2019年「LDS聖研グループ研究会」（東京高田馬場）報告

 [座談会の模様。実吉紹郎兄弟撮影。] 

　6月22日(土)午後開かれた研究会に十数名の人々が集まった。小規模な集まりであったが、参加者は発表に熱心に耳を傾け、質疑の時間も生かされて充実した会合であった。中でも今回初めて座談会の時間が設けられて、大変有意義であった。以下、順を追って報告したい。

 [列王下2:2. エリシャは「あなたを離れない」と三度言う]

　最初に川崎ワードの駄竹企美子姉妹が「預言者と人の死」と題して、列王下からエリヤ、エリシャの死（二人の預言者）とユダの王ヒゼキヤが祈りを聞かれ15年生き延びた話、子を亡くした母がエリシャに「あなたのもとを離れない」と懇願した逸話（人の死）を解説した。最後に死は召しである、という言葉を引いて結ばれた。彼女の発表は、霊的な信仰奨励（devotional）であり、新鮮な感動を聴衆に与えた。

　次に沼野治郎が「英語文献、ヘブライ語、ギリシャ語攻略の一歩」と題し、福音や聖典研究の道具として重要な英語の攻略法を、また二つの原語の概略を紹介した。私沼野は日本の末日聖徒が幾人かでもネット上の二言語併記版聖書(interlinear version)を活用してほしいと願っている。この方法を活用すると一気に聖書の専門家の土俵にあがることが可能だからである。複数のサイトがあるがその一つとして、https://biblehub.com/interlinear/　を紹介した。

  10分の休憩後、鈴木壮一郎兄弟が「新しい聖書を読む」と題して、2018年暮出版された「聖書協会共同訳」について口語訳、田川建三訳と比較しながら発表した。マルコ9, 10章の二カ所（「いちばん偉い者」、「子供を祝福する」の段落）で、「口語訳」で訳出されていた代名詞「あなたがたは」や接続詞「それから」などが姿を消し、「十二弟子」が「十二人」となっていることが指摘された。（分量では若干短くなっている印象を受ける。数％から十数％。沼野。）田川の訳はやや不自然でも原文を反映させた研究者向けということになる。

発表者は沼野に、新しい訳に対して辛口の評が耳に入っている、と語った。

発表者利用のInterlinear site・・www.scripture4all.org 　

　続いて洗足池ワード所属の小沼政弘兄弟が「萌芽。芽を見て花を感じ、花を見て実を感じる信仰」と題して話した。キリスト教はギリシャ、ヘレニズムを経て、論理性や秩序を求めるようになっている（ロゴス的）。ここに問題がある。むしろ動的で、ベクトルの形で推し進められるヘブライの姿（創造の働きが進行する、衝動に駆られて預言者が活動したなど）に注目したい、と持論を展開した。成長、拡大という形態（mode）に目をとめたい、と言う。西洋も内面の充実を求めて、仏教に魅力を感じ始めていると述べた。

[左がギリシャ的、右がヘブライ的]

　最後に座談会。円形に机の配置を変え、鈴木兄弟の司会のもとに全員が参加した。圧巻と呼べる時間であった。キリスト教全般が世界でも日本でも後退しつつあり、日本の末日聖徒も減少傾向が明らかで、この危機を克服するにはエネルギーが必要とされる。次のような意見が出された。

・オリジナルな心（ハート）を持つ日本人の会員が欠かせない、広くアジアの末日聖徒の群れが構築されればと思う、

・一目置かれる存在にならないと生き残れない（個人、共同体とも）

・この座談会のように本音で語り合える場が必要、

・昇栄後の自分は幸せか考えて生きたい（信仰実践、社会・教会で役割を果たす上で）。

など多数の、また本質をついた本音の発言が続いた。水準の高い、熱意あふれる人々の集まりであった。

　なお、来年は大阪で開く案が出ていると発表された。