編年的概観 (刊行物の掲載から)
1 1980代半ば以降、新世界のアメリカ先住民の
DNAに5つの主要なグループA, B, C, D, Xがあ
ることが発見される。
(「アメリンディアンのミトコンドリアDNAに劇
的発見及びその影響」アメリカ自然人類学会誌68,
no. 2 (1985年10月)、他 1990, 1996, 1998,
1999, 2001, 2002, 2003年に同様の研究発表が
専門誌に掲載される。分子構造データはアメリカ
先住民がシベリア/アジア系に起源を求めること
ができるという。)
2 2002年 トマス・W・マーフィー「レーマン
人の起源、系図、遺伝学」(ダン・ヴォーゲル他
編「アメリカの外典」2002, シグナチャー出版)。
古代イスラエル人とアメリカ先住民の間に遺伝子
的つながりはないと結論。
3 2002年12月8日ロサンゼルスタイムズ紙に
「DNAの試験をめぐりモルモンの科学者と教会が
衝突。人類学者、アメリカ先住民に関する教えに
疑いをはさんだことで破門か?」という記事が掲
載される。同日のシアトルポスト紙にもAP伝とし
て「モルモンの著述家、審問を無期延期に」とい
う記事が載る。(2006/2/16付にもLA Times に
同じ問題を扱った記事が掲載される。)
4 2003年。教会の研究者に二通りの見解。
(ダイアログ誌36:4 2003年冬季号、トマス・
マーフィ「モルモン書の背景をメソアメリカとす
る考えとDNAは相容れない」;ディーン・H・レヴ
ィット他「リーハイの子孫の探索:異なるモデル
の設定は遺伝子データをどのように説明し得るか」)
(注、モデルというのは新大陸のどの範囲に定住
したかという仮説。仮説によってはモルモン書の
史実性が成り立つのではないかと言う)。
5 2004年、サイモン・G・サザートン「失われた
支族を失う:アメリカ先住民、DNA、モルモン教会」
(シグナチャー出版)。
(サザートンはオーストラリア、キャンベラに
ある英連邦科学産業研究組織(CSIRO)の上級研究科
学者。専門は分子生物学。米先住民の99%以上がア
ジア人の子孫であると指摘。)
6 2004年ブレーク・T・オストラー、D・マイケル・
クイン、DNA研究に対してモルモン書が古代のもの
であると弁明。
(サンストーン誌、2004年12月、2005年3月、
5月)
7 2005年7月 元監督であったサイモン・G・サザ
ートン、破門される。
資料:ダイアログ誌2003年冬季号、サンストーン2005
年9月号 web上の諸サイト
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>D・マイケル・クイン、DNA研究に対して
>モルモン書が古代のものであると弁明。
これについて詳しく教えていただけませ
んでしょうか?
この一文からはマイケル・クインが
モルモン書は古代アメリカの真正の歴史
であると言ったかのような印象を受けて
しまうのですが・・・・
彼の異論は、研究者の論文からDNA調査で先住民の7%が北アフリカ/中東で採取されたDNAに符合する、という点に注目したものです。続いてグループXが全先住民の3%を占めるという別の論文もその可能性につながると見ているわけです。
クインの第二点は、聖書もBofMもよく読むと常に自分たち中心(or限定)の視野で書かれていて、(よほど必要に迫られないと他の民について書かない;tribal narratives)他者の存在が見えない、ということ、従ってBofMが扱う人々は小さい範囲のことであって、実際にBofMの民が存在した可能性を否定することはできない、というものです。
なお、サザートンは科学者の書き方でクインに反論しています。(もし必要でしたら二者の記事をコピーしてお送りします。)
>の7%が北アフリカ/中東で採取されたDNAに符合する、
>という点に注目したものです。
>従ってBofMが扱う人々は小さい範囲のことであって、
>実際にBofMの民が存在した可能性を否定することは
>できない、というものです。
なぜこんなことをクインが?と思ったのですが、
こういういかにもモルモンの御用学者(FARMS)たちが
言い出しそうな護教論を、彼らに先んじてクインが提示
したということに意味があると思います。
クインを破門したモルモン教団が、結局、彼を越える
護教論を示せないなら皮肉としてこれ以上のものは
ありません。
真実を探求する人は、その直向さゆえに厳しい批判者
であると同時に、最強の擁護者ともなり得るでしょう。
しかしそういう人たちが表れてくると教会幹部は困る
のです。そうした現実とその理由がモルモン教会の
問題の核心なのだと私は認識しています。
>(もし必要でしたら二者の記事をコピーしてお送りします。)
大変ありがたいです。
差し支えなければご送付いただけないでしょうか。
ぜひ読ませていただきたく思います。
有難うございます。
大変興味深く拝見しました。
クインが少年期から持っていたという視点(聖典は自分の部族
からの視点でのみ書かれており、必ずしも公正、全体的でない)
は、彼が歴史家として偉大な仕事をすることができた理由でしょう。
この視点自体は私も同意できます。
と言うか私も何によってそうなったのかは忘れましたが、同様の
考え方を聖書(特に旧約)に対して抱いています。
旧約聖書の「主が命じられた」とか「主が語られた」という部分は、
旧約の著者の自分本位な見解であると私は思っています。
なおモルモン書はJSの創作物だと認識しています。
クインはDNA研究の結果に対して、末日聖徒とその予言者の
伝統的な考え方(全てのネイティブ・アメリカ人はレーマン人の子孫)
が明らかに間違っているという証拠であると受け入れていますが、
その一方で、「モルモン書への反証と、モルモン書が歴史物かどうか
への反証は異なる」と言い出した理由は、結局私には不明です。
クイン自身は自分の研究結果によってモルモン書が真正の歴史では
あり得ないことを充分知っているはずだと思うからです。ひょっとして、
歴史に関する結論は歴史学者が下すべだという思いからでしょうか。
しかしクインはモルモン書が歴史物でないとは言えない可能性を
LDS教会の公式見解や一般的な末日聖徒の考えから見出す
ことはせず(できず)、自分の少年期からの視点に頼るということは
LDS教会の主張が限界に来ているのだと思いました。
いただいた2件の記事からはクインの主張はかなり言い訳がましい
印象を受けます。クインの本意はどうであれ、サザートンが、DNA
研究結果の意味することは、ネイティブ・アメリカ人の99.6%がアジア
からベーリング海を渡って14,000年前に来た子孫だと言うことであると、
クインの述べる可能性をあっさり否定したのを読んだとき、
真実を受け入れる厳しさと重要性をまた新たに思い知らされた気が
しました。しかし真実には、それを追究する者を魅了してやまない
輝きを持っていると私は思います。
よく読んでみると、小さな率でもBofMの登場人物が中東の古代人とつながる可能性がある、という数学的論理から発したものであろう、と私はみています。
これに対し、サザートンはさらに厳密にはそうは言えないと科学者として具体的に反駁したもので、今回こちらに分がありそうです。