アーーーアアアーーーアアーーーーアーーーアアアーーーアアアーーーーー
（「遥かなる大地」ｂｙさだまさし）拝啓 父さん ほたる
元気ですか？
新潟はついに湯沢の方で雪マークが出ました。
寒い日が続きますが元気ですか？
僕が働く農園ビギンで新工場への引っ越しがあったよ。
ついにできたんだ。
高速からも見える、この新工場を父さんに見せたいよ。
さつまいもプリンって9年前から始まっていたって知ってるかい？
Ｒさんが長男をおんぶしていた時から始まったんだって・・・
そんな話を
僕は金次郎の白ねぎみそラーメンを食べながら聞いていたわけで・・・
社長は
「ビギンのネギを食べずにどうする？
金次郎と言ったら赤ネギ味噌ラーメンだ！！！！
でも
そのスープ一口くれ！」
と言われたわけで・・・
普通の白みそを食べていたＲさんは「白みそおいしーーーーい。あ、でも赤味噌もおいしーーーーーい」
と
絶対グルメレポーターにはなれないようなコメントを繰り返していたわけで・・・
9年前って言ったら
Ｓさんは高校生なんだと想像し、にやけてしまったわけで・・・
総勢9人で食べる金次郎のラーメンは寒い日には体の芯まであったまって
「北の国から’94夏」でのラーメン屋でのシーン
「子供が食ってる途中でしょうが！！！！！」
の名台詞が蘇ってきたわけで・・・
たくさんの荷物を運びだしたよ。
尊敬するＳさんはフォークリフトで冷凍庫を運んでいたんだ。
「ちっ・・・オレが何で冷凍庫を運ばなきゃいけないんだ！
オレはさつまいもを運ぶために存在してるのに！！！」
と
その背中を見ながら、勝手に妄想したり
このでかい作業台を運んでいるＳさんが
落して
コンクリに傷をつけたのを目撃してしまったり
階段狭いですね、っていってＲさんに睨まれたり
ピンクのエプロンをしたＳさんを本気で笑いそうになってしまったり
引っ越しって
いろいろあるんですね・・・
ほたる
しばらく会っていないけど、背も伸びたかい？
チビだとからかっていた父さんの気持ちが、今ぼくには少しだけわかる気がするよ。
僕がここでやった生活は、明らかに今までとは違った暮らしで
たとえば物が何もなくても、何とか工夫して暮らすンだということ・・・
そういうビギンのみなさんを見てすこしわかったこと・・・
それが、わかるように僕が変わってきたこと。
そして・・・
時がたてば
先輩もからかっていいんだということ・・・
父さん
だから言ってやったんだよ
大きなものを運ぶ時Ｒさんって・・・
「小さくて全然役に立っていませんよ？」って
ぼく──。
やっぱりもうすぐ、雪国へ帰ります。
父さんと約束したからじゃありません。
裏切ることになるからじゃありません。
なぜだかわからない。
説明できない。
いや、あえて言うなら・・・
僕のブラックな本性がばれつつあるから・・・
いよいよもうすぐ引っ越し完了です。
最後に言っていいですか？
’94北の国からって
僕、5歳なんで覚えてないですけど？
雪国に帰ります・・・ってここも雪国です。
