「ベストセラー」と云う言葉は、
特に断らない限り、良く売れる本の事を云う。
そのベストテラー、
本が良く売れると云うことは、
その内容が面白いと云う事が一番だが、
その時代、時代の、世間の傾向、人々の興味のあり方をも示している。
例えば、「国家の品格」と云う本が売れた時は、
経済のグローバル化が叫ばれ、無制限で過酷な経済競争が進み、
その結果、
人々には疲労感が漂い、
「経済競争の野放し状態」に、反発心が芽生えていた時だった。
つまり、「品格」と云う名で、
法律による、ある程度の規制を求め、
また、
一部の人々の、
無軌道とも思える暴走的な経済行動に対し、
精神的な規制、すなわち「倫理観による縛り」を求めていたのだと思う。
最近だと、
村上春樹氏の新作が発売と同時に売り切れ状態が続く大ヒットとなったのは、
作品の内容もあろうが、
単行本の書下ろしであるにも拘わらず、
題名以外の情報を殆ど流さないと云う、情報操作作戦が大きいと云う評判がある。
つまり、前もって内容の見当が付かないことが、
読者層の好奇心と飢渇感をあおり、
「並ばないと喰えないラーメン屋」のような状態になったわけだ。
カネさえあれば何でも簡単に手に入る時代に、
「手に入りにくい状態」を演出することによって、商品にプレミアム感を上乗せした勘定だ。
他の業界では良くある策だが、
出版界で、それも、文学作品では珍しいことで、それゆえに成功したのだろう。
しかし、売れたと行っても、上下で100万部、
此の本「1Q84」が、世の中に与える影響と云うのはどの程度なのだろう。
なにしろ、
文学作品が大衆をリードするなどと云う事は、はるか昔のはなし、
今はナント云ってもテレビ、
なにしろ、テレビなら視聴率1パーセントでさえ、
単純計算で、国民の100万人が見たことになるのだから。
村上氏の大ベストセラーも、
視聴率で云えば「1%」にしか過ぎないことになってしまう。
視聴率を気にしないと思われる、
教育テレビの番組でさえ、数の上では、ベストセラーを凌駕してしまいかねない。
しかもそれは、
日々、何十時間も流れ続けているのだから、・・・、
その上に、インターネットと来れば、
ますます、「ベストセラー」の重みは薄れるしかないのではありますがね。