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環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

無害化土壌搬入と行政行為の附款

2007-08-02 05:56:09 | 行政法
2007年8月2日 
 宇治市内の採石場に、高濃度のダイオキシンを検出した土壌の無害化後の土壌8,000トン超が搬入された問題で、建設・採石会社が無断で処理土を受け入れていたことなどから、京都府は即時撤去を指導した、とのニュースがありました。報道によると、この土壌は『ダイオキシン濃度は環境基準を大きく下回っており、健康などへの影響はない』模様ですが、受け入れた建設・採石会社は『処理土の搬出計画書を提出し全量の撤去を表明』、しかし、『撤去先は未定で、府は撤去完了までは土壌の飛散や流出がないよう監視する』とされています(7月31日京都新聞)。
 上記の問題は、適正な処理施設において無害化処理された後の土壌を受け入れていることから、法律上、何ら問題はないようにも思えます。しかしながら、京都府が敢然と即時撤去を指導した背景には、『行政行為の附款』という切り札が存在しています。
 『行政行為の附款』とは、行政行為の効果を制限したり、あるいは特別な義務を課するために、主たる意思表示に付加される従たる意思表示のことです。分かりやすくいえば、何かを許可するための個別の条件、という意味で、自動車運転免許の、眼鏡等、をイメージすればよいでしょう。
 ただし、『行政行為の附款』は、行政の都合通りなんでもかんでも付すことができるわけではありません。①法律で附款を付すことが認められている場合、②行政行為の内容について行政庁に裁量権が認められている場合、に、その行政行為の目的を達成するために必要な範囲において、さらに義務を課す場合には必要最小限のもので、付すことができるとされています。
 今回の案件では、採石に際し、採石法上の採取計画の認可(第33条)が必要とされ、その認可にあたっては、『条件を附することができる(第33条の7第1項)』ただし『前項の条件は、認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り、かつ、認可を受ける者に不当な義務を課することとなるものであつてはならない(第33条の7第2項)』として、法律で附款を付すことが認められている場合に相当します。したがって、京都府が、この建設・採石会社の宇治市内の採石場に対する採取計画を認可するに際し、『土砂などの搬入は原則として行わない』などとする条件が付されていたものと思われます。

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
中央環境審議会地球環境部会・産業構造審議会環境部会地球環境小委員会合同会合(第21回)の開催について

経済産業省
火薬類取締法施行規則の改正案等に対する意見の募集について
西日本石炭じん肺訴訟(福岡第1陣)の判決について

国土交通省
平成19年度民生部門等地球温暖化対策実証モデル評価事業(公共交通利用型のモデル事業・FS事業)の補助金の交付決定について

厚生労働省
平成19年度 第3回 少量新規化学物質の申出手続について

資源エネルギー庁
省エネ設備投資補助事業の助成対象決定について
第27回電気事業分科会の議事概要

東京都
「再生水」を「永田町及び霞が関地区」に供給開始

【判例情報ウオッチング】
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ISO14001
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廃棄物処理法にみる行政処分と刑事処分 ④防御機会の手続 事前手続としての行政手続法

2006-10-30 06:25:23 | 行政法
2006年10月30日
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)にみる行政処分と刑事処分第4回以降は、防御機会の手続について整理をしていきます。原則として、行政処分はいきなり発出されるものではありません。発出の前には、処分の内容に応じた防御機会が、行政手続法によって規定されています。また、行政処分発出後については、行政不服審査法行政事件訴訟法による救済の機会が規定されています。

1.行政手続法による事前手続
(1)聴聞(行政手続法第15条~第28条
 聴聞は、①許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき、②名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき、③名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき、④①から③以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき、に行政庁と当事者等との口頭でのやりとりによる審理方式によって、争点を明確にすることで処分の適正を確保するものです。廃棄物処理法における行政処分では、許可取消や一部の措置命令の場合に用いられます。なお、措置命令の場合、生活環境の保全上の支障の除去など、公益的に緊急を要する場合には、事前手続は不要とされています。
①聴聞の通知
 まず、行政庁は聴聞を行う期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人に対して、①予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項、②不利益処分の原因となる事実、③聴聞の期日及び場所、④聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地、を記した通知書を送付します。また、この通知には、①聴聞の期日に出頭して意見を述べ、及び証拠書類又は証拠物を提出し、又は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書及び証拠書類等を提出することができること、②聴聞が終結する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること、が教示されていなければなりません。

②代理人、当事者、参加人
 聴聞の通知を受けた当事者は、弁護士等の代理人を選任することができます。選任された代理人は、当事者に代わり聴聞に関する全ての行為をすることが可能です。また、聴聞には、当事者以外の者であっても、その不利益処分に対して利害関係を有する場合は、主宰者(行政庁が指名する職員その他政令で定める者)の職権または許可を得て、聴聞に参加することができます(以下、参加人)。
 当事者及び参加人は、聴聞の通知が到達したときから聴聞が終結するまでの期間、行政庁に対して、その事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができます。この場合において、行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができません。

