起業会計

公認会計士による仙台TEOの起業支援活動、会計トピック、監査トピックの解説

資産負債アプローチ

2005-03-02 00:03:34 | 会計
利益の認識をいつ行うかというのは、会社にとって非常に重要なことです。
通常、売上は実現主義で認識するとされていますが、この実現概念による収益の認識が変わろうとしています。


収益の認識をいつ行うかについては、資産負債アプローチによる考え方と収益費用アプローチによる考え方があります。
「資産負債アプローチ」では、資産・負債の変動によって収益が定義されます。
一方、「収益費用アプローチ」では、実現と稼得過程の終了によって収益が定義されます。

収益費用アプローチでは、財貨・役務の提供と現金等価物獲得によって収益を認識します。つまり、商品の販売時(製品の出荷時)に売上を認識します。
これに対して、資産負債アプローチでは、契約時点(出荷前でも)でも純資産が増加していれば収益を認識することになります。


資産負債アプローチでは、予約販売は次のように考えます。
たとえば、100で商品販売契約を締結し、前受金を受取った場合(仕入値は60)を考えてみます。

この取引で負っている義務には、2つの考え方があります。
①商品が仕入れられなかった場合、前受金100を返還する義務を負う。
②60の商品を仕入れる義務を負う。

この取引で負っている義務を①とみる考え方を「顧客対価額」、②とみる考え方を「法的解放金額」といいます。

②の考え方を採る場合、現金を100受取ったのに対して、義務が60ですから、純資産が40増加します。
資産負債アプローチでは、この純資産40の増加を収益として認識します。


それでは、資産負債アプローチが採用される理由は何でしょうか?その理由には以下のものがあると言われています。
①契約内容が複雑で、契約内容が、製品の引渡し・製品の据付作業・製品の保証等のいくつかの段階で成り立っている場合に、実現・稼得過程の終了がいつ生じたのかを判断することが困難である。
②すべての業種で画一的に実現・稼得過程の終了を定義することは困難である。



もう一つ、資産負債アプローチで、履行義務を「顧客対価額」とみるか「法的解放金額」とみるかについて考えてみたいと思います。

といっても、現在のところ、IASB・FASBでは「法的解放金額」で測定することが暫定的に合意されているという段階ですので、明確にどちらを採用するという明示はありません。
ここまで理解できていれば、一応最新の知識は得られるというところで、ご容赦いただきたいと思います。


PS 最近監査を行う際に、監査要点(アサーション)として「権利・義務」が重視されてきているのを感じるのは、収益の認識で「権利・義務」が重要になってきているからですね。
今までは、収益は、モノを出荷しているかどうかが重要で、権利・義務は重視されていなかったのですが、これからは重要になってきそうです。


*この記事は分かりやすく書くことを目的にしていますので、用語を正確には使っていないことをご了承ください。
**参考 経営財務No.2705 IASBの活動の成果と2005年の展望について
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