はがきのおくりもの

 思い出したくなったら、ここに帰っておいで!!!
 元気を補給したら、顔を上げて、歩いて行くんだよ!

二重拘束の恐ろしさ <15> H14.6.10

2010年03月24日 | じんたん 2002

 今日は終業式ですね。1年が終わります。生徒の皆さんも先生方ももう気持ちは来年度に移っているのでしょうね。
 1年間、お疲れ様でした。

 じんたん通信のほうは、「二重拘束」についてでした。考えさせられます。


 二重拘束って、教師と生徒、教育委員会と学校の間にもあるんじゃないか?

二重拘束の恐ろしさ、問題を問題と認識する難しさ

「トシ君のお母さんのお話と、直接本人に接して感じたことを申し上げます。お父さんもお母さんもいささかショックを受けるかもしれませんが、トシ君が学校に行けないのは、家庭内に存在する二重拘束という束縛が関係しています。みなさんにとってもはじめての言葉でしょうから、わかりやすく説明いたします」
「さて、みなさんにわかりやすくいいますと、一言でいってそれは『子どもに矛盾を与え続けること』なのです。たとえば私たちはよく、顔で笑って心で泣くということをいいますが、本心はどちらですか?本心は『泣く』ですよね。同じように、『甘えていいんだよ』といいながら、親は内心で『甘えはよくない』と思っているのです。そこで子供が親の本心を感じて甘えないと、『甘えていいといっているのに、なぜ甘えないのか』『甘えないのは自分たちの愛情に疑問をもっているからなのか』などと親が考え、その思いがまた子どもに伝わり、子どもは二重三重の束縛を感じて、身動きがとれなくなるのです。
まだ難しいですね。たとえばこのような会話を考えてみてください。
『学校には行かなければならない』トシ君は真実そう思っている。
『いいじゃないか、なにも学校だけが人生じゃない』親はそう答えながらも頭のなかでは『不登校児の対策』の教科書をめくっている。
するとトシ君はおそらくこのようにとります。
『親の本心はそうではない。なんで本当のことをいわないんだろう?そうか、無理しているんだ。俺が無理させてるんだ。でも学校には行けない。ああ、俺ってなんてダメな人間なんだろう!』」
「そうなんです!」
突然、トシ君の母親が声をあげました。
「いえ、失礼しました。でもその通りなんです!」
 二重拘束の恐ろしさは、日常の会話のなかで無意識のうちにくりかえされて、子どものなかに堆積するということです。それは子どもに自信を失わせます。そして子どもはそのことに対して納得を得るために「被害者意識」をもつようになります。さらに、被害者意識をもって加害の理屈とします。「加害の理屈」とは、他者に害をくわえて当然とする言い訳のことです。近年とみに目立ちはじめた未成年者の犯罪の動機の不可思議さは、こういうところにあるのかもしれません。

 問題は、それを問題として認識することが解決の糸口である-格言めいた言い方ですが、これは事実です。ただし、その問題に悩み苦しみ、真剣に向かいあい、果敢にとりくもうとする本気の姿勢が必要です。私はそのことを、私のもとにきた子どもたちから教えられました。
 トシ君は自分の問題をはっきりとつかむには、まだまだ長い時間を必要とします。しかし家庭のもつ問題については、親は子どものために少しでも早くきちんと認識しなくてはなりません。

「なるほど、よくわかりました。たしかに私は自分が父親らしいことをしてこなかったという気持ちから、過保護・過干渉をしてしまったと思います。しかし私の目から見るとトシはまだまだ未熟で、どうにも手をこまねいておれないんです」
「私の目から見ると?お父さん、それがいけない。ご自分の物差しで子どもを測っちゃいけません。子どもは未熟なのが当然です。見ちゃおれないということは、つまり不安だということですよね。しかし不安を抑えて、内心おろおろしながらも見守っているのが親の務めなんですよ」
父親はなおも釈然としない顔を私に向けている。
「厳しくいいますと、親は自分の不安な状態に耐えられないから、未熟な子どもに手をかけてしまう。しかし、未熟さとは、可能性でもある。親がすぐに手を出せば、子どもから可能性をもぎとってしまうことになる。これは明らかに親のわがままであって、子どもにとっては支配以外のなにものでもない」
母親がうなづきながら目頭を押さえています。
 問題は、それを問題と認識することが解決の糸口になる。しかしながらこれは、実際にはとても難しいことです。問題を認めさせるにも、相手の心の痛みを気づかいながらやらなくてはなりません。自己防衛は弱さの裏返しです。問題を認識するには強さを必要とするので、自己防衛の強い人ほど、これは難しい作業となります。
 「子どもの心を鍛える学校」蔵谷浩司著、草思社より

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。