引き続き臨床技術向上講習会からの話題です 大阪口腔インプラント研究会の坂本貴司先生が「歯周病とインプラント周囲炎の新しい診断基準」について講演されていました
この話は患者さんからよく「先生、インプラントはどのくらいもつのですか?」と質問されますが
まず、その「インプラントがもっている」という状態はどういう状態なのでしょう?
インプラントがぐらぐらになっていたり、インプラントの周囲の歯茎が出血したり腫れ上がっていたらダメなのでしょうか?
実はグラグラになっていたらインプラントを撤去したほうがいいのですが、インプラントの周囲の歯肉が出血したり腫れていても治療可能な場合が多くあります
逆に症状がなくてもインプラント周囲の骨の吸収が重篤でインプラントを撤去したほうがいい場合もあります
実はこの状態ならインプラントは成功している、あるいは失敗しているという世界的に統一された診断基準はないそうです
上記の写真はオランダで開催されたヨーロッパ歯周病学会のホームページですが
この学会で2017年にアメリカ歯周病学会との合同ワークショップで「インプラント周囲炎の分類」が提言されました
要するに、「インプラントの成功と失敗の国際的に統一された基準を決めていこう」という話で、
インプラントの成功基準は現時点では模索中でこれから引き続き更新されていくようです
なので最初の患者さんの質問に対する答えは
「インプラントの統一された成功基準が未だないため、症状の有る無しだけではそのインプラントが大丈夫かどうかは判断できません。
レントゲンやインプラントの周囲の歯肉の状態を定期的に検査し、悪くならないようにしっかりとケアしていくことが最も大切です」
となります
あと余談ですが、ホームページでインプラント何年保証と謳っている歯科医師がいますが診断基準がないので何をどこまで保証しているわかりません
言い方を変えると、インプラントが悪くなっても症状がなければ問題なしと判断されてしまう可能性がありますのでお気をつけください
日本口腔インプラント学会ではそういった表記をしないように指導しています