さくらんひめ東文章

指折って駄句をひねって夜が明けて

通し狂言国性爺合戦

2010年11月26日 | 歌舞伎座以外の歌舞伎
昨日は黙阿弥の千穐楽で、今日は近松の千穐楽。

国立劇場で「通し狂言国性爺合戦」を拝見した。

今回の歌舞伎検定の問題にもあったが、近松の時代浄瑠璃の最高傑作といわれ、
正徳5年初演されたものが大ヒットして、翌年すぐに歌舞伎として京・大阪で上演されたそうであるが、
大明御殿や獅子ケ城のエキゾチックさと千里ケ竹の虎との格闘など、江戸時代の人々が魅了されたのも肯ける。

團十郎丈の20年ぶりの和藤内、藤十郎丈の37年ぶりの錦祥女。

いろいろとご心労が増えてしまった団十郎丈であるが、
和藤内の隈どりも1本隈も二本隈も実にお似合いで、
大きくて立派でやはり荒事の宗家の風格を感じた。
大向こうから「待ってましたぁ!」「たっぷり!」などと沢山声が掛かっていた。

藤十郎丈の錦祥女も品格と、孝行の情がにじみ出ていて素晴らしかった。

梅玉丈の甘輝と東蔵丈の和藤内母渚も実に良かった。

芝居の中で、御殿の官女たちが、母渚の着物などが可笑しいと笑う場面があるが、
当時の江戸の人々も唐土の風俗がさぞ面白く思ったことであろう。
和藤内が官人たちの月代を剃ってしまうのもきっと大笑いで観ていたことだろう。
現在でも千里ケ竹の虎が出てくると場内が沸く(笑)
たぶんこの時代では、本物の虎もみたことないはずであるから、
虎さんもきっと興行中は大の人気者であったのだろう。

ビジュアルもスペクタクルな要素も盛りだくさんであるが、
近松が描きたかったのは、勇者たちの影に犠牲となる母や妻たちなのかな?
とも思った。