電脳くおりあ

Anyone can say anything about anything...by Tim Berners-Lee

円高ドル安は何故問題か?

2004-12-08 22:33:10 | 政治・経済・社会
 ドルの特徴として次の3つが上げられる。第1は、ドルは国際決算のデファクトスタンダードな通貨として存在していることである。第2は、ドルはアメリカが発行しており、そのアメリカは大量の国債を発行し日本をはじめとして、半分近くをアメリカ以外の国の投資家が保有していることである。第3は、ドルが国際決算の通貨と使われると言うことは各国の貿易の価格に大きな影響を与えると言うことである。そのために、常に安定が要求されてきた。しかし、今日の朝日新聞の「ドル離れ、じわり 『ユーロ資産』へ動き」という記事は、ドルの安定を脅かす事態が発生しつつあると指摘している。
 アメリカは、日本と同じように巨額の財政赤字に陥っている国であると同時に、日本とは違って多額の経常赤字をももち、いわゆる「双子の赤字」を抱えている。これがなかなか改善されないので、嫌気がさしていると言うことでもある。このため、各国の通貨当局は、すでにドルからユーロへの資産の入れ替えを進めていると言われている。最近では、中国やロシアもドルからユーロへの振り替えを始めたという話もあるという。

 「日本のように巨額なもの(米国債)を持っていると、全体の為替秩序に与える影響が非常に大きい。しかし、あまりリスクを背負い込んでもいけない」。谷垣財務相は7日の記者会見で、外貨準備でドル以外の通貨に移す可能性について、苦しい胸の内を明かした。

 日本は米国債の発行残高の1割近くをもつとされる世界一の保有者だ。ドル下落が続けば、保有資産の評価損が膨らむ。そうかと言って、ドル資産を売るとも言えない。そんな中での「ドルが下落を続ければ、巨額の資産が米国から離れるだろう」とする自民党の与謝野馨政調会長の発言内容が、イギリスで取りざたされた。いま、日本の動きを世界が注目しているのかも知れない。

 日本も現在、これから景気の上昇の中、財政改革に取り組もうとしているときである。いまドルが急落すると企業収益が悪化するおそれがあるかも知れない。しかし、日本は1ドル80円になったときでも、耐えられた。今は、少々のドル安円高など問題にすべき時ではないような気がする。国際通貨の秩序をしっかりさせると同時に、日本もアメリカも自助努力で財政を立て直していかなければならないときである。各国の政治的努力で通貨の価値を支えているのは、もともとおかしいのだ。通貨の価値は、それこそ神の見えざる手に任せるべきだし、幸田真音著『日銀券』の言葉で言えば、「見えざる手に、あなたも手をさしのべて」という言うわけだ。

 小さな政府を作り、できるだけ「市場の論理」に任せるというのが、新自由主義の精神だったが、実際は市場は政治的な思惑と国際的な投機でゆがんでしまっているのではないだろうか。ドルが円に対してもユーロに対してもやすくなっているのは、「市場の論理」ではないだろうか。「円高ドル安」を是認するというようなことを考えてみるべき時が来ているのかも知れない。
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