③聴聞の審理方法
 聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰して、実施されます。主宰者は、最初の聴聞の期日の冒頭において、行政庁の職員に、予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項並びにその原因となる事実を聴聞の期日に出頭した者に対し説明させなければなりません。また、当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができます。この場合、当事者又は参加人は、主宰者の許可を得て、補佐人とともに出頭することが可能です。主宰者は、聴聞の期日において必要があると認めるときは、当事者若しくは参加人に対し質問を発し、意見の陳述若しくは証拠書類等の提出を促し、又は行政庁の職員に対し説明を求めることができ、また、当事者又は参加人の一部が出頭しないときであっても、聴聞の期日における審理を行うことができます。聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、非公開で行われるのが原則です。
 当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することが可能です。この場合、主宰者は、聴聞の期日に出頭した者に対し、その求めに応じて、提出された陳述書及び証拠書類等を示すことができます。
 主宰者は、聴聞の期日における審理の結果、なお聴聞を続行する必要があると認めるときは、さらに新たな期日を定めることができます。この場合、当事者及び参加人に対し、あらかじめ、次回の聴聞の期日及び場所を書面により通知する必要があります(聴聞の期日に出頭した当事者及び参加人に対しては、当該聴聞の期日においてこれを告知すれば足りる)。
 主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができます。また、主宰者は、当事者の全部又は一部が聴聞の期日に出頭せず、かつ、陳述書又は証拠書類等を提出しない場合において、これらの者の聴聞の期日への出頭が相当期間引き続き見込めないときは、これらの者に対し、期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め、当該期限が到来したときに聴聞を終結することとすることができます。

④調書・報告書・行政処分
 主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書において、不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければなりません。この調書は、聴聞の期日における審理が行われた場合には各期日ごとに、当該審理が行われなかった場合には聴聞の終結後速やかに作成することとされています。そして、主宰者は、聴聞の終結後速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、前述の調書とともに行政庁に提出します。当事者又は参加人は、これらの調書及び前項の報告書の閲覧を求めることが可能です。
 行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、主宰者に対し、提出された報告書を返戻して聴聞の再開を命ずることができます。また、行政庁は、不利益処分の決定をするときは、これらの調書の内容及び報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければならない、とされています。
 行政庁又は主宰者が上記の手続に基づいてした処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができません。また、聴聞を経てされた不利益処分については、当事者及び参加人は、行政不服審査法による異議申立てをすることができません。

(2)弁明の機会の付与(行政手続法第29条から第31条
 弁明の機会の付与は、聴聞に該当する以外の場合に行政庁に対して弁明書を提出する方法により行われます(行政庁が認めた場合は、口頭も可)。弁明をするときは、証拠書類等を提出することができます。
 行政庁は、弁明書の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その日時)までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、①予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項、②不利益処分の原因となる事実、③弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)、の事項を書面により通知しなければなりません。なお、弁明の当事者は、聴聞同様に代理人を選任することができます。
 廃棄物処理法における行政処分では、改善命令・措置命令・事業停止が該当しますが、改善命令は『行政処分の指針について(環廃産発第050812003号)』によって、『改善命令を行う場合は、行政手続法第13条第2項第3号により同条による聴聞又は弁明の機会の付与の手続は不要であること』とされ、措置命令についても『公益上、緊急を要する場合は、行政手続法第13条第2項第1号により同条による聴聞又は弁明の機会の付与の手続を執らないことも可能である』とされています。

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
「温泉行政の諸課題に関する懇談会」報告書について
新システムへの移行に向けた、現行の国別登録簿システムの利用停止及び国別登録簿利用規程の廃止について
全国星空継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)平成17年度冬期観察の結果について
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会 廃棄物の区分等に関する専門委員会の開催について
地球環境研究総合推進費一般公開シンポジウムの開催について『地球温暖化から未来をのぞく-生活と身近な環境への影響-』
「第2回環境の街作り検討会」の開催について
「第48回自然公園大会」について
第7回日中韓環境教育ワークショップ/シンポジウムの結果について

経済産業省
冬季の省エネルギー対策について
商業販売統計速報(平成18年9月分)

国土交通省
第10回海岸シンポジウムの開催について
国土交通月例経済(平成18年10月号)
都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令案について
都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案について

厚生労働省
石綿に係る疾病の業務上外に関する検討会第12回開催について
石綿に係る疾病の業務上外に関する検討会第13回開催について

東京都
東京都エネルギー環境計画書等を公表

【判例情報ウオッチング】
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廃棄物処理法にみる行政処分と刑事処分 ③行政処分から刑事処分へ 欠格要件該当への道

