新刊情報を見逃していた二冊。
『マラルメ全集 I詩・イジチュール』(松室三郎他編、筑摩書房、2010.5)
筑摩書房の『マラルメ全集』が5月に完結した。最初の配本が1989年。もともと定期購読の形をとっていたが、転勤や書店の閉店を繰り返し、第4回配本までは異なる書店で購入している。今度の第5回配本は前回配本から9年経ったせいか、書店の方で定期を切ってしまっていた。新たに注文しなくてはならない。やれやれ。
最終回配本は第1巻。詩と「イジチュール」、「賽の一振り」、「エロディアード」、「半獣神の午後」など本編と解題・訳注の二分冊となっていた。
第4回配本まで書架に並んでいるのを見ると、最初の方の配本のものは、帯が褪色しているのがわかる。完結まで20年余りの時がかかったが、訳出の労苦を考えれば、致し方ないだろう。掛け値なしに海外文学の翻訳史上の偉業ではあるのだから。
ところでマラルメで思い出したのだが、筑摩書房はかつてモーリス・ブランショの翻訳をいくつか予告していた。『踏みはずし』の新訳と『来るべき書物』の改訳までは出た。が、豊崎光一氏が亡くなられて計画が頓挫したのかも知れない。何とか後を引き継ぐ人が現れてほしいと思う。
フランセス・イエイツ『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』(前野佳彦訳、工作舎、2010.5)
学生の頃、フランセス・イエイツの主著といえば、『記憶術』、『世界劇場』、『薔薇十字の覚醒』と並んで本書が挙げられ、ルネサンスにおけるヘルメス教(ヘルメス主義)の復興と終焉を論じた本書の翻訳刊行もその当時から予告されていたように思う。
ウォーバーグ(ヴァールブルク)研究所とイエイツのことをもっとも早く日本に紹介したのは山口昌男の『本の神話学』だったろうか。それより少し遅れて、『遊』時代の松岡正剛がイエイツにインタビューしていて、そこでロンドン大学のウォーバーグ(ヴァールブルク)研究所の図書館の魅力について嬉々として語るこの碩学に興味を持ったのだった。その『遊』の版元であった工作舎から今回の翻訳がなされたことも感慨深い。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます