日暮れ前にやってきたのは,京都の宇治田原町の茶畑,そして集落を越えた先にある山奥へと通ずる人気のない名もない道だ.ここはちょうど,鷲峰山(じゅうぶさん)の北側に当たる山の麓である.
この道は大変な狭路で,路面上には杉や檜の枝葉が散乱していた.潔くオートバイから降りて,この道の先にある宇治田原の大滝を目指して,歩いて行くことにした.
緩やかな傾斜の道で,山を登っていくことになるのだが,道のすぐ脇には渓流が流れている.物音ひとつしない静かな山中だった.
道路から渓流の方へと簡単に下りて行くことができるようになっていて,その清らかな流れに手を差し入れてみたりした.水は透き通っており,とても冷たかった.
この自然豊かな道を歩いて暫くすると,苔むした景色と共に石垣の上に立つ古めかしい建物が見えてきた.その前には看板のようなものと簡易トイレがあった.辺りは暗くて,なんとなく心霊スポットのような雰囲気が漂っていた.
どうやら,ここが宇治田原の大滝であるらしい.看板によると,滝の上に不動明王像が祀られており,雨乞いの不動尊として信仰されているそうだ.
宇治田原の大滝は,落差数十メートルの小さなものだが,その前には立派な鳥居が立っていた.鳥居の先には階段が続いており,滝の上まで登れるようになっている.
石垣の上に立っている建物は,社務所であるようだ.社務所の前は,緑の美しい苔で覆われていた.この神聖な神社を訪れるのは,地元の有志の方だけなのかもしれない.静寂と共にあたりの空気は,ピンと張り詰めていた.
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