)にすべきだったのか。非常に疑問である。
それに、だ。シュタゲの常として、タイムリープ後は全てが「無かったこと」になる。紅莉栖と中鉢の和解も、無論そうなる。
長年蟠りのあった父娘が、少しずつ議論を深め、やがて解決策を見出す。場面だけ見れば非常に感動的で、盛り上がる。
でも、ゲームを進めれば、全部泡へ。中鉢は当然紅莉栖を嫌うクソ父へ戻る。再度相談しても「は? 死ね」完だろう。
プレーヤーはそもそも中鉢との連携なんて望んでないし、その感動連携も霧散するんだから、2重にロクでもない話だ。
良いシナリオだったとはとても思えない。上手いことネタを捻り出したなとは感じたが、賞賛は出来ないなぁ……。
・阿万音鈴羽編
鈴羽は別の世界線にて、姿は同じだが性格が全然違う「鈴羽」が二人確認されている。その二人が、幽霊として本編に参加。
……無茶苦茶だが、深く考えてはいけない。鈴羽以外には姿も見えず声も聞こえないが、物理的接触は可能という。無茶苦茶。
まぁいい。本編通り、鈴羽は過去に飛ばねばならないが、タイムマシンが故障。それを幽霊二人と一緒に修理することになる。
鈴羽はラボメンではあるが、別世界の人間だ。結局岡部らと同じ時間では生きられない。残酷だがそれで正しいのだろう。
その意味では重く悲しいシナリオだが、その分、描かれる思い出作りはかなり良い。今作で一番のシナリオだったかもしれん。
父・ダルとのやり取りや紅莉栖との和解は、ファンとして見応えがあった。特に紅莉栖とは、本来喧嘩する理由ないもんな。
紅莉栖がSERNに協力したのは、何としてもまゆりを救いたいからだった。鈴羽はそれに気付き、全てに納得したのだった。
そんな描写を挟みつつ、幽霊ズやラボメンと協力してタイムマシンを直し、一応事態は収束に向かっていくのだった。
……が、天王寺との会話にて、彼の恩人が「橋田鈴」であり、既に故人であることを知る。言うまでもなく、鈴羽本人だ。
それは確定した未来。過去に戻った鈴羽が、そのまま時間を経て岡部達と再会することは出来ない。決まっているのだ。
過去に行くことには納得していたが、そうすればいつか岡部達とまた会えると思っていた。しかしそれは叶わない願いだった。
これが今生の別れとなる。父親であるダルとも。後ろ髪を引かれる鈴羽。……キツい描写だ。だが運命扉の選択である。
意を決して過去へのボタンを押した鈴羽のその後は分からない。メイド鈴羽の「理想の日常」が少し描かれ、物語は終わる。
報われたと言っていいんかな。当人は納得してるんだし。人は生まれた環境なりの人生を歩むしか無いのだ。多分。
・天王寺裕吾編
天王寺裕吾が本名だが、専ら「ミスターブラウン」「ブラウン管工房の店主」と呼ばれる、未来ガジェット研究所の家主。
初代ではサブキャラながら岡部らとの絡みは多く、なんか妙だと思っていたが、中盤になんと敵の中ボスであることが判明。
極悪組織SERN日本支部の戦闘部隊の指揮官だった。……なんじゃそりゃあ! 知るか。こっちが訊きたいわ畜生。
シュタゲはもちろんフィクションの物語だが、時間移動面に関しては「フィクションなりのリアリティ」があると思う。
しかしSERN関係になると、途端に無茶苦茶、そんなんあり得ねーよ馬鹿と言いたくなることばかりだ。俺の感覚だが。
日本支部があるのはいいとして、銃器ゴロゴロの武装集団て。漫画の読みすぎも大概にせぇよ。納得なんか出来るかよ。
要するに岡部の見ていた天王寺は全て擬態だったわけだが、発覚しても驚きではなく呆れが零れるばかりであった。はぁ。
そんな天王寺が、今回初めて自身の視点で語るシナリオを与えられた。となれば、期待するのは「舞台裏」である。
SERNの幹部として普段どんな暗躍をしていたのか。萌郁へのメールはどんな顔して打っているのか。なんであんな早いのか。
それらが語られれば、本編の出鱈目さにも多少は納得がいくかもしれない。プレーヤーとしても興味のあるところだし。
……てわけで期待して始めてみたのだが、木っ端微塵に裏切られました。完全ギャグシナリオ。逃げやがった。
そもそも無茶な設定だから、裏をキッチリ描くのは非常に大変。今更ンなことやってられっか、と。ギャグで茶を濁せ、と。
盛大に呆れ返っちまったよ。元々の設定が何も考えられていないことの証明にもなった。テキトーな世界である。
ちなみに岡部編1では「転売屋の元締め」という裏の顔も出来たが、それとの絡みも皆無。ただのブラウン管好き親父。
こんなんじゃ天王寺編なんて入れる必要ないだろ。入れたことで寧ろ不満が募っちまった。緻密さがない。はぁ。
シナリオは、「娘の綯を溺愛している」という設定を加速させたもの。まぁそれ自体は本編とも矛盾ないからええんやけど。
でも綯は小5(多分)て設定なのに、扱いが子供過ぎないかと思った。その歳でもまだぬいぐるみ部屋に大喜びするか?
改装工事に1年かかってもラボメンが誰も抜けてないのもな。その間どこで活動してたんよ? その描写が全く無い。
まぁギャグシナリオだからその辺はいいのかもしれんが……1年経っても全員服装が同じなのは言うまでもない。はぁ。
Dメールを使って何度かビルを建て直すが、どれも綯を満足させることはなかった。一体何が足りないのか?
答えは、既にこの場にいない鈴羽だったのだが、その記憶自体が皆から消えているので、誰もそれを指摘できない。
岡部を除いては。その岡部は天王寺に「時が埋める」というアドバイスをし、天王寺もそれに従う。
最後は12年後、23歳に成長した綯は、今も天王寺と住み、あのビルでとある女の子を可愛がっていた。「鈴ちゃん」を。
……これは鈴羽編でのメイド鈴羽の世界線、「理想の未来」なのかな。だとしたら、ええ話やな。そう思っておこう。
・フェイリス編
メイド喫茶で働くちょっと電波気味な美少女! ……というのは擬態で、実は秋葉原を牛耳る名家の令嬢。
10年前に父親を亡くしてからは、執事の力を借りながら、子供ながら地主として大人達と渡り合う日々が続いていた。
その上でオタク活動も行い、自分が経営するメイド喫茶のウェイトレスまでやってるんだから、ハッキリ言って凄すぎだ。
紅莉栖やダルとは違った方向で化け物なキャラである。……俺は申し訳ないが、声が苦手なので好きじゃない。すまぬ。
シナリオでは、そんなフェイリスの大人達への疑念と戦い、及び同世代キャラとの心休まるやり取りが描かれる。
ある日、秋葉原で奇妙な都市伝説が広まっていることを知ったフェイリスはコスプレしてその調査に乗り出すことにする。
……導入の時点で「都市伝説つっても明らかに無理矢理作ってるだろ」と言うしかないが、誰もそんな突っ込みはしない。
んでその調査をコスプレで行う? 真面目にやれよ。……ごめん野暮で。でもフェイリスは一応真面目なんじゃ……?
