
ニカラグア・マナグア(CNN) 中米ニカラグアの首都マナグアの市長で元ボクシング世界王者のアレクシス・アルゲリョ氏が1日、自宅で死亡しているのが見つかった。57歳だった。
胸には銃弾の跡があり、地元メディアは自殺だと伝えているが、当局の正式発表はない。
アルゲリョ氏は1968年からボクシングを始め、3階級で世界タイトル獲得を達成。ボクシングの世界殿堂入りを果たし、2008年の北京五輪ではニカラグア国旗を掲げて行進した。
2005年からマナグアの副市長を務めた後、昨年11月に市長に選出されたが、不正があったとして選挙結果に異議を唱える声も出ていた。うつ病にかかっていたとの情報もあり、最近は休職中だったという。
報道によると、政府は3日間の服喪を宣言し、新大統領の就任式に出席するためパナマ訪問を予定していたオルテガ大統領は、訪問を延期した。
〔CNN 2009年7月2日の記事より・写真はロイター〕
* * * * *
あまりにも突然の訃報で、ただ驚きの一言です。私はアレクシス・アルゲリョはとても大ファンですし、今でも憧れのボクサーですので、今回の悲しい事件は本当にショックです。紳士的なアルゲリョには日本でもファンが多く、きっと世界中のボクシングファンが悲しみにくれているのでしょう。
アルゲリョは極めて正統派のボクシングスタイルで、その痩身長躯の体型からは想像できないような破壊的なパワーで次々と対戦相手をマットに沈めました。自慢の強打でフェザー級(WBA)、Sフェザー級(WBC)、ライト級(WBC)の世界3階級制覇を果たしました。1970年代に中南米諸国は、世界の中軽量級の覇権を完全に掌握しましたが、アルゲリョはまさにその黄金時代を創った英雄であり、中南米を象徴する偉大なボクサーです。1975年10月12日、蔵前国技館でロイヤル小林を相手に3度目の防衛戦で戦ったのが、アルゲリョの現役時代の唯一の来日試合でしたが、この一戦は日本のボクシングファンに強烈な印象を残しました。「KO仕掛人」と呼ばれたロイヤル小林を5回にボディブローで悶絶させたシーンは、あまりにも衝撃的です。のちにロイヤル小林が「アルゲリョのパンチは氷の塊で殴られているようだった」と語っていたのは有名です。
アルゲリョは1974年2月16日、パナマでの世界初挑戦こそエルネスト・マルセル(柴田国明やスパイダー根本と対戦)に小差の判定で敗れますが、同年11月23日、ルーベン・オリバレス(バンタム級時代に金沢和良との死闘でも有名)から13回逆転KO勝利でWBAフェザー級王座を奪取。4度の防衛戦を全てKOで勝利しました。1978年1月23日、11度防衛中のアルフレド・エスカレラ(柴田国明から王座を奪い、バズソー山辺の挑戦を2度撃退)に挑戦し、13回TKO勝ちしてWBC世界Sフェザー級王座を獲得して2階級制覇を果たします。減量苦から開放されたアルゲリョは8度(7KO)の防衛を達成した後、タイトルを返上。だが、アルゲリョの祖国ニカラグアは1979年に共産革命が発生したので、アルゲリョは稼いだ資産を全て没収される不幸な目に遭いました。それでも、米国に亡命しながらアルゲリョは戦い続けました。
その後1981年に、ジム・ワットの持つWBC世界ライト級王座に挑み、ダウンを奪っての15回判定勝ち。3階級制覇を果たします。このタイトルは4度(4KO)の防衛を果たして返上。そして、史上初の4階級制覇を賭けて、WBA世界Sライト級王者のアーロン・プライアーに挑んだ一戦は、ボクシングの歴史に残る素晴らしいファイトでした。アルゲリョはプライアーには2度挑戦していずれもKO負けで、念願の4階級制覇は達成できませんでした。ただ、アルゲリョを評価したいのは、記録だけを狙うのであれば、WBC王者のブルース・カリー(1983年7月7日、大阪で赤井英和にKO勝利で防衛)に挑戦する方が勝機が見込まれたので賢明でしたが、あえて強い方のプライヤーを選択した事です。たしかにアルゲリョは負けはしたけど、ファンが見たいカードを実現させたその心意気にはボクサー冥利に尽きるし、勇敢に戦ったのも立派でした。この心意気こそ、レナードやデラホーヤも見習って欲しかったですね。
アルゲリョは近年は政界に進出して、首都マナグア市の市長に当選。昨年の北京五輪ではニカラグア選手団の旗手を務めました。アルゲリョには内戦で傷ついた祖国の復興の為に、多くの活躍を期待されてましたが、まさかこのような事態になるとは・・・。本当に残念でならないです。
昨年9月15日にパシフィコ横浜で衝撃的な4回TKO勝利で新井田豊からWBAミニマム級王座を奪ったローマン・ゴンザレスは、幼い頃にアルゲリョから指導を受け、「母国の英雄の再来」と称されるまで成長しました。ゴンザレスは今月14日には、元WBC世界同級王者の高山勝成を相手に神戸で2度目の防衛戦を行います。きっと、アルゲリョも、天国で自身の後継者の戦いぶりを見守ることでしょう。
謹んで心よりご冥福をお祈りいたします。
☆ロイヤル小林を悶絶させた戦慄の一戦
