「とりあえず」と頼んだ生ビールに口をつける間もなく、友が入ってきました。
やぁ、と手を上げ隣に座って、杖をママにあずけます。
「まぁ、見事な龍の頭、立派なステッキですね」、
「うん、特注品、
子供たちが快気祝いにプレゼントしてくれてね・・・」。
少し照れて見せ、
その実、自慢していると私には分かるのですが、
そのあたりの正直さがこの友の可愛気のあるトコロ。
まずは乾杯して、
「お前も黄門さんになったか」と杖のことを冷やかしたら、
「なに、片足で立てなくなっただけだよ」
「ン、?」と尋ね顔になったら
「このごろ片足で立つとふらつく、
だから歩こうとして片足あげると不安定になる」
「ウン」
「何かにつかまれば安定するが、
屋外ではそうもいかない、 だから杖」
「フーン、でも杖ぐらいでは頼りないだろう」
「それがそうでもない、杖に寄りかかるのではなく、
ちょっと地面にあてがうだけでケッコウしっかりするんだ」
「そんなものか」
「そんなもの」
「そうか」
「そうなんだ」
「つまり、財布を落としたときの用心に入れておく、
免許いれの千円札みたいなものだな」
「そうそう」 (笑)