うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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ACLのレギュレーションについて考察する

2011年05月14日 | サッカー(クラブ)
2003年から、それまでの3つの大会を統合して創設された、サッカーのアジアのクラブ王者を決めるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)。さすがに、本場の欧州チャンピオンズリーグとは規模や歴史も違いがあり過ぎるので、全てを模倣させるのは絶対に無理があります。とはいえ、欧州CLと比較すると、ACLには摩訶不思議なレギュレーションがいくつか散見し、違和感を覚えるものがあります。

問題と思われるレギュレーションをいくつか列挙するならば、まず1つ目は、グループリーグを東西で分割して運営していることです。ACLが改革された2009年以降、アジアサッカー連盟(AFC)は大会の価値を向上させる為に、各国のリーグの実力や運営面などを審査し、出場枠を各国に振り分けてます。ACL参加の基準に満たない国は、下部大会の「AFCカップ」「AFCプレジテントカップ」に参戦となります。なので、ACLは、AFC全加盟46ヶ国が参加する大会ではなく、基準を満たして選ばれたアジアのトップクラスの10ヶ国のみしか事実上参加してません(なお、それ以外の国は、プレーオフを勝ち抜いて参戦する道はあり)。アジア各国は、トップクラスと底辺では実力に大きな開きがあるので、ミスマッチを防止する為にも、実力に応じたカテゴリーの大会を実施するのは、お互いにとって有効な強化になるので当然の措置です。

ただ、東西に分割すると各5ヶ国だけとなります。今大会の参加国の内訳は、東地区が、日本・韓国・中国・豪州・インドネシア。西地区は、サウジアラビア・イラン・UAE・カタール・ウズベキスタン。この10ヶ国を基準に照らして出場枠を配分。最終的に、参加32チームを4チーム×8組(東と西で各4組ずつ)に分けて、約2ヶ月半近くH&A方式でリーグ戦を実施します。やはり、東西を分割しているので、各地区ともどうしても同じ国との対戦ばかりになり、多様なカードを組めないのが課題です。ただ、サッカーのアジアの管轄区域は、豪州も含んでいるのでかなり広大となり、常に長距離移動や時差の問題が付きまといます。更には、気象条件や地形も各国によって異なります。やはり、飛行機で気軽に赴ける欧州とは地理的な条件が明らかに異なります。なので、グループリーグの段階で東西合同で実施したら、各クラブとも体調面や財政面で多大な負担を強いられます。本来なら、東西合同で実施するのが理想ですが、やはり現実的には難しいのでしょう。

2つ目は、決勝戦を一発勝負の形式にしていることです。ACLの決勝戦は、2003~2008年まではH&A方式で実施されてました。しかし、2009~2010年の2年間は中立地での一発勝負の形式へと変更し、この2年間は国立競技場で決勝戦を開催しました。変更理由は、欧州CLの決勝戦の形式を模倣したからです。だが、この試みは上手くいきませんでした。名実ともに世界最高峰である欧州勢同士のクラブなら中立地でも観客動員やスポンサー集めには苦労はしませんが、如何せん名前すら知られてないアジアのクラブ同士だと、やはり興行的に苦戦を強いられました。なので、今年から2年間は、決勝戦に進出した2チームが試合会場を決める為に事前に抽選を行い、その勝者の会場で1試合のみ開催へと変更となりました。とはいえ、このルールは抽選で負けた方が圧倒的に不利なので、明らかに不公平です。結局、2013年から決勝戦は再びH&A方式に戻される予定です。

3つ目は、決勝トーナメント1回戦の形式です。このラウンドも決勝戦と同様に、H&A方式ではなく、一発勝負の形式です。ただし、開催地はグループリーグ1位の国となります。本来なら、欧州CLのようにH&A方式で戦うのが正常な姿なので、公平とは言えないです。ただ、中東諸国のリーグは「秋春制」なので、6~8月の間は主に休養&準備期間となります。対照的に、東アジア諸国は「春秋制」ですが、やはり真夏に熱帯の国に移動して試合するのは、健康上問題があるので回避しているのでしょう。つまり、決勝トーナメント1回戦を5月中に1試合のみを組み込んでいるのは、H&Aの2試合分の日程を確保出来ず、各国リーグの事情を考慮したのではと思われます。また、決勝トーナメント1回戦がH&A方式だと、グループリーグで首位通過を目指す必要性も薄くなり、かえって消化試合が増えて面白みが無くなる可能性もあります。おそらく、この一発勝負の方式に関しては、サッカーファンの間では意見が分かれるのではと思いますね。

4つ目は、決勝トーナメント1回戦の対戦相手が、予め決められていることです。欧州CLの場合、グループリーグ終了から決勝トーナメント1回戦の第1戦までは、約2ヶ月間空きます。つまり、準備期間に余裕があります。なので、グループリーグを終えてから、決勝トーナメント1回戦の抽選を実施します。なお、欧州CLの決勝トーナメントは、各ラウンドごとに抽選を行います。しかし、ACLの場合、グループリーグ終了から決勝トーナメント1回戦までは、たった2週間しか空きません。決勝トーナメント1回戦への準備期間があまり無いので、各組とも予め戦う相手が決まっており、抽選を実施しません。なお、ACLは準々決勝以降に関しては、決勝トーナメント1回戦から期間が空くので抽選を実施します。日程上仕方が無いとはいえ、やはり予め対戦する相手が分かっているとトーナメントとしての面白さが減りますし、他のカードへの興味も薄れがちになります。この気持ちは、高校野球のオールドファンの方なら分かるでしょう。

そして、5つ目は、決勝トーナメント1回戦も東西別々に実施することです(なお、準々決勝以降から、東西同士の対戦はあり)。ただでさえ、現在のACLは参加資格を強豪国に限定しており、同じ国から最大4チームも参加します。グループリーグと同様に、決勝トーナメント1回戦でも東西別々に実施するのだから、自ずと対戦相手が限定されて新鮮味が薄れます。更には、同国同士で対決する可能性が必然的に高くなります。つまり、トーナメントの早い段階から、同じ国同士で潰し合う展開となります。現行の形式に改革した2009年以降のACLでは、決勝トーナメント1回戦の段階で同国同士の対決が、2009年が2試合、2010年が1試合、2011年が2試合と必ず発生してます(なお、この5試合のうち、日本勢同士は2試合あります)。一方、準々決勝に関しては、同じ国から2チーム進出した場合は予め対戦せず、3チーム以上だと抽選はオープンになるので不可思議です(なお、準決勝以降は同国同士の対戦はあり)。対照的に、欧州CLは、準々決勝以降は同国同士の対戦はありますが、決勝トーナメント1回戦だけは同国同士は予め対戦しない規定となってます。なので、ACLはあべこべなやり方に感じますね。

たしかに、同国同士の対決は、確実に勝者となった1チームが上のラウンドに進めます。反面、決勝トーナメント1回戦の段階で実現するとスリルが無くなって若干興醒めするし、何しろ非常に勿体なく感じます。やはり、国際大会である以上、様々なタイプの外国のチームと真剣勝負を戦ってほしいですし、同国同士の対決は高いレベルの段階において見たいのが心情です。もちろん、決勝戦で日本勢同士の対決が実現したら本当に最高ですけど。なので、来年以降のACLは、決勝トーナメント1回戦の段階から東西対決をするように改革してもらいたいです。


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