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2010年の個人的な流行 1 / ピエロ・パオロ・パゾリーニの作品

2011-01-10 22:54:09 | 映画


 もともとパゾリーニはあまり好きな監督ではなかった。ずっと以前、高校生の頃に観た印象では、カットのつながりがぶっきらぼうで、ともすればカット同士がつながっていないという印象で、「下手な」監督だと思ったからだ。

 ただ「奇跡の丘」についてはキリストの生涯と受難を描いた映画としてはもっとも好きな映画だった。「マタイによる福音書」の叙述に沿って、あっけらかんと撮っているのが好ましかった。一昨年の暮れにDVDで観直して、カラヴァッジオの絵から抜け出してきたかのように感じる人物の風貌と、荒涼とした風景に無性に心惹かれた。アガンベンがキリストの弟子役で出演していたことは知っていたが(アガンベンの画像検索をすると、この映画の画像がヒットしたので)、ナタリア・ギンズブルグも出演していたことを今回はじめて知った。

 「奇跡の丘」を興味深く観た勢いで、昨年一年間に60年代のパゾリーニ作品のDVDを三本も買ってしまった。

 「アポロンの地獄」は、プロローグとエピローグは現代のイタリアを舞台としており、現代と古代を往還しながら、ソフォクレスの悲劇をフロイト的に再解釈したもの。こちらも「奇跡の丘」同様に、叙事詩的な語り口といえばよいのだろうか。「王女メディア」はマリア・カラスが唯一映画女優として主演した一本としても知られる。エウリピデスの悲劇をこれも供犠というモチーフを前面に出して再構成した作品。これらにおいても、やはり荒野の風景が素晴らしい。ただ、カッパドキアでのロケでは、岩窟の住居の内装をいじるという、今では考えられない恐ろしいことも行っている。(ギョレメ国立公園およびカッパドキアの岩石遺跡群がユネスコの世界遺産として登録されたのは1985年だが。)

 もう一本、現代劇の「テオレマ」も購入。現代イタリアのブルジョワ家庭を舞台とした聖と俗をめぐる寓話といった趣。パゾリーニ作品としては、もっとも豪華な配役だが、中でも家政婦役のラウラ・ベッティが印象的。そういえば、この人、ベルトルッチ(パゾリーニの助監督として映画界に入った人だ)の「1900年」で、ドナルド・サザーランドとともに恐ろしい人物を演じていた。そして、都会を舞台としているにも関わらず、こちらにも荒涼とした大地が登場する。

 さらに勢いに任せて買ってしまったのが以下のCD。パゾリーニ映画への応答といった意味で付けられたタイトルなのだろう。ライナー・ノーツにも「奇跡の丘」や「デカメロン」のスティルがあしらわれている。

  Stefano Battaglia / Re: Pasolini (ECM )
   Stefano Battaglia ( piano, prepared piano ),
   Michael Gassmann (trumpet), Mirco Mariottini ( clarinets )
   Aya Shimura ( cello ), Salvatore Maiore (bass ),
   Roberto Dani ( drums )
   Dominique Pifarely ( violin ), Vincent Courtois ( cello )
   Bruno Chevillon ( double-bass ), Michele Rabbia ( percussion )

 二枚組みで、一枚目は哀愁を帯びた美しい旋律、二枚目はアブストラクトなインプロヴィゼーションを中心に、最後は叙情的な” "Pasolini”という曲で締めくくられる。Gassmann以下、DaniまでがCD1のメンバー、残りはCD2で演奏している。一曲を除いて、Stefano Battagliaの作曲。”Teorema”、”Callas”などいう曲に加えて、パゾリーニ映画でお馴染みの俳優の名を冠した”Canzone di Laura Betti”、”Totò e Ninetto”といったタイトルの曲もある。



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