のそのそ日記

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多様性の科学

2022-11-05 09:51:40 | 読書

半年前に図書館で予約していた本が届いたので読みました、「多様性の科学」マシュー・サイド著。とても読みやすくておもしろかった。
ヒトの社会において思ってたより重要な多様性、コミュニケーションが産むものの大切さ、エコーチェンバーから考えるバイアスのつきかたほぐしかた、「平均値」を人間個人に当てはめる不合理、などの問題が、911以前のCIAやWW2のイギリス・ブレッチリーパーク、エベレストの登山家、白人至上主義活動家、ダイエット情報の謎などの具体例などと並べて解きほぐされてます。
日本でも数年前に「忖度」って言葉がはやったけど、あれも不均衡なコミュニケーションが硬質化した異常な環境の問題としてあらわになった点だったね。(あの頃はまだ政治家が、秘書が部下が勝手にやったと言い訳してたから判った事だけど、今は問題が発覚しても「何か不満でも?」と居直って終わりなので忖度すら見えなくなった)

こういう組織論本では当然なんだけど、トップの人間のふるまい、船長の視野で如何に行動するかという話がまとめられてるんだけど、個人的に私は誰かを指南することも意見をとりまとめることもない立場の人間です。「異なるジャンルの優れた能力の人を集める必要」はそのとおりだと思うのだけど、優れた能力をもたない、でも差別や偏見に対してどうふるまうかの意見を探すのは大変なのね。唯一白人至上主義者の大学生に対して友人がとった行動が例になっているけれど、これはお互いの合意の上で動き出した効果だったしな。

それから「多様性を排除した結果の不具合」を語る上で、差別の問題はどうしても避けて通れないものだけど、なんとなく女性差別に対しての熱のなさが目についてしまった。本の中で2箇所、それについて語られているけれど「人類の半分の意見が排除された事は男性社会にとっても損失」とか「政治の現場にいるのが男性なので、公共福祉の対象に女性が含まれなかったのはそもそも見えなかったから」で悪意はなかったと繰り返しているのは、加害者の範囲があまりに広範なため、ちょっとソフトに伝えようって姿勢で残念。本も商売なのはわかってるけど。
ホワイトウォッシュの問題が自覚された後のCIAの変革についても、問題に対して行動したのが少数派の黒人女性とかムスリムのスタッフってあたりも「まだあんまり変わってないんだね…」と思った。
よくドラマや映画では、CIAやFBIの現場にはいろんな人種や性別のキャラが揃ってるけど、あれはかくあるべしってドラマの仕様だから真に受けちゃだめか!と思い起こさせてくれる本でした。

各章が「エピソード・データの取り方見方についての説明・エピソードとそのデータをすり合わせた考察」って構成になっているのがとても飲み込みやすい書き方だなと思いました。

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