漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

撃てない警官

2014年01月28日 | 
関西に、
Hさんと云う朝のラジオで活躍するタレントさんがいる。

もう長老と云ってよい御年だが、
この方の番組の売り物のひとつが映画解説。

いや、解説と云うより紹介か。

封切り間もない話題作を、立て板に水、
ウットリ聞きほれるような名調子で、微にいり細にいり入り語り尽くす。

私はむかし、
たまたまこの名解説をクルマの中で聞き、
次の休みに映画館に行った処、

映画が始まって15分もせぬうちにシマッタと気が付いた。

なにしろ、映画の中身は、
微に入り細にわたり承知しているのだから。

つまりは、ラジオで聴いたデーゲームを、
夜、録画でもう一度見ているようなものである。

しかもオープニングから結末まで聞かされてしまっているのだから救われない。
映画のできは悪くなかったと思うが、見た跡には味気なさだけが残った。

後に、その状態を
「ハマムる」と云うのだと映画好きの知人から教えられた。

彼に言わせると、
Hさんの「解説」は、
金を出してまで映画を見る気のない人向けのものなのだそうである。

しかし、そう云う体験は私だけでは無かったらしく、
Hさんもその後、「映画解説」を少し工夫して話すようになったらしい。

サテ、なぜ私がこんなことを書いたかと云うと、
最近、とても気に入った短編小説を読んだからである。

誰かに教えたくって仕方ないのだが、
うかつに褒め過ぎて“ハマムる”のを畏れる。

それで、
安東能明/著「随監」と、著者と題だけ記しておく。


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○【撃てない警官】
安東能明/著 撃新潮文庫 ¥578.-

※ 日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録。




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