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読書、映像・音楽の鑑賞の記録など

書籍の責任販売制のことなど

2009-07-20 16:58:52 | その他

 書店に足を運ぶ愉しみとは、実際にさまざまな本を手にとってみることはいうまでもなく、何より目当ての本の近くにたまたまあった思わぬ本との出会いにあると思っている。そしてもともと入る気はなかった書店に何かに招きよせられるように入っていって、そこであたかも最初からそれに出会うことになっていたのだという直感とともに一冊の本を手にしてしまう体験-本に呼ばれる体験-もそれに付け加えられるだろう。しかし、そうした愉しみを味わえる書店も少なくなってきた。

 先月筑摩書房、中央公論新社、河出書房新社、平凡社など出版社が書店の利益確保と返品率の改善を目指し、現行の「委託販売制」に代わり、(当面は一部の本についての適用となるようだが)「責任販売制」を導入すると発表していた。ポイントは、

  1 配本については、書店側の事前の注文が優先され、書店側のマージンを引き上げる。
  2 出版社側は返品時に仕入れ値と同額での引き取りはしない。

の2点のようだが、『産経新聞』の記事が伝えるところによれば、それによって出版社側は、

  1 出版社は返品時のコスト低減につながり、出版計画の見通しが立てやすくなる
  2 書店はマージンが増えるほか、事前の注文が優先されて新刊部数が確保しやすい
  3 販売会社には返品の減少による業務のスリム化ができる
  4 読者は、書店からの注文が事前に見込めることで出版社の復刊企画につながり、入手困難な書籍の購入機会が増える

といった4つのメリットがあると強調しているという。しかし、仮に書店側のマージンを35%に引き上げたとして、返品率が現在の40%ほどで推移すれば、書店側にとっては不利になるのではなかろうか。したがって、2点目については書店側が適切な発注数を読めるかどうかが鍵だろう。しかし、多くの書店は読み誤った挙句、本をバーゲンにして売りさばくくらいなら、最初からリスクを回避する方向を選ぶ可能性が高いのではないかと思う。その帰結として4点目とは裏腹にいわゆる「固い本」がますます手に入りづらくなる可能性もある。もともと、筑摩書房や平凡社から出ている本は、いまや小・中規模の、いわゆる「町の本屋」では置いていないことのほうが多い。そのうえジュンク堂のような大型書店ですら、入荷数が抑えられることになれば、ということだ。杞憂に過ぎなければよいのだけれど。

 参照URL
  http://book.asahi.com/news/TKY200906210201.html
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090706-00000588-san-soci    
 
 

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