岸壁の高さがおよそ300メートルの大丹倉(おおにぐら)の頂上を目指して,赤倉線終点から林道を歩いていくと,上りの階段が現われた.この先に大丹倉の頂上が広がっているのかもしれない.
階段を上った先はまだ頂上ではなくて,少し開けた広場となっていた.広場には,苔むした自然石が御神体の髙倉剣大明神が祀られている.ご神体の下には,修験道の行者が納めていった剣があるという.そして,納屋の後ろにある岩場が,大丹倉頂上への入り口のようだ.
岩場を這うようにして、両手を駆使しながら登っていかなければならない.こんな岸壁にも植物たちが根をはって,青葉を風に揺らしていた.そして,この岩場の先に見えるのは,青空だけだ.どんな景色が待っているのか,焦る気持ちを抑えながら慎重に進んで行く.
岸壁を登り切ると,数メートル先が大丹倉の頂となっていた.頂上なので,当然だが視界を遮るものは何もない.この岩場の下は,絶壁となっており,周囲の山との間には,大きな空間が広がっている.絶壁の下の方を覗きこもうとしても,あまりの高さに腰が引けてしまうのだった.
この時は15時を過ぎた頃であり,西日がとても眩しかった.西日を浴びながら,目の前に広がる紀伊山地の絶景を味わうことができた.それにしてもあまりの高さに終始,手に汗が滲んでいたようだ.この記事を書いている今も,あの高さがフラッシュバックしてきて,手汗が出てきてしまうのだった.
頂上での景色を十分に堪能した後は,来た道を戻り,大丹倉を見上げられるスポットまで引き返してきた.大丹倉はちょうど夕日に照らされて,その名前通り丹色を放っていた.そして,丹色の大丹倉には,大きな熱がこもっているように見えた.周囲にある雲が,まるで大丹倉の熱によって蒸気となり,立ち上っているようだった.
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