時間が近づいたので、会場のウォッチングセンターへ向かいました。
「オランウータン舎」は、多摩動物園のてっぺんにあるので
入り口そばにあるセンターにもどるのには、約10分はかかります。
今回のシンポジウムのタイトルは
『森の人に魅せられて』ですからね。
会場は、魅せられた人たちでいっぱいでしたよ。
隣に座っていたご夫婦は、
今後「エコツアー」に参加する予定があるとのことでした。
最初は、「オランウータンを森に帰すためのさまざまな取り組み」について
セピロク・オランウータンリハビリテーションセンターの
シルビア・アルシストさんの講演でした。
リハビリテーションセンターは、孤児のオランウータンの本能を呼び起こして
森に帰すための施設です。
リハビリは、卒業という意味で使っているそうです。
何才でセンターに来たか、母親に育てられた期間はどのくらいかで
卒業までの期間が違ってくるそうです。
二番目は、現地で研究を続けている久世濃子さんの
「マレーシアにおける野生オランウータンの調査・研究について」でした。
現在、オランウータンは、ボルネオ島とスマトラ島にしか住んでいません。
ボルネオオランウータンとスマトラオランウータンは、同じ種類だと思われてきましたが
別の種であることがわかったそうです。
久世さんが調査している周辺には、29の個体がいるそうです。
が、個体と個体の関係性は、なかなかつかみにくいとのことでした。
「王子動物園におけるオランウータンの飼育と人工授精」について
神戸市王子動物園の獣医師の浜夏樹さんの話がありました。
王子動物園では、うまく繁殖できていないとのことです。
現在は、メスのバレンタインちゃんだけなので
ズーラシアにいるロビンくんとジュリーくんとの人工授精を試みているそうです。
多摩動物園の黒鳥英俊さんからは
「多摩動物園におけるオランウータンの繁殖計画」の話がありました。
多摩動物園には、2006年12月10日に生まれたミンピーちゃんと
2007年6月11日に来園したキキちゃんも加わって
現在オス3人、メス6人のオランウータンがいます。
昔は、ボルネオオランウータンとスマトラオランウータンが
別種だとわからなかったので、繁殖を試みていたのだそうです。
それで、子どもが生まれなかったり、短命だったりすることが
続いたそうです。
多摩のジプシーさんは、たくさんの子どもたちを生んでいますが
選ばれた相手が、たまたまボルネオオランウータンだったので
現在の子沢山おばあちゃんになっているのだそうです。
もし、選んだのが
スマトラオランウータンだったら・・・。
考えると悲しくなります。
その他に、星瑳大学の坪内俊憲さんから
「ボルネオ保全トラスト」について提案がありました。
オランウータンだけでなく、野生動物が生きていくためには
熱帯雨林の森が必要です。
森林は、アブラヤシの農園に変わり
どんどん減っています。
現地の人々も生活するためのお金は、必要です。
ですから
緑の回廊をつくって、動物たちが繁殖できる分だけは土地を残そうということで、みんなに協力を求めているそうです。
私達は、何から始めればいいのでしょうか。
問題は、山積みです。
でも、おらんうーたんに興味を持つことや
動物園に行ってみることが、
すでに、一歩踏み出したことになっていると思うのです。