一昨日の続き。
せっかく平和な家庭を得たと思ったのに、
夫の横死、養子を迎えての跡継ぎもならず、小野田家は離散の運命。
「飛沢町若松屋金七と云ふ者、日頃懇故、
之を憐み当分母子共、先ず我方へ、引取りかくまひ、置ける」。
「たか」も懇意にしていた出入りの町家に身を寄せるが、・・・と云う辺りから。
尚、「たか」は、
十代で嫁いでいるので、このころでも、まだ二十歳そこそこ。
~~~~~~~~~~~~~~~
そのうちに、
近隣より出火して、急火の類焼に合い、
金七と共に大いに難儀の身と成りける程に、
金七が妻の弟、
金田町の竹本君太夫と云う者方へ、
久之進家内もろ共、暫(しばら)く係り居るも、
たか、心痛に絶えず、
ある時、日ごろの憂き思いを君太夫に、かき口説き語る、
「こままにては、
老母の養育いかんとも詮方なし、
所詮、我身を遊里へ売るより無し、その金子によりて、母を養いたし。
又、その遊郭とやらは、
諸国の人々の集まれる処と聞き及び居れば、
もしもの事に、夫の敵(かたき)の手掛かり、知るやもしれず。
この頼み、何とぞ周旋してたまわれ」と、
涙と共に頼めば、
君太夫も哀れをもよおし、
「さいわい手前は、
吉原よりも、たびたび御座敷かかる身なれば、」とて請けあう。
~~~~~~~~~~~~~~~
「竹本君太夫」は、名前から見て芸能者、
普通に考えれば、
義太夫を語る者の名前だが、
吉原の座敷で、「太鼓持ち」のような事もしていたのだろう。
せっかく平和な家庭を得たと思ったのに、
夫の横死、養子を迎えての跡継ぎもならず、小野田家は離散の運命。
「飛沢町若松屋金七と云ふ者、日頃懇故、
之を憐み当分母子共、先ず我方へ、引取りかくまひ、置ける」。
「たか」も懇意にしていた出入りの町家に身を寄せるが、・・・と云う辺りから。
尚、「たか」は、
十代で嫁いでいるので、このころでも、まだ二十歳そこそこ。
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そのうちに、
近隣より出火して、急火の類焼に合い、
金七と共に大いに難儀の身と成りける程に、
金七が妻の弟、
金田町の竹本君太夫と云う者方へ、
久之進家内もろ共、暫(しばら)く係り居るも、
たか、心痛に絶えず、
ある時、日ごろの憂き思いを君太夫に、かき口説き語る、
「こままにては、
老母の養育いかんとも詮方なし、
所詮、我身を遊里へ売るより無し、その金子によりて、母を養いたし。
又、その遊郭とやらは、
諸国の人々の集まれる処と聞き及び居れば、
もしもの事に、夫の敵(かたき)の手掛かり、知るやもしれず。
この頼み、何とぞ周旋してたまわれ」と、
涙と共に頼めば、
君太夫も哀れをもよおし、
「さいわい手前は、
吉原よりも、たびたび御座敷かかる身なれば、」とて請けあう。
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「竹本君太夫」は、名前から見て芸能者、
普通に考えれば、
義太夫を語る者の名前だが、
吉原の座敷で、「太鼓持ち」のような事もしていたのだろう。