旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

大航海時代を謳歌した都 / リスボン

2013-06-23 | 旅行記

 海とも河とも束ないテージョ川を4月25日橋で渡る。全長2277m、水面高80m、高い。
右手に旧市街のオレンジの甍が続く、アマリア・ロドリゲスが流れる。リスボン到着だ。
世界遺産「ベレンの塔」は河口を守る要塞であり、また航海を終えた船乗りたちを迎える
故郷のシンボルでもある。抜けるような青空に石灰岩の白壁が眩しい。
司馬遼太郎さんは著書の中で「テージョ川の公女」と賞賛している。

 世界遺産「ジェロニモス修道院」はマヌエル様式の最高傑作と謳われる。
マヌエル様式とはロープや珊瑚、新世界の動植物など航海にちなんだモチーフを指す。
南門上に幼いイエスを抱く聖母マリア像がが見える。

中庭を囲む55m四方の回廊にはその柱やアーチに、ロープや貝、異国の動植物など
大航海時代を象徴するモチーフがびっしりだ。

「サンタ・マリア教会」南面のステンドグラスはマヌエル1世の結婚式を題材としている。
礼拝堂は王家一族の墓になっている。柩の台座にはインド象が支えるように施されて、
インド交易と植民地支配を物語っている。

「発見のモニュメント」は、ジェロニモス修道院と通りを挟んでテージョ河岸にある。
大航海時代を拓いたエンリケ航海王子やヴァスコ・ダ・ガマ、フランシスコ・ザビエルなど
この時代を牽引した32名の偉人像が彫られている。

 旅程の半ばには大概日本食をアレンジする。この夜はローザ通りの「ボンサイ」で。
和の情緒あふれる店のオーナーは日本人女性、親御さんのお店を継いだ若い女将さん。
日本で修行したポルトガル人の夫君の包丁裁きが素晴らしい。目にも舌にも満足の内容だ。

 

ちなみにリスボンにある日本食レストラン、日本人の経営は2店舗。中国人・韓国人の
経営は100店舗以上とか。日本文化はきちんと伝わるのだろうか、心配になったりする。

 旧市街のアルファマを訪ねる。
1755年の大震災を被害を免れたサン・ジョルジェ城を中心とした最も古い街並みで、
迷路のような路地や急な坂道などが残りどこか郷愁を誘う。

カテドラルからトラムが走るアウグスト・ローザ通りを上ると、息が切れかかるころ
「ポスタル・ド・ソル広場」に至る。
広場からは青きテージョ川とオレンジ色の甍が連なるアルファマを一望できる。


 下町アルファマはファドを聞ける街でもある。
2日目の夜は古く狭い迷路めいた路地裏にあるカーザ・ド・ファド Pateo de Alfama で。
黒衣を纏った歌い手ファディスタ、ヴィオーラ、ギターラの奏でるファド。
その哀愁を駆り立てる切ない音楽が心を揺さぶる。

ボンバル公爵広場からテージョ川に向かって下る並木の美しいリベルターデ大通り。
高級ホテルや大使館などが並ぶ新市街。投宿している5つ星のホテルアルツもこの一角だ。
通りはレスタウラドレス広場で終わり、隣のロシオ広場(ペドロ4世広場)とテージョ川を
見守るコメルシオ広場を結ぶアウグスタ通りとオウロ通りが目抜き通りになる。


 リスボン最後の晩餐はガレット通りの LARGO で。
ノスタルジックな外観、店内はクラゲの漂う水槽をパテーションにした瀟洒なレストラン。
メインの仔牛料理をルビー・ポート・ワインで愉しんで、リスボンの宵は更ける。




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