☆壮絶に敗れたアーロン・プライアー戦(第1戦)
胸には銃弾の跡があり、地元メディアは自殺だと伝えているが、当局の正式発表はない。
アルゲリョ氏は1968年からボクシングを始め、3階級で世界タイトル獲得を達成。ボクシングの世界殿堂入りを果たし、2008年の北京五輪ではニカラグア国旗を掲げて行進した。
2005年からマナグアの副市長を務めた後、昨年11月に市長に選出されたが、不正があったとして選挙結果に異議を唱える声も出ていた。うつ病にかかっていたとの情報もあり、最近は休職中だったという。
報道によると、政府は3日間の服喪を宣言し、新大統領の就任式に出席するためパナマ訪問を予定していたオルテガ大統領は、訪問を延期した。
〔CNN 2009年7月2日の記事より・写真はロイター〕
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あまりにも突然の訃報で、ただ驚きの一言です。私はアレクシス・アルゲリョはとても大ファンですし、今でも憧れのボクサーですので、今回の悲しい事件は本当にショックです。紳士的なアルゲリョには日本でもファンが多く、きっと世界中のボクシングファンが悲しみにくれているのでしょう。
アルゲリョは極めて正統派のボクシングスタイルで、その痩身長躯の体型からは想像できないような破壊的なパワーで次々と対戦相手をマットに沈めました。自慢の強打でフェザー級(WBA)、Sフェザー級(WBC)、ライト級(WBC)の世界3階級制覇を果たしました。1970年代に中南米諸国は、世界の中軽量級の覇権を完全に掌握しましたが、アルゲリョはまさにその黄金時代を創った英雄であり、中南米を象徴する偉大なボクサーです。1975年10月12日、蔵前国技館でロイヤル小林を相手に3度目の防衛戦で戦ったのが、アルゲリョの現役時代の唯一の来日試合でしたが、この一戦は日本のボクシングファンに強烈な印象を残しました。「KO仕掛人」と呼ばれたロイヤル小林を5回にボディブローで悶絶させたシーンは、あまりにも衝撃的です。のちにロイヤル小林が「アルゲリョのパンチは氷の塊で殴られているようだった」と語っていたのは有名です。
アルゲリョは1974年2月16日、パナマでの世界初挑戦こそエルネスト・マルセル(柴田国明やスパイダー根本と対戦)に小差の判定で敗れますが、同年11月23日、ルーベン・オリバレス(バンタム級時代に金沢和良との死闘でも有名)から13回逆転KO勝利でWBAフェザー級王座を奪取。4度の防衛戦を全てKOで勝利しました。1978年1月23日、11度防衛中のアルフレド・エスカレラ(柴田国明から王座を奪い、バズソー山辺の挑戦を2度撃退)に挑戦し、13回TKO勝ちしてWBC世界Sフェザー級王座を獲得して2階級制覇を果たします。減量苦から開放されたアルゲリョは8度(7KO)の防衛を達成した後、タイトルを返上。だが、アルゲリョの祖国ニカラグアは1979年に共産革命が発生したので、アルゲリョは稼いだ資産を全て没収される不幸な目に遭いました。それでも、米国に亡命しながらアルゲリョは戦い続けました。
その後1981年に、ジム・ワットの持つWBC世界ライト級王座に挑み、ダウンを奪っての15回判定勝ち。3階級制覇を果たします。このタイトルは4度(4KO)の防衛を果たして返上。そして、史上初の4階級制覇を賭けて、WBA世界Sライト級王者のアーロン・プライアーに挑んだ一戦は、ボクシングの歴史に残る素晴らしいファイトでした。アルゲリョはプライアーには2度挑戦していずれもKO負けで、念願の4階級制覇は達成できませんでした。ただ、アルゲリョを評価したいのは、記録だけを狙うのであれば、WBC王者のブルース・カリー(1983年7月7日、大阪で赤井英和にKO勝利で防衛)に挑戦する方が勝機が見込まれたので賢明でしたが、あえて強い方のプライヤーを選択した事です。たしかにアルゲリョは負けはしたけど、ファンが見たいカードを実現させたその心意気にはボクサー冥利に尽きるし、勇敢に戦ったのも立派でした。この心意気こそ、レナードやデラホーヤも見習って欲しかったですね。
アルゲリョは近年は政界に進出して、首都マナグア市の市長に当選。昨年の北京五輪ではニカラグア選手団の旗手を務めました。アルゲリョには内戦で傷ついた祖国の復興の為に、多くの活躍を期待されてましたが、まさかこのような事態になるとは・・・。本当に残念でならないです。
昨年9月15日にパシフィコ横浜で衝撃的な4回TKO勝利で新井田豊からWBAミニマム級王座を奪ったローマン・ゴンザレスは、幼い頃にアルゲリョから指導を受け、「母国の英雄の再来」と称されるまで成長しました。ゴンザレスは今月14日には、元WBC世界同級王者の高山勝成を相手に神戸で2度目の防衛戦を行います。きっと、アルゲリョも、天国で自身の後継者の戦いぶりを見守ることでしょう。
謹んで心よりご冥福をお祈りいたします。
☆ロイヤル小林を悶絶させた戦慄の一戦
☆壮絶に敗れたアーロン・プライアー戦(第1戦)