都市と楽しみ

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秘宝館という文化装置(妙木忍):文献調査が主体で難がある

2014-08-12 05:43:41 | マクロ経済
 筆者は77年生まれ。本社書では「日本で初めての」秘宝館は1972年10月会館の元祖国際秘宝館伊勢館としているが、1969年4月にオープンした徳島県の男女神社秘宝館ではないだろうか。( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%98%E5%AE%9D%E9%A4%A8 ) 最近、若い研究者で風俗を文献調査主体に行う事例が多いが、どうも「又聞き」が多く、実体験に欠けており面白みがなく、知見に乏しい。

 本著作は70年代の社会とツーリズムの発展、変容を踏まえ論じているが、一泊宴会型の会社旅行の分析が足らない。また、観光の分析(個別化、海外との競合、年齢・性別、目的、時期 など)も不足している。

 知見があるとすると
・国際や医学をテーマに入れた
・展示物の種類:人形、医学模型、はく製、春画、道祖神、映画、土産、おみくじ、水子供養、大観音像について館別の表は面白いが分析があまい→医学と性信仰は言い訳に利用か
・秘宝館の展示は東京創研と東宝美術という映画関連、島津製作所子会社が人体模型
・来館者(利用者と記しているのは理解できない)は「団体・男性・年配」から最近の嬉野では「カップル・女性・20代」に変化
・コレクション系とレジャー系に大別
 
 用語、分析の深耕、時代背景との相関など欠点が多く、読むに値するとは言い難い

 なお、以下は本書の補足の考察である

①秘宝館の名前が男女神社秘宝館を元祖とした場合、どうやって伝播したか
→当時のメディアの状況からして、業界誌などがあったのではないか

②秘宝館はキワモノであったのでは
→70年代、秘宝館は隔地にあったが「おじさんの行くところ」、「幽霊屋敷のようなもの」、「大人のおもちゃを売っているところ」というのが大学生や若いサラリーマンの認識であり近づきもしなかった。しかも、色街ほどの目的性もなく、中途半端な位置付けでは

③収支は悪いのでは
→集客が20万人/年がピークとして事例にあり、近年は2万人/年となっている。単価を1,500円/人としても収入は3億円/年と3千万円/年であり、数人の人件費や建物維持管理、展示物更新は難しいレベルでとなる。しかも、観光地なら金、土、日の集客に頼るためピーク性が高い。むしろ、土産物店、飲食店で稼いだ方が儲かったのでは。オーナーの趣味性が高い施設であろう。むしろ、観光地なら水族館が教育性もあり、初期投資は大きいものの収益は安定していた(その証として建替えが多い)。

 秘宝館とは、一世を風靡したご近所観光のヘルス・センターの次の世代で会社での一泊宴会に付随した観光地にあるキワモノ施設と思われる。

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