社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「驚きの介護民俗学」六車由実(2012)医学書院

2013-02-02 13:57:46 | 民俗学
民俗学の研究者である筆者が特別養護老人ホームの介護職となり、民俗学の視点から「高齢者を理解する」こと、そして民俗学が介護(ケア)に貢献できないか…等を試みている。
民俗学の特徴である「聞き書き」は、「人を立体的に理解する」ことにとても貢献していると感じた。「話を聞くこと」「寄り添うこと」について、今一度深く考えさせられた。

引用
・(筆者が介護の世界で疑問に思ったこと⇒)介護や福祉のコミュニケーション論では、語られる言葉による言語的コミュニケーションに比べて、態度や表情、身振りといった言葉以外を情報としてやりとりする非言語的コミュニケーションが過剰に重視されがちではないか(p.96)
・民俗学における聞き書きのように、それにつきあう根気強さと偶然の展開を楽しむゆとりをもって、語られる言葉にしっかりと向きあえば、おのずとその人なりの文脈が見えてきて、散りばめられたたくさんの言葉が一本の糸に紡がれていき、そしてさらにはその人の人生や生きてきた歴史や社会を織りなす布が形づくられていくように思う。語られた言葉を言葉通りに理解すること、もしかしたら認知症の利用者たちもそう望んでいるのではないだろうか(p.111)
・喪失の語りには二通りあるのかもしれない。ひとつは、未だ絶望の淵にいるときの血を吐くような救いを求めた語りであり、もうひとつは、絶望を時間の経過とともになんとか乗り越えてからの語りである(p.186)


本書でも指摘しているように、顔伍する側には時間やこころのゆとりがあれば、より一層利用者を理解し、そして穏やかにケアが出来るだろう思う。介護職の人数を増やすか、もしくは筆者にような「聞くこと」を得意とし、そして時間を費やせる人材(ボランティア)を配置するか…。

当事者が語る言葉をそのままのものとして理解する…筆者が述べていることは、おそらくナラティブの考えに通じるであろう。それをいかにして、腰を据えて実践できるか。職能教育と職場環境…多くの課題が未だ現場にはあると痛感する。

驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)
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医学書院
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