それにこのネット時代、噂なんて即座に検証されるって。「作った」んだったら尚更バレないわけがないって。……はぁ。
その噂調査には、SERNとの関連を疑った鈴羽も参加し、二人はコスプレコンビとして数日活動することになる。
その間に親睦を暖めまくる二人。……今作では、岡部以外のラボメンが仲を深める描写が目立つな。とてもいい。
シュタゲは別にハレイムものじゃない(俺はそうあってほしいが)から、岡部が中心であっても全てではない。
岡部視点でラボメン同士の触れ合いは描き難いからな。多少無理があるとして、この点は今作のいい部分だった。
シナリオは終盤、ガチでちょっとヤバいネタを引いてしまい、鈴羽が地下の崩落に巻き込まれ、取り残されてしまう。
瓦礫の隙間が狭いから、助けに行くには体の小さい人間……フェイリスしかいない! ということで、フェイリス頑張る。
その際に「嫌な大人達」の代表格である天王寺ともちょっとだけ心が通じ合ったりして、まぁ悪くない感じだった。
一方で銃弾をこっそり処分する天王寺はやっぱ食えない大人だった。フェイリスがあいつと渡り合うのはまだ無理だな。
ラストは鈴羽が過去に旅立ち、悲しい別れがあるが、直後に母親が帰国する。「長年臥せっていた友人を連れて」。
そう、それは過去に戻った鈴羽だった。このシナリオは正史ではないようだ。が、これでいい。二人は再会を喜び、了。
シュタゲのifは「違う世界線での事実」と捉えるべきだろう。これもどっかで起こったHappy Endなんだよ。
・漆原るか編
女装男子。2009年当時なら笑いを交えて語れるキャラだが、今じゃもう許されないだろう。こえー時代だよな、本当に。
「どう見ても女に見える男」が本来のるかだが、今作では正真正銘の女。つまり初代であった別世界線、バッド世界だ。
そのため(それだけが理由じゃないが)まゆりが死ぬこととなり、岡部が果てしない試行錯誤地獄に陥るのは周知の通り。
本編のるかルートではこのまま二人は苦しみを共有し、結ばれ、やがて二人の子が生まれる一枚絵で終わりとなった。
今作でも序盤は同じ流れになる。まゆりを犠牲に女の身となった「罪」を岡部と共に受け入れ、行きていく決心をする。
しかし「一つだけやり残したことがある」として、まゆりの願いであったコスプレしてのコミマ参加を決行することに。
それには当然、タイムリープをする必要がある。岡部はるかの願いを聞き入れ、るかはタイムリープで数日前に飛ぶ……。
これも初代の中身を膨らませるシナリオだった。例によって仕方ない。シュタゲで扱えるネタは限られているのだ。
るかは予定通りタイムリープを行い、コミマに参加する。ちなみにその際、タイムリープのキツさが強く表現されている。
これを数え切れないほど繰り返した岡部は化け物か、と。そらぁな。やっぱ禁忌の技術だわな。怖いもんだ。
るかがコミマに参加しまゆりは非常に喜んでくれたが、もちろん運命は変えられず、そのまま死ぬ。またこの現実が始まる。
それを受け入れたるかと岡部は、苦しみながらもその後寄り添って……となったら初代バッドEDだ。それじゃダメなんだ。
るかは結局、Dメールを母親に送り、男に戻る決断をする。まゆりの想いを犠牲にしちゃいけないんだと。……うーん。
確かにそれが「正しい」ことなんだろうが……エゴを出して岡部と生きる初代バッドEDの方が俺は好きだのう。
Dメール送りは成功し、場面は初代の真ED直前、入院中の岡部を見舞うシーンに飛ぶ。「正しい世界線」に戻れたわけだ。
もちろんるかも男に戻っている。見た目は女性なのも変わらない。……それでええんか。今後もそれで生きていくんか。
ギャグ設定である「男の娘」を真面目に描かれると、受け手としてはしんどい。るかに関しては毎回そう思う。
なーんかなぁ。まぁ今回は当人が納得してるからいいとしよう。頑張って生きてくれとしか。生きるって大変だからな……。
・椎名まゆり編
岡部の幼馴染であり、厨二病のきっかけとなった人物。ラボメンの肝で、非常に重要な存在。そして言うまでもなく、女。
岡部が男でまゆりが女である以上、ラブコメが発生するのか或いはしないのかは大きな関心事であり、問題となる。
比翼ではバリバリにヒロインをやっていたが、本編の空気ではやっぱ紅莉栖に軍配が上がると思う。
だが岡部に対し全く恋愛感情がないというのも不自然だ。つっても濃い三角関係やらせるのも何か違う。ああもう、難しい!
恋愛特化の比翼では話は簡単だったが、今作では一人称を与えられたまゆりがどう描かれるのか。読むしかない。
設定としてはやはりバッド世界線で、まゆりは最近よく見る夢という形で現実に違和感を抱く。岡部の態度や言動にも。
どうやらまゆりの死は回避したものの、代わりに紅莉栖が消えてしまう世界である模様。これも初代の途中であったな。
まゆり自身は違和感はあってもそんな現実には当然気付かないが、意を決して紅莉栖を捕まえ、じっくり話し込むことに。
まずまゆりが岡部を好きと告白し、逆に紅莉栖は岡部に告白されたことを語る。そしてそのまま、まゆりは事実を求める。
紅莉栖も意外というかキッパリと事実を教えてくれた。どうやってもまゆりが死ぬ世界線と、それを回避する方法のことを。
そのためにはDメールでの改変を一つ一つなくしていく必要がある。そして最後のひと押しとして、紅莉栖の死が必要になる。
まゆりと紅莉栖の二者択一。初代で岡部はここで死ぬほど苦悩した結果、遂に「正解」に辿り着くのだが……ここでは違う。
遂に自分の現実を知ってしまったまゆり。お姫様は戦場に立った。なら戦うしかない。最強の敵である。現実と。
結果として、まゆりは自分が岡部の「人質」となるきっかけをDメールにより改変することで、望みを叶える。
しかしそれはつまり岡部との関係もなくなるということで、ラボとは無関係の女子高生生活を送る自分になっていた。
……一方、岡部は自身の能力により、全てを記憶していた上でまゆりを探していた。これはこれで大変だっただろうなぁ。
まゆりは岡部を救いたかったはずだが、抜けられない死の運命よりマシとしても、精神的苦悩は上積みで残してたよ。
この点、スッキリしない結末だった。最後に二人は再会。まゆりにとっては「知らない人」だが、不思議パワーで解決。
もちろん正史とは違う世界線だが、この後はラボメンが集まったりするんかね。純粋に二人仲良くだけでいいかもしれない。
そう、正史じゃないんだからな。もう電話レンジで消えることもない世界だ。こんな世界線もあっていい。……分からんが。
・桐生萌郁編
美人だが非常に無口、けどメール魔で電子では饒舌、打つのも異常に速い。ととにかく変な人。名前に反して萌えにくい。
実は裏の顔があり、SERN天王寺の部下だった。場合によっては銃器も扱う本物の実行部隊である。無茶な設定やのう。
天王寺編ではそういった裏の顔はガン無視されていたが、萌郁編では逆にその裏の顔と表の顔の間で葛藤することになる。
萌郁は天王寺(正体は隠してFBと名乗っている)からのメール指示で岡部ラボに潜入し、様々な工作を企んでいた。
それ自体は上手くいっていたのだが、気の良いラボメン達とのやり取りが非常に楽しく、やがて萌郁は葛藤し始める。
自分を孤独から救ってくれたFBの指示は絶対。けどこんな良い人達を騙すばかりか殺すなんて。そんなこととても……。
表裏の自分で板挟みになった萌郁は、どんな選択を取るのか? プレーヤーとしてはなかなか重いシナリオである。
そしてそんな萌郁の心情を百も承知で冷酷な指示をだす天王寺の悪魔っぷりよ。あいつ全然笑えん。ブラウン管嫌いになる。
このシナリオもまた初代の一部の膨らませであり、かつ別ルートだ。正史じゃないが、シュタゲはやっぱこれしかないかな。
初代での萌郁は、ラボメンではあったがその性格ままにあまり輪に溶け込んでおらず、その辺はリアルだったと思う。
それが今作では紅莉栖及びまゆりと非常に仲良くなり、正直面食らった。萌郁さておき、2人がとても同一人物とは思えん。
今作ではとにかく「岡部以外のラボメン達の絡み」に力が入れられている。それ自体はいいことだし、見られて嬉しく思う。
しかし、これ以外でも多少無理を感じたが、萌郁シナリオでのそれは少々強引が過ぎる気がした。「こうはならんだろ」と。
萌郁自身は無口で超受身(大門ではない)なままなのに、紅莉栖もまゆりも満面の笑顔と善意でガンガン攻めてきてくれる。
まゆりはともかく、紅莉栖があんなことせんだろ。ラボ会議中にメールで会話とか、別世界線かと思った。いやそうなんだが。
比翼ではシナリオ毎に各キャラの岡部への好意が激変していたが、本編にも食い込んでるシナリオでこうもやられると……。
その違和感が強く、萌郁の悲しい板挟みにもイマイチ浸れなかった。「作られた悲劇」に見えるのよね。うーん。
更に言えば、俺は「お前(萌郁)が悪い」としか思えんし。自我を捨て、FBに全てを委ねた結果がこれだよ。甘えんな糞が。
考えることを放棄した人間には、もう思い悩む資格もない。このキャラは悲しいロボットとして死んで行くべきではないか。
少なくとも本編ではそうあるべきだと思う。そこから別ルートを描くなら、救いのある終わり方にすればよかったのに。
最後も無理矢理な感じで悲劇に終わった。……まぁ、最後に「主人公」になれたことが、少しは慰めになるといいな。はぁ。
・岡部倫太郎編その2
全キャラのシナリオを終えると、最終章として岡部編その2が登場。やっぱ本当の主人公、特別扱いされている。
……が、別にその1の続きではない。それどころか……締めにしては何とも変則的で、こちらをその1にすべきと思った。
要するにミステリをやりたかったようだ。謎が謎を呼び、最後になって全てが明かされる。で、当然ハッピーに終わる。
……けどなぁ。例によって突っ込みどころが多すぎて、そもそも謎に浸れない。「はぁ?」ばかりが重なっちまう。はぁ。
怪しい連中つっても、マントに仮面て時点で「危険」ではないだろう。つーか明らかにコスプレやろが。恐れんなや。
19の学生に300万貸してくれる街金? 惚れた女相手だから300万貸してやる下っ端? 発明大会の賞金が300万円!?
