●人形が生きて働いた事 ②
きのうの続き。
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さて、一里ばかりも歩き、 (一里→約4㎞)
ようよう里も近づいたと思う頃、
背中の風呂敷包みの内より、
人形が声を出だし、
「ととさま、ととさま」と呼ぶので、
不思議な事と思いつつ、「何か」と答えると、
「あの向うより来る旅の男、つまづきて転ぶべし、
さすれば何にても薬を与えるペし。
さすれば、金貨で一分の礼を致すべし」と合点の行かぬことを言い出したが、
その言葉も終らぬうちに、
旅の男が倒れて、ヒザなど押えて呻いているようすではないか。
坊さまがあわてて駆け寄り、
打ち身の薬など与え介抱した処、
快くなったとみえ金貨一分を取り出してくれようとする。
「いらざる気づかい」と遠慮したが、
「ぜひにも」と引かぬゆえ、ともかくも受け取った。
そうこうして又しばらく行くと、
馬に乗って身なりの良い旅人の釆るのが見えたが、
またまた風呂敷の内より、
「ととさま、ととさま、
あの旅の者、馬より落つべし、
薬など手当てなされば、このたびは二分くれ申すペし」、
その声が終わらぬ内に果たして落馬し、鼻血など流しているようす。
あれこれと介抱すれば、二分くれた。
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