2006-10-29 09:24:02 | 行政法
2006年10月29日
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)における行政処分は、報告徴収(法第18条)、立入検査(法第19条)による事実認定に基づいて、発出されます。この際、『行政処分の指針について(環廃産発第050812003号)』では、『行政処分を行うためには、違反行為の事実を行政庁として客観的に認定すれば足りるものであって、違反行為の認定に直接必要とされない行為者の主観的意思などの詳細な事実関係が不明であることを理由に行政処分を留保すべきでないこと。なお、事実認定を行う上では、法に基づく立入検査や報告徴収や関係機関との連携を積極的に活用し、事実関係を把握すること。』とし、客観的事実のみに従い行政処分を発出することを求めています。
 許可の取消及び一部の措置命令を除く行政処分は、原則として再び適正に廃棄物処理を行うことを期待して出されるものと考えられます。許可取消という被処分者にとってこれ以上ない最悪の措置が規定されている以上、そこに該当しない行政処分が出されるということは、取消の手前で留めておこうとする意思が存在すると思料ことが自然だからです。
 ここで、一つ疑問になるのが廃棄物処理法の罰則規定との関係です。たとえば、マニフェストの虚偽記載違反は、廃棄物処理法第29条によれば『6月以下の懲役又は50万円以下の罰金』と規定されています。一方、行政処分の基準を記した『廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条の3等に係る法定受託事務に関する処理基準について(環廃産発第050812002号)』では、30日の事業停止、とされています。もし、廃棄物処理法に違反して罰金以上の刑を受けることとなれば、法第14条第5項第2号イの欠格要件に該当し、許可は『取消さねばならない(法第15条の3)』ことになります。では、取消すことを前提として、わざわざ事業停止の行政処分を発出するのでしょうか? これでは取消に至らない行政処分の基準を規定した意味がまったくないとことなってしまいます。
 ここで行政処分と刑事処分の関係を整理してみましょう。刑事処分は、告発というインプットを経て、公訴の提起、公訴せず、というアウトプットがだされるものです。その判断材料として、事業停止の行政処分を発出した行政庁が、行政処分に至る行為に不法投棄やその他の事件性との関連がある、という客観的事実を把握している場合は、その旨を捜査機関に対し告発することになります。
 検察官は、この告発内容を調査し、公訴するかしないかを判断することになります。この際、第1回でも書いた通り、刑事訴訟法第248条によって、検察官は、『犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる』とされており、違反事実があったとしても、酌量される余地があるため、ここで公訴せず、と判断されれば行政処分による事業停止のみとなり、欠格要件該当による許可取消には至りません。一方、公訴を提起する、という刑事処分が発出されれば、舞台は裁判所へと移され司法へと判断が委ねられます。そして、罰金刑以上が確定すれば、許可取消しという行政処分が出されるということになります。
 告発は、行政庁以外でも可能なため、刑事処分が先になされる場合もありえますが、ほとんどの場合は上記の『行政処分 ⇒ 刑事処分 ⇒ 行政処分』という流れで整理ができると思います。

※明日は、防御機会のための手続きについて整理します。

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廃棄物処理法にみる行政処分と刑事処分 ②自治体による行政処分の温度差

2006-10-28 09:53:53 | 行政法
2006年10月28日
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)上、自治体が実施する行政処分の基準については、平成17年8月12日に発出された『廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条の3等に係る法定受託事務に関する処理基準について(環廃産発第050812002号)』に示されています。これを加味して各自治体では、条例や要綱等により自ら適用する基準を定めています。たとえば、豊田市では『豊田市産業廃棄物処理に係る行政処分の基準等に関する条例(平成17年10月1日)』を策定し、『行政処分の指針について(環廃産発第050812003号)』の内容までも包含した規定を置いています。また、岩手県では『循環型地域社会形成に関する条例』及びその施行規則のなかで、累積点数制による基準が規定されています。
 行政処分の基準自体は、どの自治体でも『廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条の3等に係る法定受託事務に関する処理基準について』に準拠しており、ほとんど同一の規定を置いています。しかし、その運用については、自治体によって温度差があると言えます。
 たとえば、産業廃棄物収集運搬業者の許可の変更違反について、次のような事例があります。
廃棄物処理法第14条の3の2第1項第2号に該当するとして許可を取消した事例
 産業廃棄物収集運搬業の許可を受けた者が、その範囲に「燃え殻」がないにも関わらず、産業廃棄物である燃え殻入りの土砂の運搬を受託し、運搬したため、法第14条の2第1項(許可の変更)に違反し、法第14条の3の2第1項第2号に該当するに至ったため、許可を取消す。
廃棄物処理法第14条の2第1項違反に該当するため事業停止とされた事例
 取得している産業廃棄物収集運搬業の許可には、ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず(廃石膏ボード)の積替保管が含まれていないにもかかわらず、排出事業者の廃石膏ボードを収集運搬し、同社事業場資材倉庫において、31日間にわたり積替保管を行った。また、同社が取得している岩手県知事の産業廃棄物処分業の許可はガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず(廃石膏ボード)の処分が含まれていないにもかかわらず、積替保管を行った廃石膏ボードのうち2.47tを、事前協議を経ずに設置した石膏ボード剥離施設により処理を行った。これらの行為は法第14条の2第1項違反(事業範囲の無許可変更)に該当する。として、産業廃棄物収集運搬業及び特別管理産業廃棄物収集運搬業は、90日間の事業の全部停止。産業廃棄物処分業は、27日間の事業の全部停止とする。
 上記の二つの事例は異なる自治体においてなされた行政処分です。ほぼ同じ(発表内容だけで判断すると、どちらかというと②のほうが重い気がしますが)内容の許可変更違反に対して、①は許可取消、②は事業停止、という行政処分がなされています。特に、①の場合、事業停止措置に該当し、情状が特に重いとき(廃棄物処理法第14条の3の2第1項第2号)に該当するとして、一発で許可取消の処分が出されている点に注目できます。発表された内容を読む限り、繰り返し処分を受けていたような経緯もなく、許可変更違反のみを対象としておりますので、かなり厳しい処分であると言えるのではないでしょうか。
 この点、『廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条の3等に係る法定受託事務に関する処理基準について』では、『なお、貴職において、事案に応じ、本基準以上に厳格な処分を行うことは、本基準の趣旨に反するものではない旨申し添える』としています。

