IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

法案もいろいろ

2005-02-11 15:42:06 | ニュース
おそらく個人的に全く興味が無かったためなのだろうが、マイケル・ジャクソンによる未成年者への性的いたずらに関するニュースが今でも大きく報じられている事にビックリした。今日は北朝鮮の核保有宣言やチャールズ皇太子の再婚話、ローマ法王の退院など、かなり話題性のあるニュースが多かった1日だけど、それでもマイケルの姿がテレビの画面にはあった。視聴率を計算出来るネタといえばそれまでだけど、本当に息が長いねぇ。何でも「スタンド・バイ・ミー」などに出演していた子役コリー・フェルドマン(もう33歳らしい)に裁判所から召喚状が届き、どうもマイケル・ジャクソンの裁判で証言する事になった模様。

「グーニーズ」や「スタンド・バイ・ミー」に出ていたフェルドマンの事は僕もかすかに覚えていたんだけど、個人的には年末年始によく放送される「あの人は今?」的な番組で見てみたい有名人の1人であったので、今日のニュースで彼がまだ俳優を続けていた事に驚いてしまった。フェルドマンは最近のインタビューでマイケルにいたずらされた事は無いと語っているが、子供の頃はマイケルの「遊び仲間」の1人だったそうで、検察側はフェルドマンの証言から何かを引き出そうとしているらしい。なんでも、「ホーム・アローン」のマコーレ・カルキンにも召喚状が送られるかもしれないとの事で、あらためてマイケルの交遊録に溜息がでる始末。

ブッシュ大統領の外交政策も見通しがはっきりとしないけど、晩年のエルビス・プレスリーが軍服を着たような格好の金正日の考えはさらに予測が困難だ。朝鮮中央通信は木曜日、北朝鮮外務省が公式に核兵器の保有を認め、2年近くにわたって行われてきた6ヶ国協議からの脱退も発表したと報じた。アメリカと韓国は今回の北朝鮮政府の発表をそれほど重要視する動きを見せていないが、同時に2003年に開始された6ヶ国協議への早急な復帰を求めている。

ある韓国政府高官はNBCの取材に対し、これまで国際社会の注目を集めるのに失敗してきた北朝鮮政府が、より衝撃的な言葉を使って世界の注目を集めようとしているのではないかと語っている。ブッシュ政権は木曜日、北朝鮮に対して核開発の願望を捨て去るよう求め、国連も北朝鮮政府の路線変更を強く求めている。ルクセンブルグ滞在中のライス国務長官はアメリカが北朝鮮攻撃を行う意思が無いことを表明し、北朝鮮が国際社会との関係を軟化すべきとコメントした。

北朝鮮政府は2002年に国連の核開発監視団を追放しているため、アメリカ政府内でも今回の核兵器保有に関する発表の信憑性をめぐって意見が二分している。北朝鮮が核実験を実施した証拠は現在までに確認されていないが、専門家の間では北朝鮮が少なくとも1~2発の核兵器を所有しているという見方が強まっている。ある米政府高官はNBCに対し、情報当局は北朝鮮が所有する核兵器が6~8発存在するかもしれないと明かしている。この高官は匿名を条件に、「北朝鮮の今回の発表は、我々が10年前に得た情報と同じものだった」と語っており、実際には予想以上の核兵器が開発されていてもおかしく無いことを示唆している。

バージニア州議会で2日前に「パンツ法案」なるものが下院を通過したが、木曜日の上院による投票の結果、上院で法案が通過する事はなかった。これはズボンを極端に下げて、下着をさらけ出したまま町を歩く者に50ドルの罰金を科すというものだった。火曜日に法案が下院を通過すると、法案通過のニュースは全国に流れ、法案が上院も通過するのかどうかに注目が集まっていた。僕はバージニアの州都リッチモンドにある日刊紙記者に知り合いがいて、以前にある雑誌でアメリカの宗教をテーマにインタビューをした事があるのだが、彼の話ではバージニア南部での宗教をベースとした保守化は今も進行中なんだとか。

アメリカではモデルやラップ歌手の影響もあって、高校生らがジーンズを極端に下ろし、下着を見せる格好で歩く光景をよく目にするが、これがバージニア州の保守派の怒りを買い、法案が作られていた。でも、いわゆる「パンツ見せファッション」が始まったのはケイト・モスやマーク・ウォールバーグがカルバン・クラインのモデルだった頃なので、今から10年以上も前だよ…。ここに来てこういったファッションが問題視されるのも、やっぱり保守化する今のアメリカを象徴する出来事なんだろうか?とにかく、州上院委員会のケネス・ストール議長は下院で法案が通過した事を「ムチャクチャだ」と一蹴し、委員会のメンバーらと若者の意識調査を実施している。

サリー郡高校で行われた公聴会には75人の高校生も参加し、参加者からはファッションを法律で禁じるのはおかしいと不満が噴出した。17歳のエルビン・ショーは「フロリダではビキニを着て町を歩いても大丈夫なのに、少し下着が見えただけで罰せられるのはおかしい」と語っている。法案を考えだした民主党代議員のアルジー・ハウエル氏は、法案の通過しなかった感想を求めた記者に無言を貫いたが、法案は「下着が公の場で見せる事」を真剣に危惧する有権者に対する彼なりの回答であったと語った。ファッションの基準は、時代と共に変わるんだから、別にそんな事気にしなくてもいいんじゃないの…、と僕なんかは思うんだけど。

昨日のブログで書けなかったのだが、チャールズ皇太子とカミラ・パーカー・ボールズの再婚の一報が報じられる前に、イギリスではブレア首相が31年前のある事件に対してテレビで公式に謝罪をしていた。もしチャンスがあれば、ダニエル・デイ・ルイス主演の「父の祈りを」という映画を見てもらいたいのだが、映画は1974年にロンドン郊外で実際に発生した爆破事件がテーマとなっている。事件当時、近くに住んでいた北アイルランド出身の青年らや彼らの家族が逮捕され、15年間を監獄の中で過ごすのだが、実は彼らはみな無罪だったのだ。事件発生から数年後には、別の事件で逮捕された過激派の男性がパブ爆破についても罪を認めていたのだが、警察はその証言を1989年まで黙殺し続けていた。

1989年に彼ら(全員で11人が逮捕・投獄されたが、1人は獄中死している)の無罪が証明されたが、釈放後の彼らの多くが精神的なショックで一般の生活を送れない状態となっていた。ダニエル・デイ・ルイスが演じたジェリー・コンロンは現在50歳だが、PTSDの症状に悩まされ、現在も精神科に通院している。イギリス政府からの公式な謝罪などが無かったため、アイルランド政府やイギリスの市民団体が政府に謝罪を求め続けてきたのだが、昨日になってそれがようやく実現した。今日、友人とこの話を少ししたんだけど、現在グアンタナモに収監されている人の中からも、将来的に同じケースが発生するかもしれないと友人は語っていた。僕も同感だ。最近、無実が証明されてグアンタナモから出てくる人が増えているが、今から10年後にグアンタナモはどのように語られるのだろうか?