理屈にばかり拘ってリアリティを犠牲にし、没入感が大いに削がれた。……創作物ではよくあること、なのだろう。
最後が一番「シュタゲで新シナリオを作る難しさ」が感じられたな。無理だよ! と製作者が匙を投げてる感じさえする。
どうしても時間移動要素を入れなきゃならんことは、便利な反面、物語を複雑にするからな。良いことばかりじゃない。
時間移動は、禁断の技術である。シュタゲ内でも度々言われてることだが、現実でも創作でもほんまそうである。
それでも人は時間移動を求め続けるんだけどな。その「業」を表現したシナリオってことか。考えすぎ。難しいのう。
・天王寺綯編
岡部編2を終えたらスタッフロールが流れるが、再度始めると隠しシナリオ登場。なんとあのサイコ少女編だった。
隠しシナリオ自体は予想出来ていたが、まさかこのキャラとはね。まぁ他に空いてる人いないから仕方ないか。
本編でのこの子はサブキャラから超絶キチに変貌したので、萌えとかそんなん欠片もない。正直平常時でも目が怖い。
大体お前の親父が悪いんだから、岡部を恨むのは筋違いだろうが。……なんて理屈をキチが聞くわけないか。はぁ。
と言ってもそれはあくまで本編での「可能性」であり、そこを通らねば少女は普通の少女のまま。時間移動万歳だ。
で、このシナリオ、「まゆり死亡のバッドエンドから2年後」が舞台となる。岡部、ダル、紅莉栖はSERNに堕ちた。
そして天王寺も死んでしまったが、中学1年となった綯は裏の事情を一切知らないまま、それなりに平穏に暮らしていた。
そんなある日、綯は見知った巨体を見かける。ダルだ。ずっと引っ掛かっている「2年前の真相」を知るチャンスだ。
綯はダルに接触する。ダルは驚くが、自らの目的には協力者が必要と判断したのか、綯と行動を共にすることになる。
ここに奇妙な協力関係が誕生し、「かつてラボだったあの部屋」での活動が再開される。果たして、その先には……?
このシナリオが、今作で、いや比翼も含めて唯一の「本編のその後」ではなかろうか。いやバッド後だから違うんだけど。
それでも他シナリオのようなまやかしのその後ではなく、キッチリ2年後として扱っていた。ごめん上手いこと言えん。
故に、面白かった。バッド後だから、本編とはある意味関係ない。消えてなくなる世界線だ。本質はそこらのifと同じだ。
だが綯とダルという新鮮な組み合わせがまゆり死亡というシュタゲの一大事件に取り組んでいたから、没入感が違った。
つってもシリアス一辺倒ではなく、ダルは当然ながら「JCにお世話されるとか死んでもいいでしょJK」と状況に大喜び。
綯も綯で、何故かゲーセンで格ゲーやるJCだったりダルのお使いでエロ同人買いに行かされたり、見どこが多かった。
もちろんサイコ化することもない。この綯なら、真相を知ったとしても暴走することは多分ない。普通に良い子だった。
急造コンビだが他シナリオの女性キャラ友情のような無理矢理さはなく、自然な信頼、そして警戒も感じられた。
まゆりは当然として岡部も紅莉栖も出てこないが、十分面白かったしシュタゲだった。……いいことなのか? 多分。
ダルは綯の協力を得てラボで作業をするが、目的が何なのかは不明。無論時間移動関係、SERNと戦うためなのことだろう。
綯は協力の代わりに2年前の真相をダルから教えてもらうとするが、結局それは叶わなかった。でもその方がいいさ。
ダルは見た目も中身も変わってないようで、綯を巻き込みつつ一線は越えさせないという、大人の役割を見事に演じていた。
そらSERNに拉致され、何かしらやらされてたんだもんなぁ。オタ気質や口調は変わってないが、大きな成長が見られた。
……つっても、SERNで何をしていたのか、どうやって逃げてきたのか、その辺は一切不明。追手の描写はあるけど、謎。
そもそも本当に逃げてきたなら、逃げ切れるわけがない。ラボなんていの一番に警戒される場所に籠もって作業て。無理。
その意味ではこのシナリオも出鱈目だが、不思議とあまり気にならなかった。メイン二人の描き方が上手かったのだろう。
シュタゲはSERNが出張ると途端に無茶苦茶になっちまう。現代劇で3人も拉致って。そんな簡単な話ちゃうぞ。知らんが。
まぁしゃーない。ダルは目的を達したようだが、黙って消えた。綯は父に本当の別れを告げられたことで、一応納得。
再び日常に戻っていった。もう今後は普通の少女として生きていくことだろう。……SERNのディストピア、実現しないよね?
「本当の」世界線ではないが、これはこれで続いていってほしいもんである。分からんけどな。まぁ頑張ってください……。
ふーー。綯編を終えれば本当に終わり。で、トロフィーだ。つっても今作は他ゲーに怒られるレベルで簡単。読みゲー万歳。
本編を全部終えるだけで9割は取れるし、残りはメール分岐を埋めるだけ。メッセージスキップから作業をすればすぐ終わる。
これで輝くプラチナトロフィーを取れるんだから、ちょっと申し訳なくなる。いや何も悪くないが。ジャンル的に仕方ないし。
下手に分岐を複雑にされても、面倒なだけで面白みなど全く無いからな。それでも、この楽ちんさはちょっと後ろめたい。
まいいか。ちなみにVITA版もあるけど、別トロフィーらしい。そっちもフリプで同時入手してるから、トロ稼ぎもいいかも。
もちろん全スキップでな。もうキッチリやったからいいだろ? ……そらいいけど、それでええんかお前は。うるさい。
トロフィーに変な拘りを持つのは、あんましよろしくない。そう思うようになってきたが、まだちょっと修正は無理そうだ。
グラフィックは……ガッカリ。3作目だが、相変わらず流用しまくりで、金も労力も全然感じられない。これじゃダメだろ。
作風から必然的に岡部の立ち絵が多く必要になり、そこはさすがに描き下ろしていたが、それだけ。他は昔見たのばっかし。
ダルなんて2年後の姿まで流用だからな。Tシャツの色が違うだけ。どこまで手ぇ抜きたいんだと。真面目に働けよほんま。
一枚絵はさすがに描き下ろしてあるけど、それは当たり前だし、数や質が飛び抜けてるとも思わんしな。ごく普通。
「読みゲーは読みゲーだなぁ」と呆れと諦めの溜息が出た。売る努力をしなきゃ、ジャンル衰退を嘆く資格も無いよ。多分。
音楽も前2作の流用が多く、こちらはシュタゲ感があるので悪くはないかもしれんが、やっぱ手抜きと言えば手抜きである。
もういいや。多分絵や音を頑張ると、コストが10億くらい上がるんだよ。素人には分からん制作上の事情があるんだよ。
でもこれでフルプライス払わせるのはなぁ。シナリオ全振りとしても、そこまでも価値は感じられんかったし。
フリプ入手でよかった、てな。こうして金が回らなくなり、ますます先細る、か。確定された世界線だった。終わり。
ふー。不満はあったが、のんびりプレーできる読みゲーとしては楽しめたのでそんなに文句はない(だったら何故書く!?)。
新年一発目のゲームとしては上々だった。……そう、実はこれ、正月休みにプレーしたんですよ。なんつーか、ごめんなさい。
さて、初代、比翼、線形とプレーした。残るシュタゲは……そう、「シュタインズ・ゲート ゼロ」である。
実は俺、最初にゼロを購入したのだ。初代がオマケとして付いてくると聞いて、それを含めて発売日に買った。偉いぞ俺。
……のだが良くも悪くも大ボリュームな初代をプレーするだけでその時は気力と時間が尽き、すぐには開封出来なかった。
更に「やっぱ比翼と線形を先にやらなきゃ」と思うとますますプレーが遠のき、その間にフリプ化して嘆いたり、色々あった。
だが今度こそ、準備は整った。4年越しにゼロを開封しプレーする時が来たのだ! ……いや、開封は止めておこうかな?
だって今はフリプのDL版でもやれるんだし。悪戯に新品未開封を崩すこたないでしょ。まぁそれはどうでもいいか。
ゼロこそは「続編」として作られているはず。パッケ絵からすると、主役はバッドルートの岡部か? 過去改変に動くのか?
