旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

流星と幸谷なのはと笑顔がいちばん 流鉄・流山線を完乗!

2022-02-05 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 警笛を響かせて、オレンジの車体にブルーフェイスの「流星号」が大きなカーブを描いて現れた。
前照灯下のステンレスが特徴的な表情は、ずいぶん短くなっているけど西武鉄道を走っていた車両に違いない。

流鉄・流山線は世が大正に代わった頃、すでに開業していた常磐線馬橋から流山まで5.7kmを結んだ。
古い木造の屋根を載せた馬橋駅のプラットホームから、赤いボディーの「あかぎ号」に乗って流山を目指す。

流鉄は頻繁に軽い警笛を鳴らせて走る。よく見ると公園や沿道で手を振る子供たち応えているようだ。
運転士は可能な限り白い手袋の左手を低く振っている。地元の足として住民に愛される鉄道の姿を知る。

 波打つ線路に悪戦苦闘するように「あかぎ号」は上下左右に大袈裟に揺れる。さして速度は出ていない。
左手にイトーヨーカ堂の白い箱が見えてくると平和台駅に辿り着く。ここで途中下車したら町歩きが始まる。

西に5分も歩くとお椀を伏せたような小山が姿を見せる。この小山に流山の地名由来となる面白い伝説がある。
上州赤城山が噴火したときに、土塊がここに流れ着いたとされ、“山が流れてきたから流山” という訳だ。
山頂には赤城神社が祀られ、山門に長さ6.5m、太さ1.5m、重さ500kgの大しめ縄が氏子により奉納されている。

流山市の名産である “白みりん” の製造は明治時代から行われ、以来200年、この地を発展させてきた。
流山キッコーマン工場の壁面は、白みりんの歴史的資料を掲示する「まちなかミュージアム」になっている。
工場までは緩いカーブを描いて引き込み線の跡が残っている。製品の輸送に流鉄が役割を担ってきた訳だ。

 このまま「流山本町のまちなみ」を北上するのもいいのだけれど、流鉄も完乗しなければならない。
っで平和台駅に戻って最後の一区間を乗車する。タイミングよく踏切が鳴り始めて「なの花号」が入ってきた。

600mの短い直線を揺れて「あかぎ号+なのは花号」の混成が流山駅に終着する。
駅の奥は検車区で、今日は運用されていないピンクの「さくら号」にグリーンの「若葉号」が休息をとっている。
なんだかこのカラーラインナップは、子ども達が夢中になる戦隊モノをを彷彿させるのだ。

 江戸時代から江戸川の水運やみりん醸造業で栄えた流山には、明治期に建てられた町家や土蔵が点在する。
一帯は流山本町としてレトロな情景を醸し、登録有形文化財はギャラリーやレストランとして町並みに溶け込む。

     

散策前の腹ごしらえに駅近くの「小西屋」を訪れる。
なんてことはない町の蕎麦屋さんなんだけど、店外に二組が席待ちをしていて期待が高まる。

お隣のテーブルを盗み見て択んだ “大ざる” は、せいろに峰を誇ってたっぷりと海苔を散らす。
二割五分・七割五分のそばは、案外香りもあり喉越し良く、美味しいそばでした。半分までは。

パンパンの腹を抱えて町並みを巡る。万華鏡ギャラリーとなった寺田園茶舗の見世蔵、イタリアンレストラン
に生まれ変わった丁子屋、恵比寿と大黒天の鬼瓦を載せた呉服の新川屋、どれも魅力的で味のある建物だ。

近藤勇ら新撰組が屯集した陣屋跡、小林一茶寄寓「天晴みりん」の秋元本家跡をめぐって江戸川堤防に上がる。
くっきりと筑波山のシルエット、春は菜の花で埋まる堤防も、今は冬枯れて乾いた北風が吹きさらすのみだ。

 これは地酒と云うのだろうか、町並みの外れ「かごや商店」を訪ね “笑顔がいちばん” を求めた。
どうやらここに蔵はなく、神崎町の鍋店神崎酒造蔵に造らせているらしい。いわゆるOEMになるのかな。
いずれにせよ、ロングシートの流鉄では300mlを開けるに憚られる。純米吟醸は家に帰ってのお楽しみなのだ。

 沿線では最も賑やかそうな幸谷駅に降り立って初めて気がついた。ここはJR新松戸駅に隣接している。
常磐線、武蔵野線、流鉄が交差する駅前は小さな市街地を形成している。今宵はこの辺りで酒場を探そう。

ロータリーから常磐線に沿って南へ2分ほど歩くと「丸昇」の紅い提灯が揺れている。
お通しの “ひじき煮” を抓みながら生ビールを呷っていると “インドまぐろ” が登場する。
口に含むとトロッと蕩けて美味しい。なにしろ切り身の朱というか赤というか、鮮やかで美しい。

地酒のラインナップはみちのくの蔵を並べている。この沿線は東北から出てきた方が多いのだろうか。
先ずは由利本荘の “天壽” を択ぶ。この蔵は由利高原鉄道を呑み潰した夏、終点の矢島の町で訪ねている。
冷でよし燗でなおよしの旨口純米酒で、“タラの芽の天ぷら” の春の苦さを愉しむ。旨いね。

“ねぎま” をタレで焼いてもらったら丁寧に七味を振りかけて、ジュワッと鶏とネギの旨味が広がる。
二杯目は吟醸王国やまがたは鶴岡の酒 “大山”、さらりとした口当たりの特別純米は引き立て上手な食中酒だ。
6時をまわって、次々に引き戸を開ける常連さんでカウンターも埋まってきた。一見さんは引き時か。
最初で最後かもしれない幸谷(新松戸)呑み、案外魅力的な酒場が点在して、ご同輩が杯を傾けているのだ。

流鉄・流山線 馬橋〜流山 5.7km 完乗

い・け・な・い ルージュマジック / 忌野清志郎 + 坂本龍一 1982
     



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6 コメント

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Unknown (1-102popra)
2022-02-19 21:59:53
こんばんは!
最初で最後と言わず、また東葛地域にいらしてください!
東武線、新京成線、北総線、成田線、全て完乗済みでしたか?
流山歩きをしたときに買った「赤城」と命名されたお饅頭が美味しかったですよ😃
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旅の途中様 (なまくら和尚)
2022-02-20 07:25:39
おはようございます
いつも楽しく拝見させて頂いて居ります

少し知っている地名・電車名が有りましたので、懐かしく楽しく拝見しました
ありがとうございます
   何より何より ナムナム🙏🙇
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行きたくなりました〜♬ (おーじーうえもん)
2022-02-20 08:15:27
おはようございます
流山線は一時期
よく通っていたのですが
ここしばらくご無沙汰でした
良い雰囲気ですね〜♬
また、行ってみたくなりました
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Unknown (呑み人)
2022-02-20 09:24:07
@1-102popra popraさん、おはようございます。
お饅頭ですね。今度は地の甘味も注目ですかね。
松戸に柏、東葛もさらに掘ってみたいです。
ご来訪ありがとうございます。
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Unknown (呑み人)
2022-02-20 09:29:06
なまくら和尚様、ご来訪ありがとうございます。
流山あたりにお出掛けでしたか。あるいはお知り合いでも。
懐かしくも楽しい思い出を引き出せたのなら
お読み頂いた甲斐があります。嬉しく思います。
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Unknown (呑み人)
2022-02-20 09:32:36
おーじーうえもん様、おはようございます。
流山線、ぜひ再訪の上、詳細な解説をお願いします。
楽しみにしていますね。
コメントありがとうございます。
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