※明日は、刑事処分との関係 欠格要件該当への道、をお届けします。

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
平成17年度の温室効果ガス排出量等について
化学物質審査規制法に基づく藻類生長阻害試験法の改正案に対する意見募集(パブリックコメント)の結果について
昨年度の「WARM BIZ」の成果について
「チーム・マイナス6%」における今年度の冬の取組キックオフ記者発表会について

国土交通省
「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令案について(意見募集)」の結果について(募集期間 平成18年7月24日~平成18年8月24日)
「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令案について(意見募集)」の結果について(募集期間 平成18年9月25日~平成18年10月24日)

東京都
(仮称)東京都景観計画(素案)の意見を募集

【判例情報】
京都地裁園部支部園部簡裁は、京都府の豆腐製造販売会社が産業廃棄物である大豆の皮を焼却していた問題で、産業廃棄物処理法違反の罪で、同社に罰金100万円、従業員に同50万円の略式命令を出しました。命令によると、従業員は3月31日、豆腐を製造する際に生じた大豆の皮など約125キロを同社敷地内で焼却した、とされています。

ISO14001
◆「環境法令管理室」に「10月16日から10月22日までに公布された主な環境法令一覧」をアップしました/2006.10.22
◆「環境法令管理室」に「10月16日から10月22日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.10.22




廃棄物処理法にみる行政処分と刑事処分 ①行政処分には情状酌量の余地はない?

2006-10-27 08:24:06 | 行政法
2006年10月27日
 行政処分とは、行政庁が行う処分及び裁決のことで、許認可等の申請に対する処分や不利益処分などのことを言います。相手方の任意の協力を前提とする行政指導とは異なり、①法律や条令の規定に違反した処分であっても、権限ある機関(上級庁や裁判所等)が正式に取り消さない限り有効(公定力)、②命ぜられた義務を相手方が履行しない場合に、行政庁が、裁判所の判決を受けることなく強制執行を行える(自力執行力)、というとても強い力を有しています。
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では、①許可取消、②事業停止、③措置命令、④改善命令、の4つの行政処分が規定されています。廃棄物処理業は、許可制による規制産業ですので、許可に値する各種基準に適合しなくなった場合には、許可取消・事業停止の重い行政処分が下されることになります。措置命令は、基準に適合しない廃棄物処理が行われたために、生活環境の保全に支障をきたす場合及びその恐れがある場合に、不適正処理をした者(廃棄物処理業者、排出事業者)に対して、その支障の除去、是正処置などが命ぜられるものです。改善命令は、基準に適合しない廃棄物処理が行われた場合に、そのやり直し等を、期間を定めて命ぜられるものです。
 一方、刑事処分は、違反行為があった場合に告発等を受けて検察官が、公訴を提起するか、しないかを決定する処分をいいます。廃棄物処理法との関係でいえば、行政処分を課した行政庁が、その重大性によって告発する場合、公益通報者保護法などによって内部告発がおこなわれる場合、住民等からの告発などの場面が考えられます。
 平成17年8月に発出された『行政処分の指針について(環廃産発第050812003号)』では、両者の目的を次のように整理しています。
行政処分:将来にわたる行政目的の確保
刑事処分:過去の行為の評価
 刑事処分については、刑事訴訟法第248条によって、検察官は、『犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる』とされており、違反事実があったとしても、酌量される余地があり得ますが、行政処分については『行政処分の指針について』のなかで『過去の行為を評価する刑事処分とはその目的が異なるものであるから、それを理由に行政処分を留保することは不適当であること。むしろ、違反行為に対して公訴が提起されているにもかかわらず、廃棄物の適正処理について指導、監督を行うべき行政が何ら処分を行わないとすることは、法の趣旨に反し、廃棄物行政に対する国民の不信を招きかねないものであることから、行政庁として違反行為の事実を把握することに最大限努め、それを把握した場合には、いたずらに刑事処分を待つことなく、速やかに行政処分を行うこと』として、情状による酌量を否定しています。
 
※明日は、自治体による行政処分の温度差について考察します。

【官報ウオッチング】
〔省令〕
電気事業法施行規則の一部改正(経済産業省令第94号/平成7年通商産業省令第77号の一部改正)
 小出力発電所の発電用の工作物のうち、燃料電池発電設備の基準が「最高使用圧力が0.1メガパスカル」から「燃料・改質系統設備の最高使用圧力が0.1メガパスカル(液体燃料を通ずる部分にあっては、1.0メガパスカル)」に改められた。
施行日:平成18年10月27日

