中国家庭教会の牧師、王華生師を囲んで

[王華生師、沼野画]

今日６月４日、劉燕子さんが主宰する日中理解促進のサークルに、成都の牧師王華生師が招かれて話をした。冒頭、北京のもう一人の家庭教会の牧師王怡（イ）師が今朝当局に拘束されたことが知らされた。天安門事件が起きたこの６月４日、あの事件で命を失った若者たちを弔う行事など共産党政権にとって不穏な動きが生じないよう、連行したのであった。会の中で石平さんの音頭で事件に思いを致し、参会者約30名が黙祷を捧げた。

今日の会で私が気づいたのは、中国のキリスト教会を取り巻く状況が急速に変化していると思われることであった。中国政府公認の三自教会が近年、国の息がかかった上部組織に牧師任命権があること、説教に国の統治に協力するよう促す内容が顕著になっていること、儒教や中国伝来の思想を取り入れるよう求められるなど、三自系統の教会（「三自会」と王師は呼ぶ）の中国化が進んでいる、と王師は語った。

それに対し、政府非公認の家庭教会は、そのような上からの干渉を受けることなく、むしろ自分たちの方が純粋な意味で三自精神を実践している、と言う。三自教会のように政府からの援助を受けることがなく（自養）、共産党の伝言をするような面はなく（自伝）、家庭教会は教会運営からいえば、長老会のスタイルで運営している（自治）と述べた。時に地下教会と言われることがあるが、何か悪いことをしているわけではないので、むしろ地上教会と呼ばれるべきである、と言う。

王師の成都にある家庭教会は、都市型家庭教会であって、比較的歴史が浅く（11年）、当初数人であったのが、現在700人を越える規模になっている。教会員の構成は20代後半から30代後半（中国語で「80後」balinghou）が最も多く、知識層の比率が大で、地元の人より様々な地方出身の人が様々な動機から群れに加わっている。政治犯で拘束された人の家族を支援するとか、2008年四川大地震の時には参集したボランティアのため活動の拠点となったなど、公益のための事業に積極的に取り組んできた、と語った。

都市部と地方の違いや広大な中国における地域間の相違、牧師個人の特性がそれぞれ異なることから一概には言えないが、三自系統の教会に見られる傾向と家庭教会の新しい姿を垣間見る思いがした。務めてこの二つの教会の今後を観察していきたいと思っている。

参考
当ブログ 2014.06.04 「天安門事件を記念する詩二篇（転載）」

読み進めていきたい研究資料：
王怡、劉同蘇「観看中国城市家庭教会」基文社（台北）、2012年
于建「中国基督教家庭教会合法化研究」「戦略与管理」雑誌2010年第3/4期