立ち絵や曲も今度はガラッと変わってるはず。何年もかけて作られた、非常に作るのが難しかった、待望の真・続編だ。
比翼と今作にあった停滞感とモヤモヤを吹き飛ばす内容であることを期待しておく。……あんま過剰に望むな。そうだね。
そして世界設定に関係があるらしい「ロボティクス・ノーツ」もPS3版は持っている。これもやらんと。そんなんばっか。
それを言うなら科学アドベンチャーシリーズは他にもあるしな。やるこた幾らでもある。多分どれも緩く繋がってるだろうし。
シュタゲを軸に、広げていこう。比類なき時間移動読みゲー・シュタインズゲートのファンでいることを再認識して終わり。
俺達は戻れない。確定した過去を背負って今を生きて未来へ向かうしかない。そんな俺らの夢を背負って、頑張れシュタゲ。
……ま、もう時間移動への憧れも大分薄れたけどな。そんなことする気力もない。変えたって別の形の今が始まるだけ。
寧ろこれ以上余計なことしないでくれ、まである。なーんかなー。「過去を変える」ことも、結局前向きな行為だよな。
岡部らは気力に溢れた若者たちなのであった。俺はこの変わらぬ世界で、彼らを覗き見しつつ決まった未来を生きるだけ。
それがシュタインズゲートの選択だから仕方ない。……ってシュタゲのせいにすんな、お前の選択だ、お前の。はい。
はー。
拍手を送る
【メーカー】5pb
【発売日】2013年4月25日
【定価】7480円(税込)
【購入価格】0円(PSプラスフリープレイ1603)
【プレー時間】40時間
シュタインズ・ゲートである。近年(?)の読みゲーでは最大のヒット作であり、人気作だ。また知名度も非常に高い。
シュタゲ用語である「世界線」という概念はネタとして人気があり、未プレー層にも広がっていると言っていいと思う。
そんな俺がシュタゲをプレーしたのが、4年前。……もうそんなに経つのかよ!? と愕然とするが、厳然とした事実である。
それから約2年後、続編(ファンディスク?)である「比翼連理のだーりん」をプレー。……これももうそんなに前なのか。
だったら次作をやるなら2年後の今だ、と取り出したるは「シュタインズゲート ~線形拘束のフェノグラム~」である。
PSプラスのフリープレイで入手した一本だ。特に意識せず確保しておいて、今更起動。いいことだと思う。多分。
ちなみに初代はPS4版、比翼はXBOX360で、見事に機種が違う。……どうでも良すぎだ。今の時代、ハードの個性は然程ない。
純読みゲーだけにプレー前の気負いは全くない。少なくとも難しさに悶え苦しむ可能性はゼロだ。楽に遊ばせてくれるのだ。
「ボタンを押して話を読むだけで、それってゲームw?」はい、ゲームです。ボタンを押して面白さが出れば何でも可。
こういうのばかりでは困るが、たまにこういうのがないとゲームに疲れてしまうのだ。歳を食ってからは尚更に、ね。
初代シュタインズゲートは、実に偉大な読みゲーであった。緻密な内容に個性的なキャラ達、そして圧倒的なボリューム。
時間移動という創作の禁じ手を扱ってはいるものの、説明に手を抜かず、フィクションなりのリアリティを構築していた。
……そのために、せいで、シュタゲには大きな問題もあった。あまりにも綺麗に、目出度く「完結」していたのである。
シュタゲはその品質から、当然売れた。売れたんだから続編を望まれた。作りたい。けど、それは簡単な話ではない。
初代で掘り損ねた伏線等は殆どなく、また「その後」も非常に描き難い。ファンの望みは単純にして超高度なものだった。
これがファンタジーなら不思議事件や新悪を簡単に出せるが、現代劇のシュタゲではそうもいかん。現実とは平穏なのだ。
読みゲー故にシステムを弄るようなことも出来ない。読みゲーは物語とキャラで魅力を作らねばならないジャンルである。
多作の末にネタに困るなら仕方ないが、1作目の時点でそうなるんだから、読みゲーはつくづく難しい。気の毒に思うほどに。
2作目である比翼が、続編ではなく外伝、ファンディスクの類になってしまったのは仕方なかろう。それしかなかったのだ。
そして3作目である線形。……も、やはり比翼に続く外伝タイプの作品であった。続編ではない。「その後」は描かれない。
形態は、オムニバス読みゲー。登場キャラそれぞれを主人公にしたシナリオが、各話完結で全10本収録されている。
従って今作の主人公は岡部だけではない。まゆりシナリオではまゆりが、紅莉栖シナリオでは紅莉栖が語り部となる。
岡部(プレーヤー)の知らないラボメン達の姿。まぁ魅力的だ。時間が先に進むことはないが、世界が厚くなる作品である。
システムは一切合財容赦のない読みゲー。シュタゲの特性となる「選択肢がない」も引き継いでいて、ゲーム性はほぼない。
選択肢の代わりに受信メールの返信(3パターンから選べる)にて分岐があるのがシュタゲだが、今作にはそれも多分ない。
メールシステム自体は残っているが、完全にお遊び、おまけであるようだ。ガン無視してもシナリオに影響はない。多分。
最初は岡部シナリオその1だけだが、それをクリアーすると新たに3つが追加され、それらを終えると今度は4つが出現する。
と言っても各シナリオがそれぞれ絡んでいるわけではなく、完全に独立している。プレー順序はテキトーで構わない。
最後は岡部その2が出現し、これを終えるとED……だが、ED後にクリア後要素として綯シナリオが出現。これが本当の最後。
プレーヤーはとにかく只管に文章を読んで聞いていけばいい。攻略要素、つまりゲーム性は皆無だが、今作の場合それでいい。
初代も比翼も、ゲーム性が酷薄なくせに半端にややこしいフラグ立てがあって、寧ろ作品の足を引っ張っていたからな。
読みゲーはゲーム性の不足が一大欠点だが、無理にそれを入れようとして不快になれば本末転倒だ。ま、難しいとこだね。
システムについて語ることは何もないんで、シナリオについて順繰りにやっていく。読みゲーの感想だものな。
各シナリオには、例えば岡部その1は「捜査線上のジキル」といったタイトルが付いているが、正直一つも覚えていない。
この手の名付けはシュタゲの特色として継承されているが、ファンは喜んでいるのだろか? 俺には分かり難いだけである。
なので身も蓋もないが、キャラ名で呼ぶことにする。すまんのう。おっちゃん、もう厨二のノリはちょっとキツぅてな……。
・岡部倫太郎編その1
最初にプレーすることになるシナリオ。そのためか軽いノリで始まる馬鹿シナリオ。……取り敢えず、途中までは。
最近、岡部はアルパカの着包みを纏った「アルパカマン」として秋葉原界隈のトラブルを解決する活動をしていた。
任務に失敗しても、岡部にはDメールと電話レンジで挽回が可能。無欠のヒーローとして、彼は満足していた。
アルパカマンの着包みを作ったのは、もちろんまゆり。彼女は今も、そしてこれからも岡部の「人質」であり続ける。
……はずだったのだが、中盤で岡部とプレーヤーは「現実」を突きつけられる。ここは初代で言うバッドED後の世界だった。
岡部はその現実を受け止めきれず、アルパカマンという存在にまゆりを託して逃げていたのだ。完全に精神病者状態。
……うーん。初代の続きどころか、初代の途中にあるバッドの流れの間に挟まれる物語。これ、今更読みたいか?
続きを描けないから、縦ではなく横に世界を広げる必要がある。それは分かるけど、そこを膨らませる? と疑問しかない。
アルパカマン活動なんて物理的に無理がある(着包みを常時持ってパトロール?)し、その辺の突っ込み所にも事欠かない。
初代で散々見せられたまゆりの悲劇をまた掘り起こして、一体何がしたいのか。ギャグ面も含めて笑えないシナリオだった。
あと、シド。このシリーズでずっと引っ掛かってる「コイツはギャグなの? 悪なの?」という混迷が、また深まっちまった。
コスい転売屋のバイトをした痛い奴と描写したと思ったら、人質にナイフを突きつけてテレビ沙汰に。全然笑えないよ。
元ネタは「ガイアが俺にもっと輝け~」であり、そういう意味では完全にギャグキャラだ。なのに作中、何度も変貌する。
製作者はプレーヤーにシドをどう見せたいのよ? そこは未だに全く分からん。故に俺はコイツ嫌いだ。もう出さんでくれ。
シナリオ中に「転売屋も悪とは言い切れない」て擁護を入れてたのは謎だったな。悪だよ。それは仲介屋とは全然違うよ。
世の中に需要があれば仲介だけど、転売屋は無理矢理流れに割り込む行為だろ。犯罪ではなくても悪事だよ。俺は断言する。
まゆりがいない現実を突きつけられた岡部は紅莉栖に叱咤され、「本当の世界線」に戻ることを決意する。
それが可能なのがこの作品だからな。プレーヤー視点ではもう既に解決済みだから微妙な空気だが、まぁ頑張ってくれい。
シュタゲシリーズはプレーすればするほど時間操作に拒否反応が出てくるところがある。何気に不思議な現象だと思う。
比類なき青狸に脳の隅々まで刻み込まれた「夢」をいい加減捨てろというメッセージなのだろうか。そうですよね。はぁ。
・橋田至編
岡部の右腕兼凄腕のハッカー・ダル、本名は橋田至。見た目はデブ(体格は良い?)で、言動や行動はオタクそのもの。
岡部はアイデア出しや行動力はあるものの、それを実現する能力にはハッキリ言って乏しい。そこを補うのがダルだ。
電話レンジという世紀の発明を成し遂げたのはダルと紅莉栖の力が9割である。岡部も中心に必要なのは間違いないが。
そんな凄まじい能力の割に作中での待遇が悪いと初代では感じていたが、比翼、そして今作でそこはかなり埋められている。