発電用火力設備に関する技術基準を定める省令の一部改正(経済産業省令第94号/平成9年通商産業省令第51号の一部改正)
1 第32条(安全弁)に、次の第2項を新設。
「燃料電池設備が一般用電気工作物(気体燃料を使用する固体高分子型のものであって、燃料昇圧用ポンプの最大吐出圧力が燃料電池設備の最高使用圧力以下であるものに限る。)である場合であって、耐圧部分の過圧を防止するための適切な措置が講じられているものであるときは、前項の規定は適用しない。」
2 廃棄物固形化燃料の貯蔵設備(サイロその他非開放型の構造の貯蔵設備)の湿度測定装置の基準を、「燃料の水分を十質量パーセント以下」から「燃料に含まれる水分を適切」に改めた。ただし、発酵、化学反応その他の事象によって、廃棄物固形化燃料が異常に発熱し、又は可燃性のガスが発生するおそれがない場合は、適用除外とされた。
3 廃棄物固形化燃料の貯蔵設備(サイロその他非開放型の構造の貯蔵設備)の気体濃度測定装置の基準について、発酵、化学反応その他の事象によって、廃棄物固形化燃料が異常に発熱し、又は可燃性のガスが発生するおそれがない場合は、適用除外とされた。
4 廃棄物固形化燃料の貯蔵設備(サイロその他非開放型の構造の貯蔵設備)の燃焼防止装置の基準について、発酵、化学反応その他の事象によって、廃棄物固形化燃料が異常に発熱し、又は可燃性のガスが発生するおそれがない場合は、適用除外とされた。
施行日:平成18年10月27日

【行政情報ウオッチング】
環境省
医療系廃棄物の漂着について(第2報)
中央環境審議会大気環境部会(第21回)の開催について
環境技術実証モデル事業 VOC処理技術分野(中小事業所向けVOC処理技術)における実証機関の選定及び実証対象技術の募集について
気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)及び京都議定書第2回締約国会合(COP/MOP2)におけるサイドイベント「持続可能な発展につながる低炭素社会に向けたグローバルチャレンジ」の開催について

経済産業省
「一日原子力安全・保安院(一日保安院)」の開催について

国土交通省
国土審議会計画部会第10回持続可能な国土管理専門委員会議事録

厚生労働省
労働安全衛生法の改正について

【判例情報】
 東京地裁で、25日、新石垣空港建設に向けた手続きに不備があるとして、予定地内の共有地主121人と周辺に生息する希少種のヤエヤマコキクガシラコウモリ、アオサンゴが原告となり、設置許可の取り消しを国に求めた訴訟の第1回口頭弁論がありました。原告代表が予定地周辺の環境保全の必要性と県の環境影響評価(アセスメント)の方法書作成の不備などを訴え、一方、国側は環境影響評価法には、自然環境に関する利益について個々人の個別の利益を保護するといった趣旨や目的は含まれていないとし、請求を退けるよう求める答弁書を提出しています。また、国側は、共有地主ではない13人の原告について法律上の利益を有する者に該当しないとして、訴えの却下を主張しています。

ISO14001
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平成19年度環境省重点施策特集 ④環境保全のための人・金・場

2006-09-16 09:20:55 | 行政法
2006年9月16日 
 平成19年度環境省重点施策特集第4回目は、環境保全のための人・金・場です。第三次環境基本計画では、環境と経済の好循環に加えて、社会的側面も一体的に向上させていく方針を打ち出されています。『環境・経済・社会の統合的向上に向けた基盤づくり等』とされた本施策は、まさしくこの方針を具現化するための事象横断的な予算措置であるといえます。
 本施策は、『経済のグリーン化の推進』『第三次環境基本計画を踏まえた地域づくり、人づくり』『環境を切り口にした地域での多様な活動の場の提供』『政策基盤の強化』の4つの項目から構成されています。
 それぞれ具体的にみていくと、『経済のグリーン化の推進』は、①環境に配慮した金融の推進、②グリーン購入等の推進に分けられます。①環境に配慮した金融の推進、は本項目の目玉ともいえる新事業で、1500兆円を超える個人資産に着目し、この『金融力』と技術的な『環境力』とを融合させることにより、環境・経済の好循環を導き出すことをねらいとしています。預金者や投資家等に対して環境に配慮した投資の普及・啓発、投資判断に資するための企業の環境保全情報の整理、などの事業に予算措置がなされています。②グリーン購入等の推進、で目を引くのは、サプライチェーンにおける環境配慮を促進するために実施するとされる各国の法令等のデータベース化に必要な事項の整理・提供への取組です。海外法令情報は、ISO14001などの環境マネジメントシステム上も有意義なものであるといえます。
 『第三次環境基本計画を踏まえた地域づくり、人づくり』は、文字通り地域づくり及び人材育成政策への予算措置です。地域づくりのための事業としては、地方環境事務所を中核とした地域環境政策ビジョンの策定、地域において社会的に価値のある事業に対して出融資等を行うコミュニティ・ファンドへの支援などが掲げられています。また、人づくりのための事業としては、全国での環境教育・学習を身近なものにするための教材作成と地方への普及、地域に根ざした環境教育の実践、プログラム開発の実施等が掲げられています。
 『環境を切り口にした地域での多様な活動の場の提供』は、次期内閣が標榜するいわゆる再チャレンジ関連施策の一環として予算措置されたものです。自然学校のインストラクター・エコツアーガイドの育成研修、公害経験を有する企業退職後の団塊の世代等を対象とした地域の土壌汚染事案に関するリスクコミュニケーションのための人材の登録・研修、などの事業により構成されています。
 『政策基盤の強化』は、①環境研究・技術開発の推進、②超長期ビジョンの策定、環境アセスメント制度の充実等、から構成されています。①環境研究・技術開発の推進、では、2006年3月に中央環境審議会からだされた『環境研究・環境技術開発の推進戦略について』を踏まえ、産・官・学の連携による技術開発への支援が予算化されています。また、②超長期ビジョンの策定、環境アセスメント制度の充実等、では、2050年頃に実現すべき持続可能な社会の姿及びそこへ至るロードマップの策定、環境影響評価制度の見直しの着手及び戦略的環境アセスメントに関するガイドラインの作成、等が掲げられています。

