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「核兵器廃絶についてのオバマ大統領の演説」  古谷順子

2009-10-05 | 時事問題
今までも何度か取り上げております、ニューヨーク在住の古谷順子さん主催の水曜会会報(2009年9月発行)の転載です。

このブログでも何度か取り上げてきました、「核問題」「密約」について4月のオバマ演説をフューチャーして、詳しく論じられています。
核に対して最たる危険分子は、北朝鮮で無く、明らかにアメリカなのです。
その大統領であるオバマ氏の世界に向けてのこの演説は、今後の動向如何ですが、先ずは評価に値します。
我が日本国でも、エコや環境問題についてはいろいろと採りだたされていますが、その際たる脅威である「核問題」については(原子力発電所問題含む)、マスメディアも及び腰で、核心を突くに至っていません。また国民も、「広島」、「長崎」を被っているにも拘らず、核の脅威に対しては大変鈍感に見えます。
遅まきながらの日本の新政権の鳩山首相の下記の発言を信じて、公約どおり成されるか注意深く、欺かれないように監視していきたいものです。

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「核兵器廃絶についてのオバマ大統領の演説」  古谷順子

オバマ氏はアメリカ大統領就任後間もない2009年4月5日、チェッコスロバキアの首都プラハで、核兵器廃絶をアメリカの政策にすることを明言しました。しかも、その演説では、世界でただ1国、アメリカが、2度の核兵器を使用したことに対して道義的責任(moral
responsibility)があることを認めて、これより核兵器廃絶のために世界的な運動での指導的役割を果たしていくべきというオバマ大統領の大きな決意は、世界と日本の大多数の人々から強い支持を得るとともに、深い感銘を呼び起こしました。

歴代の米政権は1945年8月の2度の原爆投下を正当化し、核兵器使用も辞さない政策を取り続けてきましたが、オバマ氏は始めて、広島、長崎への原爆投下と言う行為への道義的責任に言及したことは、当然の事とはいえ、「日本を救済するために2度の原爆を使用した」と言う意見がいまだ支配的なこの国で、平和、民主主義、正義を国つくりの基本にすえようとする一貫した彼の思想、行動の内容をうかがわせるものと受けとる事が出来ました。

前ブッシュ大統領が、核兵器の先制使用戦略さへ公にし、日本をはじめ、世界的な核廃絶勢力が進めてきている核廃絶の運動に対して一貫して妨害、排除を続けてきました。また前クリントン大統領は1995年4月、日本への原爆投下は正しかったので、米国は謝罪する必要はないとの考えを明らかにしました。オバマ氏の核政策は、これらの従前のこの国の指導者達のそれとは、極めて対照的な大転換と言えます。

オバマ氏はまたその演説の中で、「核廃絶は無理だ」と言う議論に対しては「生かしておけない敵」とまで言っている核廃絶への強い意欲と態度表明には心打たれる思いです。

かって私がこの街で学んでいた頃、一人の老練教授と核問題で話した時、「核廃絶なんてそんな難しい事が、一体実現できるものなのか」と、もう頭から問題にもしないという態度をあらわにした時の、自分が受けた深い衝撃「ああ、これがアメリカか、、」を今もつくづくと思い起こします。その時私は、全力を尽くす思いで、「今、どんなに無理でも、達成すべき目的をはっきりと掲げなければ、新しい事は何も起こる見込みもない」とだけ言うのが精一杯でした。時は「核の傘によって守られる」「核は必要悪」の議論全盛の頃でした。

その後、2007年1月と2008年1月に、以前この国の核戦略を進めるために指導的立場で活躍してきた4人、キッシンジャー元国務長官、シュルツ元国務長官、ペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長らがウオール.ストリート.ジャーナルに寄稿して、「核兵器のない世界に向けて」と呼びかけ、社会的な注目を浴びていた事は皆さんの記憶にも新しい事実です。
4人の昨年の論文では、北朝鮮とイランの核開発に加え、テロリストが核兵器を持つ危険があるもとで、核抑止力に依存する事は、「更に危険が増えまた有効でなくなっている」とし、核兵器廃絶のためには、「核保有国の指導者が核兵器のない世界と言う目標を共同の事業にすること」を提案しました。

更にこの論文では、テロリストが依然核兵器を持つ可能性を警戒し、更には、ゴルバチョフ元ソ連大統領、英国のベケット前外相が提言の趣旨に賛成した事を伝えました。

日本の政治家では、オバマ氏の重要なプラハ演説後、間もなく日本共産党の委員長志位和夫氏がオバマ氏に書簡を送り「核廃絶を国家の目標にしたオバマ氏の演説を心から歓迎する」と述べた後、オバマ氏から「あなたの核廃絶に対する情熱を嬉しく思う」という返書があったことが報道されました。

今年の8月には日本で総選挙があり、オバマ演説を契機にして核廃絶の運動が世界中で盛り上がる中、被爆国の日本政府が核廃絶に向けて、どのようにその指導力を示すかが問われた選挙でした。

しかし、上述以外に、日本のわずかな民間人や核廃絶の為に日常的に徹底して活動を継続している団体を除き、多くの情報機関も含めて、現役のどの政党の政治家からも、世界を揺るがすような反響を呼び起こしたオバマ演説にさえ、ただ沈黙、何の反応も示す事が出来ない鈍感さには、今だに年老いて、被爆に苦しみながら裁判闘争を続けている人々の痛みをどのように認識しているのかと、政治家としての責任感、更にその人間性をも疑われる思いです。

自民党政府はアメリカとの密約を隠すため、国会と国民をだまし続け、アメリカ政府が密約の文書を公開した後でさえ、「そんな文書は存在しない」と嘘の答弁し続けましたから、大量落選者を出した理由の1つもこの問題とつながっている事でしょう。

民主党は8月の選挙前、非核3原則を2原則に変更する(核をもたず、つくらず、もちこませずという3つを、もたず、つくらずの2つに減らして、事実上後退させる、即ち、アメリカの飛行機、軍艦には核兵器を積載させて自由に日本の国内へ持ち込みを許す、密約により、事実上、横須賀港には、年間の大部分、核兵器を積んだ軍艦が停泊継続している)と言う態度でしたが、国民の強い声に押されて、後日選挙終了後、鳩山由紀夫代表は「政権は密約問題を調査し、結果を国民に知らせる」「核を持ち込ませないよう米国と交渉し、承諾するまで説得する」と変更しました。

この核密約と非核3原則の実効性は新政権が取り組むべき大きな課題なので、この公約したことをどのように確実に実現するかという点から今後の成り行きには、国民の義務として政治家の日々の政治活動を監視するべきです。何故なら国民のこの義務は、民主主義を作る為の基本的情報を生み出すからです。



水曜会便り:

初秋の気配が感じられる頃になりましたが、いかがお過ごしですか。
9月例会は「動物の共生」と言うテーマで青木厚子さんが担当されます。
10月例会はコーエン達絵さん担当でご自分の治療体験「腎臓摘出手術をして」
のお話を予定しています。