ダルには設定的に娘の存在が確定しており、つまり未来の妻がいる。初代では謎の存在だったが、比翼で明らかになった。
その未来の妻と、今作では第三者ではなく主人公としてやり取りが出来る。ダルとしてはこんな嬉しいことはないだろう。
シナリオはSERNの絡ませ方が強引であんまし良いとは思わなかったが、ここはダルが喜んでいればOKとすべきであろう。
妻を助ける際には娘に助けられもしたしね。羨ましいこった。人間は外見じゃない、中身という良い見本だ。……はぁ。
シナリオでは暗号の謎解きにかなり注力されていたが、結果としては「分かるか!」なもので、ガッカリした。
ゲーム的に解かせろとは言わんが、プレーヤーも一緒に考えて楽しめるようなものにしてほしかった。……望みすぎかね。
ダルというか、シュタゲは初代から「2ちゃん(作中では@ちゃん)語を多用する」作品であった。ダルはその代表だ。
これほど2ちゃん語を取り込んでるゲームは多分他にない。冷静に考えれば非常に痛いのだが、非常にリアルだとも思う。
……が。初代当時ならともかく、今作が発売された2013年では、2ちゃんは既に随分廃れていた。現在はもう見る影もない。
そんな中で多用される2ちゃん用語の数々は、正直微妙だった。個人的には懐かしくて悪くないが、それは違うよなぁ。
思えば今作の骨子でもある「厨二病」だって、時代と共に変遷するものだ。岡部のそれは、今だと古く感じるところがある。
この辺も読みゲーのしんどいとこだな。時代の空気を取り入れるのは悪いことではないが、諸刃の剣だよなぁ……。
・牧瀬紅莉栖編
シュタゲのヒロインと言えば~? 紅莉栖である。疑う余地は無い。ないったらない。まゆりも大切な存在だが、「人質」だ。
別にネタではなく、初代ではその解釈でいいと思うが……比翼での「ヒロイン度」だと、正直まゆりに完敗していた。
恋愛を主軸にした続編において、サブヒロインに内容で完敗。これは相当恥ずかしい話である。いや紅莉栖は何も悪くないが。
じゃあ3度目の正直、今作ではどうなのか!? ……うーむ。そもそも、こんな早い段階でシナリオが登場してる時点で……。
クリア状況に応じて段階的にシナリオが増えるんだから、真ヒロインならもっと後にしてほしかった。無論、二つ目もないし。
そんな紅莉栖編だが、状況としては初代の途中、岡部がまゆり地獄(悪い表現)で精神的に追い詰められていた頃が舞台だ。
この頃の岡部は完全に袋小路に行き詰っていたが、紅莉栖の叱責により気力を取り戻すという描写が初代にはあった。
その辺りの紅莉栖側の動きを大きく膨らませて描写している。……また今更過去を? それは言うな。仕方ないんだよ。
初代での紅莉栖は電話レンジを開発したものの、タイムリープを体験したのは岡部のみだった。……あと狂人少女もか。
それも岡部が孤独と苦悩を深めた理由だったのだが、今作において、実は紅莉栖もタイムリープをしていたことが判明する。
岡部の異常を察知した紅莉栖は、あの叱責の前、何とか彼を助けたいと裏で奔走していたのである。……無論、好きだから。
そう、今作において、つまり初代の範囲内で、紅莉栖は岡部が好きとハッキリ自覚し、独白しているのである。
あの段階でだとちょっと早い気もするが、まぁ細かいこたいい。恋する少女を応援しない理由はない。ヒロイン度も上がる。
そうして紅莉栖なりに色々動くわけだが、理屈に関してはまぁ正直どうでもいい。問題は人だ。紅莉栖の頼れる仲間だ。
一人ではどうにもならない事態に、紅莉栖は人を頼る。それはもちろん構わんのだが……最大の協力者が、父親なのである。
紅莉栖の父親、通称ドクター中鉢。……ユンゲラー方向で怒られないか心配になるな。当人は多分存在を知らんだろうけど。
初代で登場した、まぁ悪役だ。娘である紅莉栖が天才であることから嫉妬と憎しみを抱くようになり、一度は殺害までした。
紅莉栖自身はそんな父の心情を察しつつも仲直りを模索するが、頑固無能親父は聞く耳を持たず、父娘の溝は広がるばかり。
初代では終始そんな役柄で、好感の持てる要素はなかった。紅莉栖よ、もう父は忘れろ。君には岡部がいるさキラン。
……だったのに、今作では紅莉栖のお助けキャラとして大躍進。ひょんなとこから連絡が付くと、怒涛の有能ぶりを見せる。
天才・紅莉栖の話を電話・FAXだけで理解し、議論し、最後にベスト助言を与える。凄い。パパ大好き。紅莉栖もニッコリだ。
けど!!! プレーヤーにとっちゃ中鉢は悪役オブ悪役でしかない。肉親である紅莉栖に情が残っていても、俺は違う。
別に中鉢を殺せ、痛い目に遭わせろとは言わんが、こうまで強力な協力者(洒落)にすべきだったのか。非常に疑問である。
それに、だ。シュタゲの常として、タイムリープ後は全てが「無かったこと」になる。紅莉栖と中鉢の和解も、無論そうなる。
長年蟠りのあった父娘が、少しずつ議論を深め、やがて解決策を見出す。場面だけ見れば非常に感動的で、盛り上がる。
でも、ゲームを進めれば、全部泡へ。中鉢は当然紅莉栖を嫌うクソ父へ戻る。再度相談しても「は? 死ね」完だろう。
プレーヤーはそもそも中鉢との連携なんて望んでないし、その感動連携も霧散するんだから、2重にロクでもない話だ。
良いシナリオだったとはとても思えない。上手いことネタを捻り出したなとは感じたが、賞賛は出来ないなぁ……。
・阿万音鈴羽編
鈴羽は別の世界線にて、姿は同じだが性格が全然違う「鈴羽」が二人確認されている。その二人が、幽霊として本編に参加。
……無茶苦茶だが、深く考えてはいけない。鈴羽以外には姿も見えず声も聞こえないが、物理的接触は可能という。無茶苦茶。
まぁいい。本編通り、鈴羽は過去に飛ばねばならないが、タイムマシンが故障。それを幽霊二人と一緒に修理することになる。
鈴羽はラボメンではあるが、別世界の人間だ。結局岡部らと同じ時間では生きられない。残酷だがそれで正しいのだろう。
その意味では重く悲しいシナリオだが、その分、描かれる思い出作りはかなり良い。今作で一番のシナリオだったかもしれん。
父・ダルとのやり取りや紅莉栖との和解は、ファンとして見応えがあった。特に紅莉栖とは、本来喧嘩する理由ないもんな。
紅莉栖がSERNに協力したのは、何としてもまゆりを救いたいからだった。鈴羽はそれに気付き、全てに納得したのだった。
そんな描写を挟みつつ、幽霊ズやラボメンと協力してタイムマシンを直し、一応事態は収束に向かっていくのだった。
……が、天王寺との会話にて、彼の恩人が「橋田鈴」であり、既に故人であることを知る。言うまでもなく、鈴羽本人だ。
それは確定した未来。過去に戻った鈴羽が、そのまま時間を経て岡部達と再会することは出来ない。決まっているのだ。
過去に行くことには納得していたが、そうすればいつか岡部達とまた会えると思っていた。しかしそれは叶わない願いだった。
これが今生の別れとなる。父親であるダルとも。後ろ髪を引かれる鈴羽。……キツい描写だ。だが運命扉の選択である。
意を決して過去へのボタンを押した鈴羽のその後は分からない。メイド鈴羽の「理想の日常」が少し描かれ、物語は終わる。
報われたと言っていいんかな。当人は納得してるんだし。人は生まれた環境なりの人生を歩むしか無いのだ。多分。
・天王寺裕吾編
天王寺裕吾が本名だが、専ら「ミスターブラウン」「ブラウン管工房の店主」と呼ばれる、未来ガジェット研究所の家主。
初代ではサブキャラながら岡部らとの絡みは多く、なんか妙だと思っていたが、中盤になんと敵の中ボスであることが判明。
極悪組織SERN日本支部の戦闘部隊の指揮官だった。……なんじゃそりゃあ! 知るか。こっちが訊きたいわ畜生。
シュタゲはもちろんフィクションの物語だが、時間移動面に関しては「フィクションなりのリアリティ」があると思う。
しかしSERN関係になると、途端に無茶苦茶、そんなんあり得ねーよ馬鹿と言いたくなることばかりだ。俺の感覚だが。
日本支部があるのはいいとして、銃器ゴロゴロの武装集団て。漫画の読みすぎも大概にせぇよ。納得なんか出来るかよ。
要するに岡部の見ていた天王寺は全て擬態だったわけだが、発覚しても驚きではなく呆れが零れるばかりであった。はぁ。
そんな天王寺が、今回初めて自身の視点で語るシナリオを与えられた。となれば、期待するのは「舞台裏」である。
SERNの幹部として普段どんな暗躍をしていたのか。萌郁へのメールはどんな顔して打っているのか。なんであんな早いのか。
それらが語られれば、本編の出鱈目さにも多少は納得がいくかもしれない。プレーヤーとしても興味のあるところだし。
……てわけで期待して始めてみたのだが、木っ端微塵に裏切られました。完全ギャグシナリオ。逃げやがった。
そもそも無茶な設定だから、裏をキッチリ描くのは非常に大変。今更ンなことやってられっか、と。ギャグで茶を濁せ、と。
盛大に呆れ返っちまったよ。元々の設定が何も考えられていないことの証明にもなった。テキトーな世界である。
ちなみに岡部編1では「転売屋の元締め」という裏の顔も出来たが、それとの絡みも皆無。ただのブラウン管好き親父。
こんなんじゃ天王寺編なんて入れる必要ないだろ。入れたことで寧ろ不満が募っちまった。緻密さがない。はぁ。
シナリオは、「娘の綯を溺愛している」という設定を加速させたもの。まぁそれ自体は本編とも矛盾ないからええんやけど。
でも綯は小5(多分)て設定なのに、扱いが子供過ぎないかと思った。その歳でもまだぬいぐるみ部屋に大喜びするか?
