読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

今日のたかじん

2008-03-02 23:36:47 | テレビ番組
 今日の「たかじん」で皇室の問題を取り上げていたのだが、ちょっと気になったことがあった。三宅さんが「羽毛田長官の発言は、皇室内部の問題を公に暴露したわけで、皇室を貶めるものだ。長官はあのようなことを発表するべきではなかった」というようなことを言って、それに対して辛坊さんが「まったく同じようなことをウェークアップで言ったら抗議の電話がじゃんじゃんかかってきた。左翼のようなことを言うなって。」と言ったこと。どこが左翼やねん!
 最近、2ちゃんねるなどネット上で雅子さんバッシングがすさまじいように感じていた。週刊誌などでも見出しだけでもうんざりするほどだ。読まないから何が問題になっているのか知らないけど、ときどきギョッとする。三宅さんが言いたいのは「開かれた皇室なんて戦後の皇室はイギリス王室を模範としてできるだけ国民の中に入っていこうとしたけども、あのイギリス王室はどうなったか。皇室だって、このままじゃあ国民の好奇の的になってぼろぼろにされてしまう。」ということらしい。

 えーと、このような議論をどこかで読んだような・・・と思いだしたのは、池田清彦氏が養老孟司・内田 樹『逆立ち日本論』について書いた書評
定義したくて仕方がないのに定義できない何ものかは、人に考えることを強い続け、ついにそれはブラックボックスのように畏怖すべき巨大な概念として、人々の頭に棲みつくようになる。

そこで聞いた話は、ラオスの中で一番高位の坊さんは、一般のラオス人とは接触をしないというものだった。接触をすれば、もしかしたら只のジイサンであることがバレてしまうかもしれない(もちろん、立派なジイサンには違いなかろうが)。ブラックボックスにしておかなければ、聖性が保たれないという知恵がここにはある。
 開かれた皇室などと言っていると、そのうち天皇制は崩壊するぞ、ということで養老と私の意見は一致した。

 いやー、私は天皇制が崩壊しても一向にかまわないけども、「権力の空白状態ができると、すさまじい混乱が起きる」という歴史的事実から、天皇制が崩壊した後変な新興宗教が乱立したり狂信的な国粋主義者が跋扈しそうな気もして嫌だから、まあ日本人の精神が天皇制なしでも大丈夫な日が来るまでは生き延びていてもらいたいと思う。

 で、右翼でも宮内庁長官の発言に自制を求める人と「いや、よく言った」という人といるみたいなのがおもしろい。「ウェークアップ」で抗議の電話したというのは多分ネット右翼のような人じゃないかと思う。この人たちは雅子さんをぼろくそにけなすだけではなくて、皇太子を廃嫡すべきだなんて主張しているようだ。(今日の三宅さん発言への言及

 いやー、おもしろいですね。きっと天皇制は民衆の支持によって浸食されて滅びていくのでしょう。すごく逆説的ですが。勝谷さんが「東宮は外務省に乗っ取られている」とか「福田さんが皇太子の北京五輪出席を後押ししている。皇室の政治利用だ」とか言っていたのもおもしろい。

 私は島田雅彦『無限カノン』三部作の「美しい魂」を読んだとき「あー、これはまずい」と思った。「外務省をやめて東宮の妃に」「外交でキャリアを生かしたい」等々、モデルそのまんまのヒロイン像だ。「内部から皇室を変えていきたい」だなんてものすごい危険なことを言わせている。しかも、主人公の永遠の恋人として神格化されちゃってて、もしこの小説を雅子さんがお読みになったらどれだけ不愉快な思いをされるだろうかとよけいな心配までしたものだ。その後、ニュースなどで「体調不良」が伝えられるようになったとき、「やっぱり」と思った。いいですか、どんな組織であっても「内部から変革するために入ります」と言う人間を喜んで受け入れるところがありますか。今の組織の在り方を否定しているわけですよ。そんな人はきっと死ぬまで嫌がらせを受けるに違いありません。本人ではなく、周囲が期待をかけているってだけでもですよ。たとえ皇太子が命がけで守ってもだめです。そんな伏魔殿みたいなところに行った人に過剰な期待をかけてどうしようってのか。

 私はめずらしく三宅さんや勝谷さんと意見が一致していたので感銘を受けた。ただ、決定的に違うのは雅子さんに関することで、私なんかはもうあの方の一挙手一投足に目くじらを立てて批判するのはやめるべきだと思う。それこそイギリスのパパラッチ並の下劣さだ。三ツ星レストランで食事したくらいで何が悪いのかと思う。日本であれだけプライバシーをほじくり返されて誹謗中傷されてる人が他にいるだろうか。おそろしいことだ。まるでイギリス王室の悲劇を思わせるような不吉な予感がする。

 たとえ、皇太子が「今後の皇室」について何か意見を持っていらっしゃったとしても、絶対におっしゃらないだろうと思う。だって殺されるもの。