読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

北朝鮮問題の処方箋と大久野島

2008-03-10 20:40:44 | Weblog
 アマゾンで本を買おうといろいろ見ていてふと目に止まったのが、大澤真幸「現実の向こう」
 「あっと驚く北朝鮮問題の処方箋」って何?と検索してみたらちゃんとブログに感想を書いている人がいる。ああ、便利だなあ。
なぜ北朝鮮は非民主的体制を維持できるのか、北朝鮮の国民はなぜあんな圧政に耐えつづけているのか、それは外に逃げられないからだ。よって日本が北朝鮮からの難民をいくらでも受け入れるという覚悟を決め呼びかければ、大量の難民が発生し、北朝鮮の現体制は自然崩壊する。これは東ヨーロッパ民主化の際に、実際に西側ヨーロッパ諸国が行ったことですね、これが決定的な引き金となった。憎むべき国家の難民を歓待することでわれわれのアイデンティティは変容し、それにともなって北朝鮮の人々のアイデンティティも変容し、そして共存への道が開かれるというのが著者の意見だと思います。

おお、それはいい意見だ。だけど、「北朝鮮を憎む」という人の多くは同時に人種差別主義者でもあるから「体制」と「その体制下の国民」の区別がつかなくて、やれ犯罪が増えるのスパイが潜入するのと大騒ぎするだろうな。非人道的な北朝鮮の体制が一刻も早く崩壊して欲しいとは世界中の人が思っているだろうけども、戦争や軍事介入によってハードランディングさせ、大混乱を生じさせることは誰も望んでいない。だったら、やっぱりこちらの世界の情報が少しでも向こうの民衆に届くようにし、国家が内部から制度を変えていくように支援するべきなんだ。


 この「散歩の変人」さんのブログを読んでいたら山陽路の旅行編に、大久野島に行かれた際の記事があった。それで思い出した。10数年前、友人たちとこの島で恒例のキャンプをしようと計画していた矢先に「地下水からヒ素検出」のニュースが出て急きょ行先を変更したことがあった。それを夫に言うと、「そういえば・・・・、今までに聞いた結婚式の祝辞で一番おもしろかったのは、」と話し始めた。妹の結婚披露宴で新郎の親戚の人が長い長いスピーチをした。途中から脱線してしまって「毒ガス歴史研究所」の話になった。それというのも、この人はこの施設の設立にかかわった人だったのだ。戦時中はもとより、戦後もこの島の毒ガス製造のことは隠蔽されていて、ここで働いていた人たちの健康被害も長い間表ざたにならなかった。資料館を作ろうとしたときもどれだけ嫌がらせや誹謗中傷を受けたかしれない。地域の有力者や政治家や、いろんな人が「過去の恥辱」を封印するために陰に陽に圧力をかけてきたということをこの方は縷々訴えたのであった。披露宴のスピーチで。「過去に日本軍がやったことをちゃんと歴史的事実として残しておかなければいけない。隠蔽することでは決してそれを清算することはできない」と言われたそうだ。みんなあっけにとられて口をあんぐり開けていたけども、一方「すばらしい」と受けた人たちもいた。まあ、美辞麗句のスピーチよりもよほど建設的だとは思う。

 そのときは別になんとも思わなかったけれども、最近歴史を「修正」しようとする人たちが出てきたのを見てるとじょーだんじゃないと思えてくる。負の歴史だろうがなんだろうが、ちゃんと隠蔽せずに記録しておかないと人間は進歩しないだろう。そしてこの大久野島の例でもわかるように、被害に遭うのは何も知らない勤労学生や田舎の人たちなんだ。国が情報を隠蔽することによっていつ自分が被害を被るかわからないという意識を常にもっていなくてはならないと思う。


 それから、大久野島のあたりはタコ飯が名物です。タコカレーというのもあったはず。以前休暇村レストランで食べたのだけど、今はバイキングが売りらしい。わお!おいしそう。見晴らしのよいお風呂も400円で入浴できる。ああ、また行きたい。