【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。

【行政情報ウオッチング】
環境省
鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針の策定に係る人材育成ワーキンググループ(第3回)の開催について
「地球観測連携拠点(温暖化分野)」の整備及び「地球温暖化観測推進事務局/環境省・気象庁」の開所記念セミナーの開催について
水俣病発生地域環境福祉推進室の発足について

経済産業省
計量法附則第四条の計量単位等を定める政令の一部を改正する政令について
ガス瞬間湯沸器による一酸化炭素中毒事故の再発防止について(第16報)
第3次産業活動指数(平成18年7月分)
特定サービス産業動態統計確報(平成18年7月分

国土交通省
住生活基本計画(全国計画)について

厚生労働省
第3回ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会の開催について

資源エネルギー庁
我が国の石油備蓄の現状(9月分)

【判例情報ウオッチング】
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◆「環境法令管理室」に9月4日から9月10日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.09.09

自動車税のグリーン化と環境負荷を考える視点

2006-09-12 13:05:41 | 行政法
2006年9月12日 
 欧州連合(EU)の自動車登録税を廃止して、燃費や環境汚染物質・二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課税する案が、欧州議会において賛成多数で支持された、というニュースがありました。今後、EU理事会が全会一致で支持すれば、正式な導入が決まるそうです。ただし、欧州議会の議論のなかでは、環境負荷との関連については、より多様な側面を含めるべきとして、燃費やほかの汚染物質排出量も考慮すべき、とされています。参考
 我が国における自動車関連の税金は、①自動車保有税(自動車を所有している人に課される都道府県税で、軽自動車には自動車税は課されません)、②自動車重量税(車検などの際に自動車の重量等に応じて課税される国税です)、③自動車取得税(自動車の取得に対して課税される都道府県税で、都道府県県及び市町村の道路整備の費用として使われます。割賦販売契約により購入した場合等で、売主が所有権を留保しているときは、買主である使用者が納税者となります)、の3つから成り立っています。
 これらの自動車税については、環境負荷の小さい車種の購入を促進し、環境負荷が大きい旧型車種の廃車を促進するために、2001 年度より、グリーン化を目的として税改正が実施されました。主な内容は、①自動車保有税の減税および増税(燃費および排ガス規制の観点から、環境負荷の小さい自動車の購入に対しては、自動車税を13~50%減税し、車齢が11年を超えるディーゼル車および13年を超えるガソリン車に対しては10%増税する)、②自動車取得税の減税(旧型のディーゼル車を配車して最新規制適合車を購入する場合、あるいは、一定の基準を満たす低燃費車や低公害車を購入する場合などに自動車取得税を軽減する)、というものです。自動車税のグリーン化は、車の保有に対してかけられる税額を改正することにより、環境高負荷型車から低負荷型車への選択をシフトさせることを狙ったものであり、資源配分の効率性を改善するという意味で、意義のある改正であったと思います。
 しかし、自動車による環境負荷は、排気ガスだけではありません。例えば、使用済自動車となった後の廃棄物処理工程における負荷もあります。排気ガスに関する規定をクリアするために、廃棄部分がたくさん出てしまうような構造であったならば、総合的にみてどちらが環境負荷が少ないか、一概には言えなくなってしまうでしょう。環境問題を考える場合、総合的な視点から政策を考えていくことが重要であると思います。

【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。

【行政情報ウオッチング】
環境省
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会廃棄物の区分等に関する専門委員会の開催について
近隣騒音防止ポスターデザイン募集について
平成18年度環境保全研究発表会の開催について
平成18年度動物愛護管理功労者表彰について
平成18年度動物愛護週間中央行事について
遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多様性の確保に関する法律に基づく第一種使用規程の承認申請案件に対する意見の募集(パブリックコメント)について
平成18年度 メガワットソーラー共同利用モデル事業の採択案件について
中央環境審議会循環型社会計画部会の地域ヒアリングの開催について
公害健康被害補償不服審査会裁決について

