IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ザ・スーパーカー

2005-02-02 15:29:59 | ニュース
頑張って早起きして、午前中に幾つかの仕事を済ませて、今日は午後から友人宅にサッカーの試合を見に行ってきた。「これぞフリーランス生活の醍醐味」と贅沢な時間を過ごせる自分に少しばかりの幸せを感じたのだが、友人宅には試合を見るためにオフィスを早退してきた政府勤務の別の友人らの姿も…。「やっぱり役所勤めはいいぞぉ」と笑う友人らと一緒に、数週間前から楽しみにしていたアーセナル対マンチェスター・ユナイテッドの試合をライブで観戦した。結果は、僕の予想に反して、アーセナルが2-4で敗北し、今季の優勝はほぼ絶望的となった。同じく遊びに来ていたジョージワシントン大学サッカー部の男の子は、「アーセナルの時代の終わりを象徴するような試合だったね」と、ポツリとこぼしたが、確かにアーセナルの斜陽は否定の出来ない事実でもあった。

試合後、アーセナルの敗戦にショックとノスタルジーの両方を感じずに入られなかった僕は、ソファーに座りっぱなしだったのだが、横で見ていたイタリア人の友人の携帯電話の着信音に吹き出してしまった。子供の頃に「ナイトライダー」というテレビドラマがあったのだが、彼の携帯の着信音がナイトライダーのテーマ曲で、なんとも言い難いセレクションに笑いをこらえれなかったのだ。彼も僕と同じように子供の頃に「ナイトライダー」を毎週欠かさず見ていたそうだが、イタリアでのタイトルは「ザ・スーパーカー」というものだったらしい。そのままやん。

31日に国防総省のデービッド・チュー国防次官がアフガニスタンやイラクで戦死した米兵に対する弔慰金の額を引き上げるプランを発表し、来週議会に提出される予算案にも新しい弔慰金システムが組み込まれる。1991年、これまで6000ドルだった死亡米兵(戦闘だけでなく、訓練などでの事故も含まれる)への弔慰金が12400ドルにまで引き上げられた。以降も帰還兵団体などから弔慰金の引き上げをめぐってプレッシャーを受けていたペンタゴンだが、戦争長期化と軍への入隊志願者が減る現在、弔慰金の増額で人員確保に励み、さらに早期撤退論を間接的に牽制したものと考えられる。

弔慰金は国防長官による「戦闘地域」指定エリアで死亡した米兵全てに支払われ、2001年10月以降に死亡した者全てに適用される。弔慰金に加えて、15万ドルの生命保険も支払われる計画だ。議会によって予算が承認されると、アフガニスタンとイラクで死亡した米兵の家族らに対して支払われる金額は、これまでの12000ドルから25万ドルに上昇する。

チュー国防次官の発表から一夜明けた火曜日、民主党はアフガニスタンとイラクでの戦死者のみに限定されている弔慰金の対象者を、将来の新たな戦争で死亡した兵士や、軍務につく兵士全てに適用すべきとの見方を示した。ペンタゴンによれば、現在までにイラク国内で1415名のアメリカ兵が戦死し、「対テロ戦争」で米軍が展開するアフガニスタンやその他の地域でも156人が亡くなっている。これらの戦死者家族には増額された弔慰金が支払われる可能性が高いが、911テロの際にペンタゴン内で死亡した53人の米兵に対しては適用されない見通しだという。

あんまり明るい話題が無いアメリカ新聞事情だが、ワシントンで新しい日刊紙が誕生している。1日に創刊した日刊紙「ワシントン・エグザミナー」は首都ワシントンや周辺地域で手に入れることが出来るが、この新聞は無料で配布されており、新しい新聞のスタイルになり得るかどうかが注目されている。ワシントンにはワシントンポストとワシントンタイムズという2大日刊紙が存在するが、発行部数70万のワシントンポストに対して、ワシントン・エグザミナーは26万部を毎日発行していく予定で、ワシントン周辺の新聞読者層に将来変化が起こる可能性もある。

コロラド州デンバーの富豪フィリップ・アンシュッツが出資して行われる今回のフリーペーパー事業は、大手新聞の読者数が減少していく中で、紙面の内容やビジネス方法を変えることで新聞社がこれからも生き残る事が出来るかどうかを垣間見る試金石となる。アンシュッツ氏はすでにサンフランシスコで所有する「サンフランシスコ・エグザミナー」紙をタブロイド版のフリーペーパーに変更している。ワシントン周辺で商業的に成功すれば、将来的には同じタイプの新聞を全国展開していきたいようだ。

インターネットや24時間ニュース専門局に潜在的読者(多くは若者)を奪われ続けている新聞業界は生き残りのために試行錯誤を繰り返しているが、「ワシントン・エグザミナー」は創刊前に市場調査を徹底的に行っており、ワシントン市内よりも郊外に多く住む高学歴・高収入の読者をターゲットの中心にしている。ローカルニュースを大手紙よりも多く取り上げるが、国際ニュースや教育、スポーツといった分野もカバーしており、日刊のフリーペーパーとしては破格の64ページでスタートしており、今後の動向が注目される。

2004年6月にニューヨークで開かれた世界新聞会議では、新聞ビジネスの凋落がテーマとして話されているが、実際に世界208カ国のうち新聞の発行部数が全体的に伸びているのは35カ国しか存在せず、そのほとんどが発展途上国なのだという。アメリカでも一部の大手新聞社が数十年後に紙媒体としての新聞発行を廃止すべきかどうかを検討しているという情報があるが、将来の事が全く読めない状態だ。「ワシントン・エグザミナー」が広告収入だけで立派にビジネスを展開していけるのならば、紙媒体としての新聞メディアの生き残りは可能であると思うが、同時に既存の大手新聞社は何らかのアクションを早急に起こさなければ大変な事になるんじゃないだろうか。とにかく、活字メディアの周辺はこれからも騒がしくなるだろう。

先週木曜日に僕と同じ大学出身の舞台女優がマンハッタンの路上で強盗に遭い、婚約者の目の前で射殺される事件があったけど、火曜日になって事件の容疑者が殺人容疑で逮捕されている。警察に拘束されたのは6人いたそうだが、残りの4人は強盗未遂容疑で逮捕された模様だ。殺人の罪に問われているのは2人のティーンエージャーで、1人が19歳の少年、もう1人は14歳の少女という事。目撃者らの話では、19歳の少年が銃を発砲したそうだが、はっきりとした詳細は分かっていない。14歳の少女は母親に付き添われて、警察に出頭してきたのだという。事件がとりあえず解決の方向に向かっている事は嬉しいが、どこにでも銃が氾濫する現実をあらためて見せつけられた。作った奴が悪いのか、使う奴が悪いのか。そんな議論にも飽きてきた。