奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

虫を調べる ムスジイトトンボ、アオモンイトトンボ

2021-05-31 16:40:23 | 虫を調べる
この間から、イトトンボの写真を撮っていたのですが、意外に同定が難しいので、一度、まとめておくことにしました。今回はクロイトトンボ属のムスジイトトンボ、アオモンイトトンボ属のアオモンイトトンボに関してです。アオモンイトトンボ♀とアジアイトトンボ♀とが大変似ている場合があって、はっきりとは分からないのですが、とりあえず載せておきます。

参考にしたのは、次の文献です。
1)石田昇三ほか、「日本産トンボ幼虫・成虫検索図説」(東海大学出版会、1993)。
2)尾園暁ほか、「日本のトンボ」(文一総合出版、2012)。
3)青木典司、「神戸のトンボ」(身近な生きもの調査運営委員会、1998)。

文献1)には検索表が載っています。そのうち、クロイトトンボ属とアオモンイトトンボ属に至る部分を抜粋すると以下のようになります。

イトトンボ科
①体は金属光沢のある緑色ではない
②体長25mm以上
③前額にはっきりした稜がない;翅胸は黒色条があるか、または、無斑で淡褐色
④眼後紋がある
 ⑤a 眼後紋は左右がつながる
   ⑫縁紋は前翅と後翅がほぼ同じ アオモンイトトンボ属(赤色型♀)(3種)
 ⑤b 眼後紋は左右が離れる
   ⑥眼後紋は著しく大きくはない
    ⑦a 翅胸の第1側縫線部背側の斑紋はスプーン形に先が広がるか、円形斑として離れる
      ⑧♂腹部第2節の黒色斑は前縁に届く;♀の前胸に後方への突出部がない クロイトトンボ属(5種)
    ⑦b 翅胸の第1側縫線部背側の斑紋は先が広がらない
      ⑨斑紋は細いが明瞭にある;眼後紋は円形か、洋梨形または三角形
      ⑩斑紋は線状;♀腹部第8節腹面に刺状突起がある
      ⑪眼後紋は小さいか、まるみのある三角形;♂腹部第10節後背部に突起がある アオモンイトトンボ属(♂と緑色型♀)(3種)

クロイトトンボ属は①→②→③→④→⑤b→⑥→⑦a→⑧の順に調べていくと、クロイトトンボ属であることが確かめられます。眼後紋があって、それが左右で離れていて、さらに、あまり大きくはない。また、翅胸の第1側縫線部背側の斑紋はスプーン形に先が広がることなどが重要なポイントです。

アオモンイトトンボ属♀には緑色型(同色型)と赤色型(異色型)という色変化があるため、検索表でも二つに分かれます。♀赤色型は①→②→③→④→⑤a→⑫の順に調べることになり、眼後紋があってそれが左右でつながるというところがポイントです。♂と♀緑色型は①→②→③→④→⑤b→⑥→⑦b→⑨→⑩→⑪の手順で確かめられます。途中まではクロイトトンボ属と同じで、翅胸の第1側縫線部背側の斑紋の先が広がらないところが違います。さらに、眼後紋が小さくて、円形などがポイントになります。

こうして属までたどり着いた後は種を調べていきます。



まずは、クロイトトンボ属のムスジイトトンボだと思われる種です。



先ほどの属の検索からクロイトトンボ属だと思われますが、紛らわしいムスジイトトンボ、セスジイトトンボ、オオイトトンボの3種について、上記3つの文献から種の見分け方の部分を抜粋してきました。







表に書いた特徴と各部の写真を比べてみました。これはムスジイトトンボ♀だと思われるのですが、一番、特徴的なのは文献2)に載っている、「眼後紋は細長く・・・♀前胸背面中央部は富士山型に凹む」というところです。この2点は一番上の写真から確かめることができます。さらに、文献3)に載っている、「肩縫線の黒条内に淡色部があること」という特徴もセスジイトトンボとは重なるものの重要なポイントではないかと思います。ということで、これはたぶん、ムスジイトトンボ♀で間違いないでしょう。



次はこのイトトンボです。腹部第8節全体と第9節の一部が青いことでアオモンイトトンボであることは確かです。



アオモンイトトンボの特徴を文献1)~3)から抜き出してみました。







これは♂ですが、特徴としては眼後紋が小さくて丸いというところです。









これは別の個体ですが、腹部第9節の青色部分が先ほどの個体と比較すると広くなっています。でも、眼後紋は小さくて丸いので、やはりアオモンイトトンボ♂のようです。









これも今までの個体とよく似ていますが、実は♀です。♀の緑色型(同色型)というのは♂と一見すると違いが分かりません。副性器の有無や産卵管の存在を見ると、♀であることが分かります。さらに、詳しくみると、腹部第8節腹側にささくれ状の棘も微かに見えています。




最後は橙色のイトトンボで、どれが眼後紋なのかよく分かりません。頭部後半の淡色部分全体を眼後紋とすると、先ほどの属の検索表によれば、これもアオモンイトトンボ属になります。実際、アオモンイトトンボ♀の赤色型(異色型)は未熟なときは橙色、その後、成熟に伴って緑褐色~濃褐色に変化するので、アオモンイトトンボの可能性があります。



でも、図鑑を見ていると、アジアイトトンボ♀とも非常によく似ています。アジアイトトンボは一般的に小型なので、たぶん、違うだろうなと思ったのですが、図鑑に載っている体長を見るとそれほど大きくは違いません。それで、両者の違いをまとめてみました。







実は、文献1)に載っている種の検索表を用いたら、初め、アジアイトトンボになってしまいました。ポイントは「腹部第2節の黒色条は前節に続く」というのを第2節全体が黒いと解釈したからです。でも、これは他の文献の記述を見ると、「腹部第2節の黒色条は第1節の黒色条に続く」と解釈しなければならないのではと思いました。つまり、腹部第1節が黒いかどうかが問題です。上の写真を見ると、黒色条は腹部第2節全体を覆っているのですが、第1節には黒色条はありません。それで、たぶん、これはアオモンイトトンボの未熟な♀ではないかと思いました。

本来は採集して調べたいのですが、あまりに数が少なくて採集するのは悪いなと思って写真だけで同定を試みました。最後の橙色の個体以外はたぶん、あっていると思いますが、イトトンボもなかなか難しいですね。これからもときどき調べていきたいと思います。

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