29 日米関係 -222- 《戦後》Ⅺ 占領期(1945-52)-56-
■まとめと考察 ⑻主権回復 5/n
~考察と評価3/n(一部評価)~
1 「締結した米国の意図・動機・理由」の描き方を評価する
⑴ 各社はどう描いているのか。 → 前々回:656
⑵ 「締結した米国の意図・動機・理由」は、なんだろうか? ~学び舎以外の7社の内容を検討する~ → 前回:657
7社とも、ほとんどの中学生が、締結以前の米日関係の状況を理解しているという前提に立てば(=文脈的読みができていれば)、その描き方は合格と言えるだろう。だが、読解力が未熟な(一部の)中学生がいることを前提にすれば、そうは言えない。
⑶ 7社の表現は、妥当・適切か?
・合格基準を、《9割以上の中学生が、自力で、「① ソ連(東側陣営、共産主義勢力)との冷戦構造のなかで、日本を有力な味方にするため。あるいは、有力な手下にするため。」という意味合いの読解ができる》と定める。
【育鵬社】 当該文には「締結した米国の意図・動機・理由」は無記なので、同じ項目内の一つ前の段落の「…日本を西側陣営の一員として復興させる方向に変化しました」という表現を手がかりに、ほとんどの中学生は文脈読みができるだろう。 → 〇
【自由社】 当該文に「基地の存続などを条件に」と書いている。この内容は①のなかの軍事的理由の中の一部しか表現していない。また、「など」は文脈読みで探す必要があるが、それは、前ページの、2つも前の別の項目の「冷戦が始まると、アメリカは東アジアの共産主義に対する防壁として日本を位置づけた。そのため、自由主義陣営の一員として、日本の経済発展をおさえる政策から推進させる方針に切りかえた」という部分を手がかりにする必要がある。 → △
※A:当該文の中で「意図・動機・理由」を書くのならば、〝妥当性が最大の理由” を書かなければ、多くの中学生は、書かれている言葉(内容)だけを「意図・動機・理由」だと読解して、誤解するだろう。≒文脈読みはしないだろう。
【東京書籍】「占領の長期化が反米感情を高めることをおそれた」という表現は、ほとんどの中学生の誤解を招く。上記「※A」に同じ。 → ✖
【帝国書院】 当該文には「締結した米国の意図・動機・理由」は無記であるのに、文脈読みは困難。 → ✖
【教育出版】 当該文の内容が「東アジアでの日本の役割を重んじ」と、あいまい。上記「※A」に同じ。かつ、「アジアの共産主義に対抗する勢力に育てるために」という最大妥当な理由が、2ページも前にしか書いてないので、文脈読みはかなり難しいだろう。 → △
【日本文教】 当該文の内容が、「アジアの緊張が高まると」と、とてもあいまい。上記「※A」に同じ。1頁前(p258)の「占領政策の変化」の項に、「日本に対して、共産主義の広がりをくいとめる役割を期待するようになりました。」と書いているが、別項でかつ1頁前なので、文脈読みはあまり期待できないようだ。 → △
【清水書院】 当該文には「締結した米国の意図・動機・理由」は無記なので、中学生は文脈読みをする必要がある。別項だが、前ページに「日本を共産主義に対抗できる資本主義国にしようと…」とあるので、どうにか文脈読みができるだろう。 → 〇
各社がすっきりと描いていないので、とてもめんどうな評価になりました。このような場合は、《ア.複雑になっても、該当文の中で妥当な表現をする》か、《イ.本文のなかの文脈読みで描く》か、《ウ.コラムや「注釈」を使う》かのどれかだと思います。実際は、アは無し、イは育鵬社、清水書院が採用、ウは無し、となっています。
あなただったら、どう評価しますか?
~次回、6/n:「非締結国」の描き方~
<全リンク⇒1へ> <占領期 ⑹植民地648・649・650・⑺占領政策転換651・652・653・⑻主権回復654・655・656・657・658・>
《著者:松永正紀 教育評論家 /h22年度 唐津市・玄海町:小中学校校長会長》
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