国土交通省
「港湾法施行規則の一部改正」に関するパブリックコメントの募集について
主要建設資材月別需要予測(平成18年10月分)
建設工事受注動態統計調査報告(平成18年7月分)

【判例情報ウオッチング】
新しい情報はありません。

ISO14001
◆「環境法令管理室」に9月4日から9月10日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.09.09


環境保全協定の効力 産業廃棄物最終処分場設置許可をめぐって

2006-09-02 08:22:30 | 行政法
2006年9月2日
 米沢市では、山形県が設置許可を出した産業廃棄物最終処分場の建設をめぐり、地元住民からの反対の声を受け、設置業者と環境保全協定を結ぶことにより解決を図ることを模索してきていました。今年5月に環境保全協定の案を公示しましたが、住民からの納得が得られず、学識研究者・有識者からなる検討会を設置。よりレベルの高い環境保全協定案の作成を目指し、検討を重ね、このほど修正案が米沢市長あてに答申されました。
 産業廃棄物処理施設の許可権限は都道府県知事にあります(廃棄物処理法第15条)。また、設置許可に際しては基準が定めらおり(法第15条の2)、いずれの基準にも適合する場合は、許可することが求められています。産業廃棄物処理施設は、いわゆる嫌悪施設ですので、行政側も地元住民の環境保全を考慮することが重要になります。そこで、要綱等により、『設置場所から500メートル以内の住民すべてから同意を得ること』などの行政指導を実施している例が多くあります。
 今回のケースは、要綱レベルの行政指導もクリアされていたため設置許可がだされたものですが(ただし、500メートル以内に住民は存在しなかった)、①県内18施設あるうち8施設が米沢に集中していること、②近辺に東北地方最大の処分場があること、などから設置の取消しを求める声が多く寄せられています。
 このほど出された修正案は、先行例を参考にしつつ、①法令規制値の順守だけでなく、汚染物質の排出量や濃度の低減を求める努力項目の設定、②ダイオキシン類対策として、含有量が1グラム当たり3ナノグラムを超える燃え殻・ばいじんの埋め立ての禁止、③未規制物質が新たに環境汚染・公害の原因として科学的に検証された際は、必要な対策を取る、④市が必要と認めた場合は業者への立ち入り調査に住民が立ち会える、⑤協定の意義を高めるために協定締結の立会人は知事とする、などの規定が盛り込まれています。
 協定には条例のように法的な授権はありませんが、民法の契約とほぼ同一視できるため、①合意の任意性、②協定の目的の合理性、③手段の合理性、④求められる行為の具体性、⑤強行法規への適合性、がクリアされていれば、不履行の場合には強制履行などの手段がとれると考えられます。その意味では、法令に近い拘束力をもった手段であるといえると思います。廃棄物処理法に基づく技術上の基準及び当該環境保全協定を順守する限り、環境への影響はないものと思いますが、それが守られるという確固たる保証もない、というのが地元住民の心情でしょう。
 一方、山形県が事前協議書の受理をしたのが10年前、許可が出されたのが7年前であるように、最終処分場の設置計画から建設着手までは、かなりの時間がかかります。この間の経済的なロスもまた重要な問題であるといえます。いずれにとっても納得のいく回答を得ることはなかなか困難であるといえるでしょう。

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
第1回 環境の街作り検討会 議事次第・資料
平成18年度環境技術実証モデル事業検討会 VOC処理技術ワーキンググループ会合(第1回)の開催について
平成18年度環境技術実証モデル事業検討会 ヒートアイランド対策技術ワーキンググループ会合(第2回)の開催について
鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針の策定に係る特定鳥獣保護管理計画ワーキンググループ(第3回)の開催について
上信越高原国立公園(草津・万座・浅間地域)の公園区域及び公園計画の変更に関する意見の募集について
外来生物法に基づく特定外来生物等の追加指定種の規制の開始及び特定外来生物の防除の公示について
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会容器包装の3R推進に関する小委員会(第2回)の開催について
海洋施設廃棄の許可の申請に関し必要な事項を定める告示(ガイドライン)案に関する意見の募集について

経済産業省
平成18年度中小企業者等に対する特定補助金等の交付の方針について(SBIR)
ガス瞬間湯沸器による一酸化炭素中毒事故の再発防止について(第14報)
首都圏での広域停電を受けた対策について(経済産業省に関係する対策)

国土交通省
住生活基本計画(全国計画)(案)に関するパブリックコメントの募集の結果について
建設資材情報化普及方策(建設資材調達コストの縮減)に関するアンケート調査の結果概要について
残コン・戻りコンの発生抑制、有効利用に関するアンケート調査の結果概要について
速度抑制装置の装着に関する経過措置期間の終了について
流木情報の通報の徹底に係る通達の発出について(お知らせ)
原油価格高騰問題に対する対応について
「建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について」答申について

