起業会計

公認会計士による仙台TEOの起業支援活動、会計トピック、監査トピックの解説

サンプリングによる試査 その2

2005-03-26 22:10:33 | 監査
前回の続きです。


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売掛金の実在性を検証したい(架空計上されている売掛金がないか検証したい)場合を想定します。
得意先が10,000件、全部で100億円の金額が計上されているとします。
売掛金の実在性を検証するため、サンプルをして確認状を発送することとします。
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今回は、サンプリングによる試査で何を行おうとしているかについて、解説してみようと思います。

前回、これは、売掛金全体に、

①「重要性の基準値を超える間違いがある」
②「思ったとおりの少額の間違いしかない」

のどちらが正しいかを検証することにあると書きました。
このことを理解するためには、統計について若干理解しておく必要があります。

簡単な事例を紹介してみようと思います。
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ネジ工場で、ネジの出荷をしているとします。
1箱に1万個入れてあるとします。
1級品は1万個につき10個、2級品は1万個につき500個傷がついているとします(使用上の問題はないものとします)。
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通常は1級品と2級品を区別するために箱にラベルを貼ってあるのですが、ラベルの貼っていない箱があったとします。
この箱が1級品か2級品か見分けるためにサンプリングで調査をしようと思います。
さて、何個サンプルすればよいでしょうか?

100個サンプルした場合、1級品なら0~1個、2級品なら5個ぐらい傷物があるはずです。
つまり、1級品と2級品はサンプリングで区別することは可能です。


これを監査に当てはめてみると、どうなるでしょうか?
1級品は、②「少額の間違い」
2級品は、①「重要性の基準値を超える間違い」
に例えることができます。

実は統計学的には、「1級品か2級品かを見分ける」よりも、「2級品でない」ことを見分ける方がサンプル数が少なくてすみます。
したがって、2級品でないことを見分けることとします。

監査的には、
①「重要性の基準値を超える間違い」のことを許容誤謬額(率)、
②「思ったとおりの少額の間違い」のことを予想誤謬額(率)といいます。


つまり、サンプリングの目的は、許容誤謬額を超える間違いがあるかどうかを検証することにあります。
その基本となる考え方は、売掛金に発生している間違いは「許容誤謬額」なのか「予想誤謬額」なのかを見分けること、
正確には、「許容誤謬額」であるのかないのかを見分けることにあります。

出張 総括

2005-03-26 09:44:22 | Weblog
来週から、また東京出張です。今回は3日間。

そろそろ1年の締めですから、この1年を総括してみることにしました。
公認会計士って意外に出張が多いんですね。
思い起こしてみると、今年度は、特に出張が多かったと思います。

東京にいた頃は、月に1回出張があるかどうかという感じでしたが、仙台に来たとたん、出張が増えました。
仙台では、月のほとんど出張に行っている月もあれば、最低でも2回ぐらい出張です。
私が良く行くのは、東京、秋田、青森、岩手、熊本といったところでしょうか。
去年の後半と・今年の前半は、クライアントの関係で熊本出張がかなり多く、このごろは東京出張が多いです。

地方の会計士は出張が多いなあというのが、感想です。
クライアントが東北1円にあったり、支店などにも行かないと行けないので当たり前なんですけど。

海外にも行ったりします。
このごろは海外にも子会社が多いからです。

今年は海外出張の当たり年で、ドイツ・タイ・ベトナム・アメリカ(サンディエゴ・インディアナポリス)・メキシコと盛りだくさんでした。
東京では、グローバル展開している会社が多い部門にいたのですが、一度も海外出張はありませんでした。
仙台に来てから海外が多いというのも不思議な感じがします。

4月からも長期出張が続きますが、何とか乗り切っていこうと思います。

サンプリングによる試査 その1

2005-03-26 01:41:37 | 監査
公認会計士が行っている監査は、原則として試査を行っています。
試査というのは、母集団からサンプルを抽出して、そのサンプルの検証を行い、母集団の性質を推定する監査の手法のことです。

つまり、売掛金の実在性を検証したい(架空計上されている売掛金がないか検証したい)場合を想定します。
たとえば、得意先が10,000件、全部で100億円の金額が計上されていた場合、どのような手続きをとったらいいでしょうか?

売掛金の実在性を検証する際には、通常は確認という手続きを行います。
「確認」とは、確認状という文書を得意先に発送し、計上金額があっているかどうか記載してもらう手続きです。
ただし、すべての得意先に確認状を発送することは、コストもかかりますし、手間もかかります。(10,000件も送るのは大変です!)
そこで、試査の出番になります。


実は、監査というものには、「重要性」という概念があります。
つまり、監査は、「1円でも間違いがあってはいけない」とか「すべての間違いを発見する」ということは前提にしていません。
監査は、「投資家の判断を誤らせない程度の金額に誤りがあっても問題なし」と判断しています。また、「投資家の判断を誤らせない程度の金額を発見すること」を前提にしていません。
つまりは、「投資家の判断を誤らせる間違いはありません」ということを保証しているに過ぎません。

この「投資家の判断を誤らせない程度の金額」のことを「重要性の基準値」といいます。


先ほどの売掛金の例での「重要性の基準値」を10億円としますと、売掛金100億円のうち、5億円は間違ってもいいことになります。
つまりは、「売掛金の実在性」という観点からは、95億円計上されていれば問題ないことになります。
(例えは、売上が5,000億円ある会社にとって、5億円翌期に返品されたとしても大きな間違いとはいえません。)

このように、監査では、「重要性」とう概念があるので、すべての項目を検証するのではなく、その一部を検証することで、監査の目的が達成できるのです。


もう一つ、サンプリングによる試査を行うにあたって、理解しなければならないことがあります。
それは、サンプリングによる試査で何を行おうとしているかです。

実は、これは、売掛金全体に、①「重要性の基準値を超える間違いがある」のか、②「思ったとおりの少額の間違いしかない」のどちらが正しいかを検証することにあります。(*)

簡単にいえば、「サンプリングによる試査は、重要性の基準値を超える間違いがないことを検証する手続」ということになります。


この続きは次回に。。。  特に(*)を中心に。。。。