●人形が生きて働いた事 ③
きのうの続き。
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ここまで当たると、
坊さまも何やら気味悪くなり、人形を取り出し草むらへ投げ捨てた。
そのまま行こうとすると、
後から「ととさま、ととさま」と声がする。
ふり返ると、
人形がピョンピョンと飛びはねながら追いかけてくる。
その動きはバッタのようで、
たちまち追いつき、坊さまのフトコロに飛び込んでしまった。
なんど捨てても同じ、
「もはやととさまの子なれば離れぬ」としがみついてくる。
坊さまも「どうも困った貰い物をした」と思いながら仕方なく旅を続けたが、
次の日訪ねた寺にて、
夜も更けてから、
人形に気付かれぬよう、そっと起き出し、
和尚にくわしく事情を語り、
相談した処、
「それには致しようがござる」と教えられた。
明くる日の道中、川の渡しまで来ると、
坊さまは裸になり、着物をたたみ頭の上に乗せて帯でくくりつけると、
手に笠を持ち、
その中に人形を乗せ、
ヒザを越えるほどの深みまで来ると、
教えられたとおり、
溺れる真似をして笠を放せば、笠に乗ったまま人形も流れ行き、
その後は何もなかったと、
隣村の爺さまが旅のお坊さまから聞いたと云うことじゃ。
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