改装工事に1年かかってもラボメンが誰も抜けてないのもな。その間どこで活動してたんよ? その描写が全く無い。
まぁギャグシナリオだからその辺はいいのかもしれんが……1年経っても全員服装が同じなのは言うまでもない。はぁ。
Dメールを使って何度かビルを建て直すが、どれも綯を満足させることはなかった。一体何が足りないのか?
答えは、既にこの場にいない鈴羽だったのだが、その記憶自体が皆から消えているので、誰もそれを指摘できない。
岡部を除いては。その岡部は天王寺に「時が埋める」というアドバイスをし、天王寺もそれに従う。
最後は12年後、23歳に成長した綯は、今も天王寺と住み、あのビルでとある女の子を可愛がっていた。「鈴ちゃん」を。
……これは鈴羽編でのメイド鈴羽の世界線、「理想の未来」なのかな。だとしたら、ええ話やな。そう思っておこう。
・フェイリス編
メイド喫茶で働くちょっと電波気味な美少女! ……というのは擬態で、実は秋葉原を牛耳る名家の令嬢。
10年前に父親を亡くしてからは、執事の力を借りながら、子供ながら地主として大人達と渡り合う日々が続いていた。
その上でオタク活動も行い、自分が経営するメイド喫茶のウェイトレスまでやってるんだから、ハッキリ言って凄すぎだ。
紅莉栖やダルとは違った方向で化け物なキャラである。……俺は申し訳ないが、声が苦手なので好きじゃない。すまぬ。
シナリオでは、そんなフェイリスの大人達への疑念と戦い、及び同世代キャラとの心休まるやり取りが描かれる。
ある日、秋葉原で奇妙な都市伝説が広まっていることを知ったフェイリスはコスプレしてその調査に乗り出すことにする。
……導入の時点で「都市伝説つっても明らかに無理矢理作ってるだろ」と言うしかないが、誰もそんな突っ込みはしない。
んでその調査をコスプレで行う? 真面目にやれよ。……ごめん野暮で。でもフェイリスは一応真面目なんじゃ……?
それにこのネット時代、噂なんて即座に検証されるって。「作った」んだったら尚更バレないわけがないって。……はぁ。
その噂調査には、SERNとの関連を疑った鈴羽も参加し、二人はコスプレコンビとして数日活動することになる。
その間に親睦を暖めまくる二人。……今作では、岡部以外のラボメンが仲を深める描写が目立つな。とてもいい。
シュタゲは別にハレイムものじゃない(俺はそうあってほしいが)から、岡部が中心であっても全てではない。
岡部視点でラボメン同士の触れ合いは描き難いからな。多少無理があるとして、この点は今作のいい部分だった。
シナリオは終盤、ガチでちょっとヤバいネタを引いてしまい、鈴羽が地下の崩落に巻き込まれ、取り残されてしまう。
瓦礫の隙間が狭いから、助けに行くには体の小さい人間……フェイリスしかいない! ということで、フェイリス頑張る。
その際に「嫌な大人達」の代表格である天王寺ともちょっとだけ心が通じ合ったりして、まぁ悪くない感じだった。
一方で銃弾をこっそり処分する天王寺はやっぱ食えない大人だった。フェイリスがあいつと渡り合うのはまだ無理だな。
ラストは鈴羽が過去に旅立ち、悲しい別れがあるが、直後に母親が帰国する。「長年臥せっていた友人を連れて」。
そう、それは過去に戻った鈴羽だった。このシナリオは正史ではないようだ。が、これでいい。二人は再会を喜び、了。
シュタゲのifは「違う世界線での事実」と捉えるべきだろう。これもどっかで起こったHappy Endなんだよ。
・漆原るか編
女装男子。2009年当時なら笑いを交えて語れるキャラだが、今じゃもう許されないだろう。こえー時代だよな、本当に。
「どう見ても女に見える男」が本来のるかだが、今作では正真正銘の女。つまり初代であった別世界線、バッド世界だ。
そのため(それだけが理由じゃないが)まゆりが死ぬこととなり、岡部が果てしない試行錯誤地獄に陥るのは周知の通り。
本編のるかルートではこのまま二人は苦しみを共有し、結ばれ、やがて二人の子が生まれる一枚絵で終わりとなった。
今作でも序盤は同じ流れになる。まゆりを犠牲に女の身となった「罪」を岡部と共に受け入れ、行きていく決心をする。
しかし「一つだけやり残したことがある」として、まゆりの願いであったコスプレしてのコミマ参加を決行することに。
それには当然、タイムリープをする必要がある。岡部はるかの願いを聞き入れ、るかはタイムリープで数日前に飛ぶ……。
これも初代の中身を膨らませるシナリオだった。例によって仕方ない。シュタゲで扱えるネタは限られているのだ。
るかは予定通りタイムリープを行い、コミマに参加する。ちなみにその際、タイムリープのキツさが強く表現されている。
これを数え切れないほど繰り返した岡部は化け物か、と。そらぁな。やっぱ禁忌の技術だわな。怖いもんだ。
るかがコミマに参加しまゆりは非常に喜んでくれたが、もちろん運命は変えられず、そのまま死ぬ。またこの現実が始まる。
それを受け入れたるかと岡部は、苦しみながらもその後寄り添って……となったら初代バッドEDだ。それじゃダメなんだ。
るかは結局、Dメールを母親に送り、男に戻る決断をする。まゆりの想いを犠牲にしちゃいけないんだと。……うーん。
確かにそれが「正しい」ことなんだろうが……エゴを出して岡部と生きる初代バッドEDの方が俺は好きだのう。
Dメール送りは成功し、場面は初代の真ED直前、入院中の岡部を見舞うシーンに飛ぶ。「正しい世界線」に戻れたわけだ。
もちろんるかも男に戻っている。見た目は女性なのも変わらない。……それでええんか。今後もそれで生きていくんか。
ギャグ設定である「男の娘」を真面目に描かれると、受け手としてはしんどい。るかに関しては毎回そう思う。
なーんかなぁ。まぁ今回は当人が納得してるからいいとしよう。頑張って生きてくれとしか。生きるって大変だからな……。
・椎名まゆり編
岡部の幼馴染であり、厨二病のきっかけとなった人物。ラボメンの肝で、非常に重要な存在。そして言うまでもなく、女。
岡部が男でまゆりが女である以上、ラブコメが発生するのか或いはしないのかは大きな関心事であり、問題となる。
比翼ではバリバリにヒロインをやっていたが、本編の空気ではやっぱ紅莉栖に軍配が上がると思う。
だが岡部に対し全く恋愛感情がないというのも不自然だ。つっても濃い三角関係やらせるのも何か違う。ああもう、難しい!
