起業会計

公認会計士による仙台TEOの起業支援活動、会計トピック、監査トピックの解説

ウォークスルーとは

2006-03-24 00:39:07 | 監査
ウォークスルーといえば、従来は一つの取引を取引の開始から財務諸表に反映されるまで追いかけて、証憑と記録を照合し、業務フローを把握する手続と言われてきました。(*1)

(ただ、ウォークスルーについてはっきりと書かれている文献をあまり知らないので、単なるローカル・ルールなのかもしれません)

簡単な仕入の例でいえば、次の通りです。
ある一つの商品について、見積依頼→発注→納品→支払 というフローを次のような証憑と記録を追跡します。

見積書、発注書(控)、注文請書、納品書、請求書、仕入伝票、総勘定元帳(仕入・買掛金)、支払依頼書、振込明細、当座勘定照合表、伝票、総勘定元帳(買掛金・現金)



しかし、コントロールテスト(*2)の実務が定着してきて、代表的なフロー(*3)だけでなくもう少し細かなフローも見るようになってきて、一つの取引にこだわる必要がないのではないか?と考えるようになって来ました(実は昔からそうかもしれませんが)。

つまり、ウォークスルーの肝は、デザインされた(*4)業務フローやコントロールが実際にデザインどおりに運用されていること(cf.有効に運用されているかは運用テスト(*5)で評価します)を理解することにありますから、一つの取引にこだわる必要はないわけです。
ウォークスルーの趣旨からすれば、全ての業務フローやコントロールを網羅的に理解すれば、一つの取引ではなくバラバラな取引を検証しても良いことになります。


最近公表されたQ&Aの公開草案でも、このような理解でいいのかなと思っています。
最近は内部統制を重視する監査になってきて、ますますウォークスルーの重要性が高くなってきています。


・・・最近監査の公表資料が多すぎます。ちなみにこの公開草案は57ページあります。




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(*1)
昔から会計監査を行う際に、ウォークスルーは内部統制の状況を把握するために実施してきましたが、最近は、「内部統制の有効性の評価」に注目が集まるようになったため、ウォークスルーは必須の手続とされ、さらに深く実施するようになって来ました。

(*2)
ここでは、内部統制の有効性を確かめる手続のことを言っています。

(*3)
「業務フロー」という言葉のほか、「業務プロセス」とか「取引サイクル」と言ったりもします。厳密にはこれらの用語は意味が異なるのかも知れませんが、実務上はほとんど同じ意味で使っています。
代表的な業務フローには、「購買プロセス」、「販売プロセス」、「原価計算プロセス」、「人事プロセス」、「財務プロセス」、「財務報告プロセス」などがあります。

(*4)
効率的かつ正確に業務を行うため、業務の流れは「規程」や「マニュアル」、「フローチャート」などに書かれていることが多いです。
このようにあらかじめ業務や統制を文書化しておくことを「デザインする」と言ったりします(簡単にいえば)。

(*5)
運用テストは、コントロールテストと言ったりもします。
たとえば、商品を仕入れる際に担当者は、発注書を作成し、上司の承認を受けるとします。この際、「上司の承認」というのは、コントロール(内部統制)の一つです。この「上司の承認」がなければ、過剰発注を行い売れない商品が倉庫に溢れてしまう可能性があります(あくまで可能性です)。
したがって、このコントロールに重要性があれば、このコントロールの有効性をテストすることになります。
具体的には、発注書を何十枚かサンプルで抜き出し、上司の承認があるかどうか確かめることになります。
証認印があればコントロールは有効、無ければ有効でないことになります。
コントロールが有効でない場合には、売れない商品が倉庫に溢れている可能性があるので、監査上は、滞留在庫があるか(評価は適切に行われているか)念入りにチェックすることになります。


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IT 委員会報告第3号「財務諸表監査における情報技術(IT)を利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」Q&A(公開草案)


ウォークスルーとは、財務報告目的の情報システムにおける取引の開始から財務諸表までを追跡することをいいます(監査基準委員会報告書第29号)。

監査人はウォークスルーを通じて下記の事象を確かめます。
・プロセスと取引及びそれに関連する情報の流れに関する監査人の理解が正しいこと。
 取引の流れには、取引の開始、承認、記録、処理、報告が含まれます。
・不正の防止または発見を含む財務報告にかかる内部統制のすべての構成要素における統制のデザインについての監査人の理解が正しいこと。
・有効にデザインされた統制が、実際に業務に適用されていること。

ウォークスルーを実施するに際しては、例えば、以下の手続を実施します。
・担当者への質問
・内部統制の整備・運用状況の観察
・内部統制のデザイン・運用を行うために作成された書類の閲覧
・証憑書類と会計記録の照合等

ウォークスルーを実施する際に、プロセス自体がIT化されているような場合には、ITの業務処理統制と全般統制もウォークスルーの実施対象になります。
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