旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

Premium Sake Pub GASHUE × 北信流

2023-11-02 | 日記・エッセイ・コラム

金紋錦(長野県産酒造好適米)で仕込んだ、旨みあり華やかな香りありの純米吟醸で始める。
前菜は “秋映とモッツァレラのカプレーゼ”、長野りんごの酸味がこの酒にあう。

上野の Sake Pub で開かれる「酒蔵(蔵元)の会」に潜り込んだ週末の午後。
松代藩御用達、長野県小布施町の小さな蔵元「松葉屋本店」を呑む会を愉しみたい。

造里は “鰹のたたき”、もちろん信州で鰹は獲れないから、醤油を長野から持ってきたらしい。
爽やかな飲み心地の純米吟醸生酒は、山恵錦(長野県産酒造好適米)で醸した旨い酒だ。

信州中野、小布施、須坂、松代と、善光寺平にあって千曲川を挟んで長野市と向かい合う町がある。
いずれも観光資源を抱えているけれど、この蔵がある小布施が抜きんでて頑張っている印象だ。
栗菓子、りんご、巨峰、北斎、酒蔵、ワイナリー、高山温泉郷、上手に結びつけて魅力的な観光地になっている。

北陸新幹線を降りたら長野電鉄の特急で小布施までは25分、車なら上信越道の小布施ICで降りる。
冬季五輪を経て案外アクセスが良くなった「栗と北斎と花のまち」を訪ねたい。

焼物は “味噌漬け豚ロース”、こってり濃厚な味は、肉料理の中でも日本酒に合う一品だと思う。
通称「赤金」は兵庫県産山田錦で仕込んだ純米吟醸、きりっとキレのある辛口は肉料理でもいける。

小鉢で “野沢菜わさび” が登場、信州人のボクには嬉しいアテ、これで二杯は呑めそうだ。
ラインナップは生原酒に代って先ずは美山錦、瑞々しい口当たりはフルーツに喩えられそうだ。

ところで「北信流」とは松代藩発祥で北信濃に広がった宴会の儀式のこと。
お肴謡(おさかなうたい)と云って、宴の中締めで小謡を酒のさかなとして来賓に披露するものだ。
転勤や移住でやってきた方はちょっと驚くかも。そう言えば親父も先生について習っていたっけ。

次なる生原酒は金紋錦、木島平産の少量品種で仕込んだ旨みたっぷりの純米原酒だ。
揚物は長野のきのこを添えて “揚げだし豆富”、これまた泣かせる一品だね。

ラベルについている「GI」とは Geographical Indication、国税庁長官指定のお酒の地理的表示。
「GI長野」は、県産の原料を用いて県内で造る、確かな品質を誇る日本酒とワインの証なのだ。

そろそろ中締めの頃合いだけど、この「北信流の会」にお肴謡は無いんだね。
食事に “さつまいもの炊き込みご飯” が運ばれてきた。香りよく、ほんのり甘くて美味しい。

ガラスの酒器に注がれる三種目の生原酒は兵庫県産山田錦、故にGIマークは付かない。
味わいのある旨辛口は、心地良く味わえる純米酒、いつまでも呑み続けていたい。

さてここから純米大吟醸が三種登場する訳だけど、すでに記憶も怪しいので一種目だけご報告。
「何れ菖蒲か杜若」って、このオシャレなラベルは山田錦を醸した純米大吟醸。
甘味の “桃ジュースのシャーベット” を傍に、香り高い華やかな酒をデザートワインのようにいただく。美味しい。

信州の酒と肴に、懐かしいふるさとと未知の信州を味わって、上野の夜は更けていく。
こんど帰省したら、煉瓦造りの煙突が聳えるこの小さな蔵元を訪ねたい。

<40年前に街で流れたJ-POP>
22歳 / 谷村新司 1983