恋愛特化の比翼では話は簡単だったが、今作では一人称を与えられたまゆりがどう描かれるのか。読むしかない。
設定としてはやはりバッド世界線で、まゆりは最近よく見る夢という形で現実に違和感を抱く。岡部の態度や言動にも。
どうやらまゆりの死は回避したものの、代わりに紅莉栖が消えてしまう世界である模様。これも初代の途中であったな。
まゆり自身は違和感はあってもそんな現実には当然気付かないが、意を決して紅莉栖を捕まえ、じっくり話し込むことに。
まずまゆりが岡部を好きと告白し、逆に紅莉栖は岡部に告白されたことを語る。そしてそのまま、まゆりは事実を求める。
紅莉栖も意外というかキッパリと事実を教えてくれた。どうやってもまゆりが死ぬ世界線と、それを回避する方法のことを。
そのためにはDメールでの改変を一つ一つなくしていく必要がある。そして最後のひと押しとして、紅莉栖の死が必要になる。
まゆりと紅莉栖の二者択一。初代で岡部はここで死ぬほど苦悩した結果、遂に「正解」に辿り着くのだが……ここでは違う。
遂に自分の現実を知ってしまったまゆり。お姫様は戦場に立った。なら戦うしかない。最強の敵である。現実と。
結果として、まゆりは自分が岡部の「人質」となるきっかけをDメールにより改変することで、望みを叶える。
しかしそれはつまり岡部との関係もなくなるということで、ラボとは無関係の女子高生生活を送る自分になっていた。
……一方、岡部は自身の能力により、全てを記憶していた上でまゆりを探していた。これはこれで大変だっただろうなぁ。
まゆりは岡部を救いたかったはずだが、抜けられない死の運命よりマシとしても、精神的苦悩は上積みで残してたよ。
この点、スッキリしない結末だった。最後に二人は再会。まゆりにとっては「知らない人」だが、不思議パワーで解決。
もちろん正史とは違う世界線だが、この後はラボメンが集まったりするんかね。純粋に二人仲良くだけでいいかもしれない。
そう、正史じゃないんだからな。もう電話レンジで消えることもない世界だ。こんな世界線もあっていい。……分からんが。
・桐生萌郁編
美人だが非常に無口、けどメール魔で電子では饒舌、打つのも異常に速い。ととにかく変な人。名前に反して萌えにくい。
実は裏の顔があり、SERN天王寺の部下だった。場合によっては銃器も扱う本物の実行部隊である。無茶な設定やのう。
天王寺編ではそういった裏の顔はガン無視されていたが、萌郁編では逆にその裏の顔と表の顔の間で葛藤することになる。
萌郁は天王寺(正体は隠してFBと名乗っている)からのメール指示で岡部ラボに潜入し、様々な工作を企んでいた。
それ自体は上手くいっていたのだが、気の良いラボメン達とのやり取りが非常に楽しく、やがて萌郁は葛藤し始める。
自分を孤独から救ってくれたFBの指示は絶対。けどこんな良い人達を騙すばかりか殺すなんて。そんなこととても……。
表裏の自分で板挟みになった萌郁は、どんな選択を取るのか? プレーヤーとしてはなかなか重いシナリオである。
そしてそんな萌郁の心情を百も承知で冷酷な指示をだす天王寺の悪魔っぷりよ。あいつ全然笑えん。ブラウン管嫌いになる。
このシナリオもまた初代の一部の膨らませであり、かつ別ルートだ。正史じゃないが、シュタゲはやっぱこれしかないかな。
初代での萌郁は、ラボメンではあったがその性格ままにあまり輪に溶け込んでおらず、その辺はリアルだったと思う。
それが今作では紅莉栖及びまゆりと非常に仲良くなり、正直面食らった。萌郁さておき、2人がとても同一人物とは思えん。
今作ではとにかく「岡部以外のラボメン達の絡み」に力が入れられている。それ自体はいいことだし、見られて嬉しく思う。
しかし、これ以外でも多少無理を感じたが、萌郁シナリオでのそれは少々強引が過ぎる気がした。「こうはならんだろ」と。
萌郁自身は無口で超受身(大門ではない)なままなのに、紅莉栖もまゆりも満面の笑顔と善意でガンガン攻めてきてくれる。
まゆりはともかく、紅莉栖があんなことせんだろ。ラボ会議中にメールで会話とか、別世界線かと思った。いやそうなんだが。
比翼ではシナリオ毎に各キャラの岡部への好意が激変していたが、本編にも食い込んでるシナリオでこうもやられると……。
その違和感が強く、萌郁の悲しい板挟みにもイマイチ浸れなかった。「作られた悲劇」に見えるのよね。うーん。
更に言えば、俺は「お前(萌郁)が悪い」としか思えんし。自我を捨て、FBに全てを委ねた結果がこれだよ。甘えんな糞が。
考えることを放棄した人間には、もう思い悩む資格もない。このキャラは悲しいロボットとして死んで行くべきではないか。
少なくとも本編ではそうあるべきだと思う。そこから別ルートを描くなら、救いのある終わり方にすればよかったのに。
最後も無理矢理な感じで悲劇に終わった。……まぁ、最後に「主人公」になれたことが、少しは慰めになるといいな。はぁ。
・岡部倫太郎編その2
全キャラのシナリオを終えると、最終章として岡部編その2が登場。やっぱ本当の主人公、特別扱いされている。
……が、別にその1の続きではない。それどころか……締めにしては何とも変則的で、こちらをその1にすべきと思った。
要するにミステリをやりたかったようだ。謎が謎を呼び、最後になって全てが明かされる。で、当然ハッピーに終わる。
……けどなぁ。例によって突っ込みどころが多すぎて、そもそも謎に浸れない。「はぁ?」ばかりが重なっちまう。はぁ。
怪しい連中つっても、マントに仮面て時点で「危険」ではないだろう。つーか明らかにコスプレやろが。恐れんなや。
19の学生に300万貸してくれる街金? 惚れた女相手だから300万貸してやる下っ端? 発明大会の賞金が300万円!?
理屈にばかり拘ってリアリティを犠牲にし、没入感が大いに削がれた。……創作物ではよくあること、なのだろう。
最後が一番「シュタゲで新シナリオを作る難しさ」が感じられたな。無理だよ! と製作者が匙を投げてる感じさえする。
どうしても時間移動要素を入れなきゃならんことは、便利な反面、物語を複雑にするからな。良いことばかりじゃない。
時間移動は、禁断の技術である。シュタゲ内でも度々言われてることだが、現実でも創作でもほんまそうである。
それでも人は時間移動を求め続けるんだけどな。その「業」を表現したシナリオってことか。考えすぎ。難しいのう。
・天王寺綯編
岡部編2を終えたらスタッフロールが流れるが、再度始めると隠しシナリオ登場。なんとあのサイコ少女編だった。
隠しシナリオ自体は予想出来ていたが、まさかこのキャラとはね。まぁ他に空いてる人いないから仕方ないか。
本編でのこの子はサブキャラから超絶キチに変貌したので、萌えとかそんなん欠片もない。正直平常時でも目が怖い。
大体お前の親父が悪いんだから、岡部を恨むのは筋違いだろうが。……なんて理屈をキチが聞くわけないか。はぁ。
と言ってもそれはあくまで本編での「可能性」であり、そこを通らねば少女は普通の少女のまま。時間移動万歳だ。
で、このシナリオ、「まゆり死亡のバッドエンドから2年後」が舞台となる。岡部、ダル、紅莉栖はSERNに堕ちた。
そして天王寺も死んでしまったが、中学1年となった綯は裏の事情を一切知らないまま、それなりに平穏に暮らしていた。
そんなある日、綯は見知った巨体を見かける。ダルだ。ずっと引っ掛かっている「2年前の真相」を知るチャンスだ。
綯はダルに接触する。ダルは驚くが、自らの目的には協力者が必要と判断したのか、綯と行動を共にすることになる。
ここに奇妙な協力関係が誕生し、「かつてラボだったあの部屋」での活動が再開される。果たして、その先には……?
このシナリオが、今作で、いや比翼も含めて唯一の「本編のその後」ではなかろうか。いやバッド後だから違うんだけど。
それでも他シナリオのようなまやかしのその後ではなく、キッチリ2年後として扱っていた。ごめん上手いこと言えん。
故に、面白かった。バッド後だから、本編とはある意味関係ない。消えてなくなる世界線だ。本質はそこらのifと同じだ。
だが綯とダルという新鮮な組み合わせがまゆり死亡というシュタゲの一大事件に取り組んでいたから、没入感が違った。
つってもシリアス一辺倒ではなく、ダルは当然ながら「JCにお世話されるとか死んでもいいでしょJK」と状況に大喜び。
綯も綯で、何故かゲーセンで格ゲーやるJCだったりダルのお使いでエロ同人買いに行かされたり、見どこが多かった。
もちろんサイコ化することもない。この綯なら、真相を知ったとしても暴走することは多分ない。普通に良い子だった。
急造コンビだが他シナリオの女性キャラ友情のような無理矢理さはなく、自然な信頼、そして警戒も感じられた。
まゆりは当然として岡部も紅莉栖も出てこないが、十分面白かったしシュタゲだった。……いいことなのか? 多分。
ダルは綯の協力を得てラボで作業をするが、目的が何なのかは不明。無論時間移動関係、SERNと戦うためなのことだろう。
綯は協力の代わりに2年前の真相をダルから教えてもらうとするが、結局それは叶わなかった。でもその方がいいさ。
ダルは見た目も中身も変わってないようで、綯を巻き込みつつ一線は越えさせないという、大人の役割を見事に演じていた。
そらSERNに拉致され、何かしらやらされてたんだもんなぁ。オタ気質や口調は変わってないが、大きな成長が見られた。
……つっても、SERNで何をしていたのか、どうやって逃げてきたのか、その辺は一切不明。追手の描写はあるけど、謎。
そもそも本当に逃げてきたなら、逃げ切れるわけがない。ラボなんていの一番に警戒される場所に籠もって作業て。無理。
その意味ではこのシナリオも出鱈目だが、不思議とあまり気にならなかった。メイン二人の描き方が上手かったのだろう。
シュタゲはSERNが出張ると途端に無茶苦茶になっちまう。現代劇で3人も拉致って。そんな簡単な話ちゃうぞ。知らんが。
まぁしゃーない。ダルは目的を達したようだが、黙って消えた。綯は父に本当の別れを告げられたことで、一応納得。
再び日常に戻っていった。もう今後は普通の少女として生きていくことだろう。……SERNのディストピア、実現しないよね?
