環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

第166回国会の議論から ⑨温暖化効果ガス削減目標決議の是非

2007-04-03 06:29:35 | 地球温暖化
2007年4月3日 
 3月23日の衆議院環境委員会では、若林環境大臣のG8環境大臣会議の結果報告を受け、地球温暖化防止に関する質疑が多くなされました。今回は、その議論から主だったものをひろってみたいと思います。

1.EU目標値に対する議論
 欧州連合(EU)の首脳会議は、地球温暖化防止の京都議定書失効後の新たな枠組みを見据えた独自の温室効果ガス削減計画と、それを支援するための、風力や太陽光など再生可能エネルギーの利用目標で合意し、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比で20%以上削減するエネルギー共通政策案が承認されました。また、どの程度の温暖化効果ガスの削減が必要なのかは、様々な数値が提案されています。民主党の末松義規代議士は、この点につき、日本の計算について質問をしました。

 『日本が認識として、中長期的に世界全体の排出量を半分以下にするべきだという御説明というか御認識が示されたということでございますけれども、中長期的にというのは具体的にどういうスパンで考えておられるのかということと、もう一点は、半分以下というのが、結構、IPCCとかいろいろなところで出されている研究報告によれば、その辺の認識があるとは思うんですが、日本独自にも計算されたような、そういうことがあるかも含めて御説明をいただきたいと思います』(末松義規代議士/民主党)

 これに対し、若林環境大臣は、G8環境大臣会議において、EUが設定した目標値をめぐって議論が錯綜したことを前提として、『今の状態で日本がそのことを主張しますと、離脱をしているアメリカとか、あるいはまだこれから、先進国のせいだよ、こう言っている途上国、特に中国などが、次期枠組みで、かねて日本が主張しています、主要排出国全部が参加する形で取り組まなきゃいけない、そういう体系ができなくなっちゃうわけですね』と回答しています。
 具体的な数値を示すことが、京都議定書第一約束期間以降の枠組の構築に影響を与える可能性は確かに否定できません。しかし、EUの目標設定はEU圏域の目標であり、他地域を牽制することはできても拘束することはできません。その点、日本としての目標値について言及できないのは、やや寂しい感じがします。

2.温暖化効果ガス削減目標決議の是非
 民主党の村井宗明代議士は、G8環境大臣会議における若林環境大臣の発言に関し、その実行性について質問し、環境委員会、国会として、公式な温暖化効果ガス削減目標決議文の発表の是非を問いました。なかなか白熱したやりとりですので、少し長いですがそのまま掲載します。

 『今回G8の環境大臣会合で言った、中長期的に世界全体の温室効果ガス排出量を半分以下にまで削減することが必要であるという発言を真摯に思っているかどうか。そして、もし、これを公式確認するために、民主党からこの温室効果ガス排出量を半分以下に削減することが必要であるということを委員会もしくは国会決議として提案する場合、大臣はそれに賛成するつもりがあるかないかについてお聞かせください。』(村井宗明代議士/民主党)

 『私があるいは日本が半分以下にしようと言うことは、これは国内問題なんです。国内問題なんですね。しかし、地球全体で半分以下にしないとだめなわけですから、地球全体が半分以下にするための国際的合意を取りつけていく必要がある。それで、取りつけていく場はどこかといえば、これは気候変動枠組み条約の締約国です、もう170カ国以上もあるわけですから。しかし、それをリードしていくのはG8だという意味で、G8及びG20の場が大きな役割を持つ。その議長が来年は日本にかかってくるし、そして日本が議長のときに、ポスト京都議定書と言われている2013年以降の枠組みについて方向づけをしなければならない、そういう年回りになっているわけですね。そういう意味で、日本がそういうふうに決めたからということで、そういう国際的合意がつくりやすいかどうか、つくれることになるのかどうかというようなこともよく考えてやらないと、そういうことを決定する時期、さらに、いつまでにということを決めることの世界への影響、そういうことを考えた上でやらなきゃいけませんので、せっかくの委員の積極的な御提言といいますか御質問に、それはそうですというふうに今お答えすることは難しいわけです。』(若林環境大臣)

 『今私はこの国の意思を表明することが必要だと思っています。それは何かというと、今までは、例えば、アメリカもCO2を削減するつもりは正直ありませんでした。ところが、大統領選挙以降は、多分政策の方針転換をしてくるでしょう。それからイギリスも、きょう私らは、実は民主党は英国大使と勉強会をさせていただいたんですが、地球温暖化問題について明確に削減の法案を通しました。さてそこで、今日本は、このまま、この大臣が言ったような意思である温室効果ガスを、中長期的には半分以下までに削減するという主張を私たちは明確に公式確認する必要があると思うんです。だからこそ私たちは、この委員会で、もしくはできれば国会の本会議で、中長期的に温室効果ガスを半分以下までに削減することが必要であるという文言を公式確認するための決議を上げるべきだと思っていますが、大臣はそれに反対されますか、賛成されますか。』(村井宗明代議士/民主党)

 『国会決議、委員会決議なりあるいは本会議での院の決議にすることが適当かどうかというのは、どうかもう少し各党間の中でよく話し合っていただきたい。そのことが、世界をリードする、来年は議長国になる日本の姿勢として本当に有効かどうかというようなことは、どうか各党間でよく相談をいただきたいというふうに思います。私は、そういう意識が国内の立法者の中で非常に高まってほぼ一致してくるんだということは非常に結構なことだと思っているんです、そういうのを背景にして政府はいろいろな働きかけをしますから。ただ、それを決議という形にすることがいいのかどうかというのは、ひとつどうかそういう話し合いの場でやっていただきたい、こう思っております』(若林環境大臣)

 『今、地球温暖化問題に反対する人はいないんです。みんな口では地球温暖化問題は大切だねと言う。ところが、具体的な話になると、みんな二の足を踏んでしまう。そんな中で、少なくともこの環境委員の中で、しっかりと意思を表明する必要があるんです。大臣、もしそれができないとしたら、どういう理由があるんでしょうか。』(村井宗明代議士/民主党)

 『私はしばしば繰り返し言っていますが、日本がそういうことを意思表示したからといって、実は、来年日本が議長国になるときに、世界の主要排出国、アメリカや中国、さらにインド、ブラジル、そういう国々も含めて、同じ土俵に乗って削減努力をしてもらえるような環境づくりにプラスになるのかどうかということでございます。私は、EUがあるいは英国が先行してやっているということに同調して、日本がそういう意思表示を立法府でするということがプラスかどうかということについて言えば、今の時点ではまだ決めかねております。そういう意味です。』(若林環境大臣)

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有害物ばく露作業報告について
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【判例情報ウオッチング】
東京地裁は3月28日、渋谷区東1にある可燃ごみ焼却施設「渋谷区清掃工場」の周辺住民が「ダイオキシン汚染の恐れがある」などとして、管理する東京23区清掃一部事務組合に操業差し止めを求めた訴訟で、請求を棄却しました。裁判長は判決で「ダイオキシン類の測定結果は法定の排出基準以下で、生命・健康が侵害されるおそれはない」としています。

ISO14001
◆「環境法令管理室」に「3月26日から4月1日までに公布された主な環境法令一覧」をアップしました/2007.3.31
◆「環境法令管理室」に「3月26日から4月1日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2007.3.31