読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

昨日のつづき

2008-11-03 23:59:08 | Weblog
 昨日の講演会では藤原和博さんのあと、和田中地域本部長、衛藤寿一さんの報告があった。うちの地元でも、和田中に学んで学校支援地域本部を立ち上げようという試みをしているモデル校が二校あって、その関係者が衛藤さんのインタビューをした。

 衛藤さんは淡々と話す普通の人だ。ゆるやかな語り口は催眠術のように聴衆を午後の心地よい眠りに誘い込んだが、藤原さんとはまた違って、こういう人が学校に常にいて生徒たちに接しているというのはよいことだと思った。淡々と話されるので、スゴイことをしているのに全然スゴイように聞こえない。百マス計算が難しくてついていけない生徒に「らくだメソッド」という独自のトレーニングをDSで(!)やらせていて、「その全段階を作成しました」とかおっしゃるのだ。そういうの詳しくないけど、これ、すごくない?

 それからインタビュアーが、「子どもたちの『豊かな心をはぐくむ』ためにどういった取り組みをされていますか」(PTAくさい!)と聞くと、「えー、特に・・・、これが心の豊かさというものはなくて、図書室を整えたり、校庭に田んぼを作ったり、・・・すべての活動をする中で子どもたちの心の豊かさが培われるのだと思います。総合力ですね。・・・それから、和田中では『あいさつをしよう』ということを言っていますが、何か問題を抱えている子は、あいさつに元気がないので、そういう子は特に気をつけて見るようにして、何かあれば先生に報告しています。そういうことですかね。」などと淡々とおっしゃるのだ。実にまっとうだなあ。「挨拶をしよう」などというスローガンを掲げて、みんな元気に挨拶をすれば明るく心の豊かな子が育まれるっていう発想じゃないんだなあ。挨拶ができないほど家庭が暗かったり、勉強についていけなかったりする子は、早めに見つけてサポートできるという発想なんだ。

 最近誤解を受けるような短絡的発言が多い橋下知事は、スピーチ原稿を書いてくれるようなブレーンを雇うべきだと思うな。
 「国旗、国歌意識して」 橋下知事が高校生に呼びかけ(産経ニュース)
「PTAは解体」を謝罪 橋下知事「表現間違えた」(産経ニュース)

 人集めはうまいんだから。
百マスの「陰山」、小河式の「小河」、夜スペの「藤原」 大阪の橋下知事は人材集めが巧い(ブログ「山椒(参書)を入れるとニュースも辛い?」)



 昨日、「そうか、『教育の重点目標』が変わってるんだから、『こころをはぐくむ』だとか『いのちの大切さ』とかそういう安倍政権、中山文科相くさいスローガンからシフトしなきゃだめだったんだな。」と思った。うちの校長先生は機会がある度に、新しい重点目標と学校の「3つの目標」を話されていたのだけども、保護者は和田中の実践を全然知らないからよく理解できていなかった。それに藤原さんの言っていることは実はかなりレベルが高いんじゃないかと思う。大半の人は、文部省が何を言おうと「あ、そうですか」くらいにしか思っていない。既存のフレームが間違っているんじゃないかとか、これではうまくいかないから別のやり方をやってみようとか、AとBのよいところを取って「進化」させようとか、そんなことは考えないようなのだ。私は「あの話は古臭いんだ」と言った途端、猛烈に嫌われた。
 
 教育長さんは「(教育目標が)スイングバックしている」と言われたけども、教育行政がこう揺れ動いてたんじゃ親はたまったもんじゃない。私のしゃべり方も、もっとゆるやかに(気づかれないように)方向転換しなきゃいけなかったかもしれない。
 私だって、あの2003年のPISAの問題がどんなものだったか、それに対してブログ論壇でどういう反応があったかをインターネット上でリアルタイムで見ていなければ、そして宮台ブログを読んでいなければ昨日の藤原さんの話は一言半句もわからなかっただろうと思う。だから普通わからなくて当然なんだ。

 しかし、考えてみれば、人権教育推進委員なんて部署も、さらにもっと古臭いもんだ。同和教育が必修で、PTAとしても取り組まなきゃいけなかったからできたんだろう。このやる気のなさはソフトになし崩しにしていこうという暗黙の了解でもあるのかと疑ったくらいだ。

 でも、私が2ちゃんねるを初めて見たとき、驚愕したのは差別発言や誹謗中傷のひどさと、それが野放し状態になっているという状況だ。「差別なんて時代とともに自然になくなる」という意見が誤りであったことが証明されてるじゃないか。私らの世代は少なくとも、「差別は封建社会において権力者によって意図的に形成されたもので、なくすべきものだ。差別は恥ずかしいことだ。人権の侵害だ。」という共通認識があったと思うが、今の掲示板の状況では「差別がかつてあった。それを利用してとことん貶めてやろう」としているように見える。韓国や中国に対する根拠のない優越感とその裏返しの嫌悪感。歴史的経緯を全く顧みない在日差別。「移民政策反対」という外国人恐怖。人権教育の必要性はますます高まってきていると思うんだけどなあ。それを訴えても全然通じない。何を言っても通じない。「人権、怖い」「うかつに発言してはいけない」とでもいうような雰囲気がある。

 そして、保護者も先生も、年々忙しく、余裕がなくなってきているような気がする。お母さんたちもみんな仕事で疲れている。できるだけ行事を増やしたくない(なのに年々増えていく)。PTA行事の参加者も年々減ってきている。経済的に大変で「人権どころじゃない」みたいなかんじ。そういった状況はこれからも加速していくだろうと思う。この「全部あなたにおまかせ」的な態度も精神的な余裕がないからで、きっと私だって職場や家庭で大変な状況だったらそうなっちゃうだろうとも思う。

 だからPTA組織も見直してスリム化し、地域本部でやれるとこは肩代わりしてもらえるように体制を組み直すというのも時代的な必然性があるのだろうと思う。そういうことをわかりやすく話さないと、いきなり「PTA解体」では保護者は自分が攻撃されてるように思うから拒否反応を起こすだろう。

 ああ、ディベートとプレゼン能力がますます重要になってくる時代なんだなあ。トホホ・・・


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