「本当の」世界線ではないが、これはこれで続いていってほしいもんである。分からんけどな。まぁ頑張ってください……。
ふーー。綯編を終えれば本当に終わり。で、トロフィーだ。つっても今作は他ゲーに怒られるレベルで簡単。読みゲー万歳。
本編を全部終えるだけで9割は取れるし、残りはメール分岐を埋めるだけ。メッセージスキップから作業をすればすぐ終わる。
これで輝くプラチナトロフィーを取れるんだから、ちょっと申し訳なくなる。いや何も悪くないが。ジャンル的に仕方ないし。
下手に分岐を複雑にされても、面倒なだけで面白みなど全く無いからな。それでも、この楽ちんさはちょっと後ろめたい。
まいいか。ちなみにVITA版もあるけど、別トロフィーらしい。そっちもフリプで同時入手してるから、トロ稼ぎもいいかも。
もちろん全スキップでな。もうキッチリやったからいいだろ? ……そらいいけど、それでええんかお前は。うるさい。
トロフィーに変な拘りを持つのは、あんましよろしくない。そう思うようになってきたが、まだちょっと修正は無理そうだ。
グラフィックは……ガッカリ。3作目だが、相変わらず流用しまくりで、金も労力も全然感じられない。これじゃダメだろ。
作風から必然的に岡部の立ち絵が多く必要になり、そこはさすがに描き下ろしていたが、それだけ。他は昔見たのばっかし。
ダルなんて2年後の姿まで流用だからな。Tシャツの色が違うだけ。どこまで手ぇ抜きたいんだと。真面目に働けよほんま。
一枚絵はさすがに描き下ろしてあるけど、それは当たり前だし、数や質が飛び抜けてるとも思わんしな。ごく普通。
「読みゲーは読みゲーだなぁ」と呆れと諦めの溜息が出た。売る努力をしなきゃ、ジャンル衰退を嘆く資格も無いよ。多分。
音楽も前2作の流用が多く、こちらはシュタゲ感があるので悪くはないかもしれんが、やっぱ手抜きと言えば手抜きである。
もういいや。多分絵や音を頑張ると、コストが10億くらい上がるんだよ。素人には分からん制作上の事情があるんだよ。
でもこれでフルプライス払わせるのはなぁ。シナリオ全振りとしても、そこまでも価値は感じられんかったし。
フリプ入手でよかった、てな。こうして金が回らなくなり、ますます先細る、か。確定された世界線だった。終わり。
ふー。不満はあったが、のんびりプレーできる読みゲーとしては楽しめたのでそんなに文句はない(だったら何故書く!?)。
新年一発目のゲームとしては上々だった。……そう、実はこれ、正月休みにプレーしたんですよ。なんつーか、ごめんなさい。
さて、初代、比翼、線形とプレーした。残るシュタゲは……そう、「シュタインズ・ゲート ゼロ」である。
実は俺、最初にゼロを購入したのだ。初代がオマケとして付いてくると聞いて、それを含めて発売日に買った。偉いぞ俺。
……のだが良くも悪くも大ボリュームな初代をプレーするだけでその時は気力と時間が尽き、すぐには開封出来なかった。
更に「やっぱ比翼と線形を先にやらなきゃ」と思うとますますプレーが遠のき、その間にフリプ化して嘆いたり、色々あった。
だが今度こそ、準備は整った。4年越しにゼロを開封しプレーする時が来たのだ! ……いや、開封は止めておこうかな?
だって今はフリプのDL版でもやれるんだし。悪戯に新品未開封を崩すこたないでしょ。まぁそれはどうでもいいか。
ゼロこそは「続編」として作られているはず。パッケ絵からすると、主役はバッドルートの岡部か? 過去改変に動くのか?
立ち絵や曲も今度はガラッと変わってるはず。何年もかけて作られた、非常に作るのが難しかった、待望の真・続編だ。
比翼と今作にあった停滞感とモヤモヤを吹き飛ばす内容であることを期待しておく。……あんま過剰に望むな。そうだね。
そして世界設定に関係があるらしい「ロボティクス・ノーツ」もPS3版は持っている。これもやらんと。そんなんばっか。
それを言うなら科学アドベンチャーシリーズは他にもあるしな。やるこた幾らでもある。多分どれも緩く繋がってるだろうし。
シュタゲを軸に、広げていこう。比類なき時間移動読みゲー・シュタインズゲートのファンでいることを再認識して終わり。
俺達は戻れない。確定した過去を背負って今を生きて未来へ向かうしかない。そんな俺らの夢を背負って、頑張れシュタゲ。
……ま、もう時間移動への憧れも大分薄れたけどな。そんなことする気力もない。変えたって別の形の今が始まるだけ。
寧ろこれ以上余計なことしないでくれ、まである。なーんかなー。「過去を変える」ことも、結局前向きな行為だよな。
岡部らは気力に溢れた若者たちなのであった。俺はこの変わらぬ世界で、彼らを覗き見しつつ決まった未来を生きるだけ。
それがシュタインズゲートの選択だから仕方ない。……ってシュタゲのせいにすんな、お前の選択だ、お前の。はい。
はー。
拍手を送る
このシリーズは1作目しかプレイしていないのですが
興味湧きました。
そう言えばこれは私やってなかったです。なんかあまりにも普通の番外編って感じがしたから、だったかな……まあその通りだったようですが。
ロボノはもうちょっとミニゲーム真面目に作って欲しかったですね。オカルティックナインはもう全般的に真面目に作って欲しかったですね。
どんどん遅筆になってる気がするので千代丸が心配です。
ありがとうございます。
今作と比翼は、続編じゃなくファンディスクと捉えれば楽しめると思います。
ぬ、ゼロがアレですか。まぁとにかくやってみます。そのうち……。
>どんどん遅筆になってる気がするので千代丸が心配です。
ハードの進化にもネットにも頼れず、全部自力で生み出す必要がある読みゲーはほんま大変でしょうな。
このジャンルの火を絶やさぬよう頑張ってる姿は非常にカッコいいと思うんですけど、実が付いてこないとね……。
今年もよろしくお願いいたします!(2020年初挨拶のため)
読みゲーに特にその傾向が特にあるなーと思うんですが
一度完成されたゲームの続編、後日談ゲームって
蛇足なことが多いし、そこまでいかなくても本編のクオリティには至らないケースがほとんどな気がします。
シュタゲは近年の読みゲーではかなり上位ですが
関連商品は…どれもいまいちだったような…。
線形拘束のフェノグラムもプレイしましたが、おまけの域を出なかったなぁと感じます。
同じように感じたのだと、有名どこだとFF10-2ですかね。
あと、ダンロンの絶対絶望少女とか。
マイナーですが、メモオフそれからageinとか。
(声優さんがやらかした縁と、otaさんが確かあまり好きでない葉夜が自分の1、2位なので、その二人が出なかったのも多少あるけど…)
なんというか、例えば料理する時って
それに必要な材料を揃えるように買ってきますが、
余った材料で同クオリティのものを作るのは難しいんですよね。
どうしても「余り物で作ったにしてはよくできた」を超えないので。
線形拘束のフェノグラムも同じように思いましたけど
余った材料が良質で、調理も良かったのか
本編との落差は他に比べてマシに感じました。
ただ…舞台設定がそのままでのシュタゲはもういいかなって思いました。
難しいですけど、キャラや舞台を一新して新しいシュタゲをやってみたいなって、プレイ後に思いました。
もう今年も3ヶ月が終わろうってんですね……嗚呼。
>一度完成されたゲームの続編、後日談ゲームって
>蛇足なことが多いし、そこまでいかなくても本編のクオリティには至らないケースがほとんどな気がします。
本や映像作品なら、未完で終わらせて続編展開させるのが簡単というか寧ろそれが普通ですが、ゲームは違います。
基本的にその一本で完結させて当たり前。そこをある意味無理矢理広げようとするんですから、そら難しいですよね。
>同じように感じたのだと、有名どこだとFF10-2ですかね。あと、ダンロンの絶対絶望少女とか。
>マイナーですが、メモオフそれからageinとか。
(声優さんがやらかした縁と、otaさんが確かあまり好きでない葉夜が自分の1、2位なので、その二人が出なかったのも多少あるけど…)
FF10-2、俺はゲーム性の面で気に入ってます。世間的には相当不評だったようですが、そこまで言わんでもと思ってます。
メモオフそれagaとは懐かしいw メモオフは(是非・成否は別として)多分本編製作時から続編を想定していたでしょうね。
>余った材料で同クオリティのものを作るのは難しいんですよね。
>どうしても「余り物で作ったにしてはよくできた」を超えないので。
実際絵や音は流用しまくってますしねw そのことも結構印象に影響してるのかもしれません。
>難しいですけど、キャラや舞台を一新して新しいシュタゲをやってみたいなって、プレイ後に思いました。
「それがシュタゲになるのか」というのがね……中年の岡部が新世代を見守るような? うーん。
考えれば考えるほど、読みゲーの続編製作の難しさと、他ジャンルの易さ(敢えて言います)が際立ちますね。
ハゲが実は転売ヤーで、しくじると組織に暗殺されるという展開が面白すぎて笑い転げてた記憶が蘇りました。
>初代も比翼も、ゲーム性が酷薄なくせに半端にややこしいフラグ立てがあって、寧ろ作品の足を引っ張っていた
これも懐かしい。
ゲームじゃなくて、音とグラフィックのあるノベルだという事を割り切って欲しいですね。
これが当時7000円で売っていた事を改めて考えるとアコギじゃねえかと思いましたが、
プレイ時間で割るとそうでも無いんですかね。
otaさんのノベルゲームのレビューは、批判的な読み方が面白いと思ったので良かったらまた何かで書いて欲しいです。
ひでぇw このキャラは裏の顔と娘の溺愛が噛み合ってませんよね。自分の身に何かあったら娘はどうなるか考えろ、と。
本文にも書きましたが、シュタゲは新作を作ろうにもネタがない。ブラウンの裏の顔は数少ない使えるネタだと思うんですが。
まぁ彼の実態を書いてファンが喜ぶのかどうかは分かりませんがw
>ゲームじゃなくて、音とグラフィックのあるノベルだという事を割り切って欲しいですね。
選択肢を無くす決断までしたのに、半端に「ゲーム」への未練を残したような作りは好きになれませんでしたね。
完全一本道でマジでマウスを押すだけだった「ひぐらし」の潔さが思い出されます。まぁ、面白ければ何でも可ですな。