読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

W太田

2007-11-21 12:26:43 | Weblog
 昨夜、夕飯の後片付けをしていたら、テレビから太田述正氏の声がした気がして、「まさかな・・・」と思っていたら本当に太田述正氏が出ていた。「防衛庁の納入をめぐる口利きに関与した政治家リスト」の件でインタビューを受けておられたのだった。たった二回テレビでお見かけしただけなのに、声を聞いただけで判別できたというのはすごいインパクトがあった人なのだろう。週末開けに仕掛けた「時限爆弾」というのはこのことだったのか。あーあ、日本版CIAの教官という道はなくなったなあ。

YAHOO!ニュース 額賀財務相の接待、口利き疑惑

 太田氏が以前民主党から立候補したわけは、ありとあらゆる政治家が口利きをしてきて、そのほとんどが自民党の政治家であったのだが、民主党(当時)は一人もいなかったからだとおっしゃっている。そして、「いかに民主党がだめであろうと、自民党支配の政権を変えない限り日本はどうにもならない」のだとおっしゃる。
 テレビでは額賀財務大臣も仙台防衛施設局幹部も口をそろえて「記憶にない」と言っていた。「記憶にない」って便利な言葉だなあ。昔リクルート疑惑だとかもう忘れちゃったけどいろいろな疑惑で国会で証言した人たちがみんな「記憶にない」と言っていて、私は「これだけ一生懸命言うのだから、ほんとに忘れちゃってるに違いないよ。私だってよく忘れるし、忙しい人はいちいち憶えていられないんじゃない?」と思ったものだけど、あれはみんな嘘だったと後でわかってめちゃめちゃ腹が立った。考えてみれば太田氏のように鮮明に憶えている人もいるのだから、「記憶がない人」と「ある人」のどちらが信頼できるか言うまでもない。そもそもそんなすぐに忘れるようなボケた人(もしくは、悪いことをたくさんし過ぎていていちいち憶えていられない人)はすぐに大臣やめろよ!

 太田氏はわざわざ官僚の職を投げ打って、腐敗を告発するために野に下った人だ。この人が今、自民党を敵に回して背水の陣で告発してるんだから「知らない。憶えていない」ですむと思うなよ。これは自民党に自浄能力があるかどうかという問題だ。
 もし太田氏が「うそつき」で終わってしまったら、金魚鉢の水が完全に腐っているってことなので、総とっかえしなくちゃいけないというしるしなんだろう。ああ、大変そうだなあ。水槽の水替えって大変なんだ。

 あと、太田さんは、「つまり接待なんてみみっちいことで、企業が天下り先を準備して囲い込んでいるということの方が重大だとおっしゃってるわけですね。」などと司会者に通訳してもらうのではなく、最初に大事なことをぱっぱとおっしゃるようにすれば誤解されることもなく、テレビの討論番組にもっと呼んでもらえるのではないかと思う。


 その後に「爆笑問題のニッポンの教養」を見た。昨夜は気象学の高藪緑氏。高藪先生の雲の動きに関する研究が地球温暖化予測にも取り入れられたという世界的に有名な方らしい。これかな?
地球シミュレータによる最新の地球温暖化予測計算が完了
地球温暖化に関しては懐疑的な人もいるようだ。
地球温暖化のエセ科学 2007年2月20日 田中 宇
地球温暖化問題の歪曲 2005年8月25日 田中 宇

 番組でも、また太田光が変なことを言っていた。「社会が進歩していろいろな環境問題が生じてきて、それに対する対策がとられても、さらにその対策自体が環境に負荷をかけるものになったりはしないか。」「『沈黙の春』を書いたレイチェル・カーソンは、結局天敵を使ったような農業を推奨しているんだけど、その天敵自体が自然の生態系をこわしたりするんじゃないか。」とか。
 それ、高藪先生の専門じゃないって。天敵を使った農業ってもうやってるし、レイチェル・カーソンの警告によって世論が巻き起こり、農薬はどんどん安全性の高いものに変わっていったし。昔は農薬飲んで自殺する人がいたけど、最近の農薬は飲んでも死なないのよ。

 思い出したのは、また「爆笑問題のピープル」(幻冬舎)中沢新一との対談。
田中―結局、日本人って文化とか芸術に対して反応が遅いじゃないですか。それがよくないんですかね?
中沢―いや、自信がないんだ。自分がこれがいいと思ったら、それをとことんやればいいんですよ。ヨーロッパ人がどう言うか、アメリカ人がどう言うか、そんなこと知ったこっちゃないやと、自信を持ってやる破天荒なところがなかったんですよ。他人のことを気にしすぎなんだよね。
太田―だから本当に自信がないなあと思うんですよね。いま『もののけ姫』って流行っているじゃないですか。あの映画のテーマは自然破壊がどうのこうのとか言われているけど、あれはみんながいまの自分たちの社会はどこか間違っていると思うから流行すると思うんですよね。「これでいいじゃん」という人があんまりいないですよね。環境破壊をしても、けっこう便利になって、いいじゃないかと僕は思っちゃうんですよ。みんなが自分は正しいと思っている状況もすごく怖いことだけど、みんなが自分は間違ってると思っている状況というのも気持ち悪いですよね。

中沢―ただ、映画について書かれたものを読んだ限りで言うなら、あのテーマって1930年代ぐらいまでの人間がいろいろ考えた結果、やっぱり解決しようがない問題なんですよね。その解決を探りながら戦後の歴史はできてるんだけども、要するに自然破壊と技術の発達という問題を、ああいう形で出してくるまでは誰でもできると思うのね。そこまではわかった、共感を得るのもわかる。しかし「じゃあ、どうするんだ?」と言った時に、これが問題で。じゃあ、産業の規模を縮小しようとなったら、いまここで灯いているライトは全部消さなきゃいけないですね。「パーフェクTV!」なんかもなしにしないといけない。

太田―(略)例えばミヒャエル・エンデの『モモ』という童話があって、あれなんかも文明が発達していくと大事な時間が失われていくと、だけど、あれを読み終わった後に、いまの人間の社会とか自分たちの生活を全部否定されちゃたような気がして。「こんなことをやっていたら、いまに人間はしっぺ返しを喰らいます!」みたいなね。そうするとすごく窮屈になって、それで爆発したのがオウムじゃないかと思うんですよね。「じゃあ、そういう世界を全部壊しちゃえ!」という発想になっちゃう。
 だからそれよりも、そんなことはいまさら言われなくてもわかってるわけだから、そのダメな人間をどうやって好きになれるか、ということを考えさせてくれる方がいいような気がするんですよね。
中沢―本当にその通り!


で、上記番組の最後に高藪先生からのメールが紹介されていて、ここの「プロデューサー後記」に引用されているんだけども、高藪先生も「過去の日本に帰ることはできないのだから、なんとか科学技術の進歩で問題を解決していくしかないのでは。」という意味のことをおっしゃっていた。それでまた思いだしたのは、社会学者の宮台真司が「近代社会の矛盾は、近代を徹底することよって解決するしかない」と言っていたことだ。どこに書いてあるか忘れたけど。

それからー、猫出してくればいいってもんじゃないよ!NHKなんだから!

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