厚生労働省
第1回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会開催について

東京都
17年度 都内における航空機騒音の調査結果

【判例情報ウオッチング】
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ISO14001
「環境法令管理室」に8月1日から27日までに公布された主な環境法令一覧」をアップしました
「環境法令管理室」に9月以降に改正が予定されている主な環境法令一覧をアップしました
「役立つ!ISO14001関連書籍」に書評をアップしました

両罰規定とコンプライアンス

2006-08-25 12:48:06 | 行政法
2006年8月25日
 廃プラスチックの委託処理違反に関するニュースがありました。容疑の概要は、『産業廃棄物処理業の許可を有しない業者に、許可を有していないことを知りながら、廃プラスチックの処理を委託した』とするものです。廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反の疑いで、委託をした社員及び受託者が逮捕され、法人自体も書類送検される見込みとのことです。
 行政刑罰の場合、原則として刑事訴訟法の手続により裁判所が科刑します。そのため、不服を申し立てるには、行政訴訟のように取消訴訟ではなく、刑事手続により無罪を主張することになります。また、今回の事件のように、違反行為者のほか、事業主である法人または人を処罰する規定を両罰規定といいます。判例によれば、両罰規定は事業主の過失を推定したものと解されており、事業主には無過失の挙証責任が負わされています。
 具体的に廃棄物処理法の規定を見てみると、排出事業者側は『産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない(法第12条第3項)』として、産業廃棄物処理業の許可を有しているものへ委託することを規定しています。そして、『法第12条第3項の規定に違反して、産業廃棄物の処理を他人に委託した者は、5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(法第25条第1項第6号)』としたうえで、『法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、法第25条第1項の規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して1,000万円以下の罰金刑を、その人に対して1,000万円以下の罰金刑を科する(法第32条)』と両罰規定を置いています。
 一方、処理業者側も『産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない(法第14条第1項)』として許可制であることを規定し、『法第14条第1項の規定に違反して、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行つた者は、5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(法第25条第1項第1号)』と罰則をもうけたうえで、『法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、法第25条第1項第1号の規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して1億円以下の罰金刑を、その人に対して1億円以下の罰金刑を科する』と両罰規定を置いています。
 上記の通り、事業主の場合、故意でなくとも過失により両罰規定の適用を受けることに留意し、コンプライアンス体制の構築や適正な教育訓練などを実施し、未然防止に努めることが重要であると思います。

官報ウオッチング
平成18年8月25日
厚生労働省告示第473号(食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部改正)
食品の部A食品一般の成分規格の項6の目の(1)の表のピメトロジンの項の次に『ピラクロストロビン』が加えられました。
施行日:平成18年9月25日(一部経過措置あり)

【行政情報ウオッチング】
環境省
「石綿による健康被害の救済に係る事業主負担に関する検討会(第3回)」の開催について
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に対する意見の募集(パブリックコメント)について

経済産業省
CDMプロジェクト政府承認審査結果について(申請者:丸紅株式会社

ガス瞬間湯沸器による一酸化炭素中毒事故の再発防止について(第12報)
ノートPC搭載リチウムイオン電池の不具合への対処について

国土交通省
建設業に係る特定特殊自動車排出ガスの排出の抑制を図るための指針(案)に関するパブリックコメントの募集について
国土交通省人事異動(平成18年8月25日付)

厚生労働省
水質検査機関登録簿等の更新について(H18.8.25更新)

【判例情報ウオッチング】
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ISO14001
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法律による利害関係調整のための前提 慣習、言葉

2006-08-13 17:14:03 | 行政法
2006年8月13日
 国籍やことば、文化や性などのちがいを認め尊重しあう「多文化共生社会」を実現するためのさまざまなプロジェクトを展開している特定非営利活動法人『多文化共生センターきょうと』が、日本に住む外国人に、ごみの分別方法を伝えるための「ゴミ問題解決キット」を製作したそうです。「ゴミ問題解決キット」は、中国語やポルトガル語など9カ国語に対応し、カード方式で実際に切り取って活用できる仕組みになっています。
 言葉や習慣の違は、地域住民との間で様々なトラブルを起こす要因となります。相手に迷惑をかけるつもりなどまったくないのに、トラブルが生じてしまうのは、お互い不幸であるとしかいいようがありません。そして、ごみ問題もまた、そうした日常的にトラブルが起きやすい問題でもあります。
 法律は、利害関係の調整機能としての役割を担うものですが、それ以前に言葉・慣習という共通ルールが存在していることは事実です。民法においても、相隣関係や入会権等の用益権について、『異なる慣習があるときは、その慣習に従う(第217条、第219条第3項、第294条など)』としています。利害を調整する前提として、何が利害となっているかの慣習、それらを理解するための言語、を理解することが重要であるということでしょう。
 今後、高齢化社会が進み人口が逓減していけば、国を支える労働力として外国人が迎え入れられる機会は増えていくことと思います。お互いが理解しあい、快適に生活していくために、今回の『多文化共生センターきょうと』の試みはとても有意義であるといえるでしょう。
 
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