りん日記

ラーとか本とか映画とか。最近はJ-ROCKも。北海道の夏フェスふたつ、参加を絶賛迷い中。

小説『夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦

2008-09-22 11:53:19 | 
『夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦著 角川書店 2006年11月刊


古風でユーモラスな独特の文体ととらえどころのない不思議な物語世界とが
特徴的な著者の作品。
小説誌で短編を読んだことはあったけど、長編をちゃんと読むのは初めてでした。

最初の1ページより少し抜粋。
 これは彼女が酒精に浸った夜の旅路を威風堂々歩き抜いた記録であり、また、ついに主役の座を手にできずに路傍の石ころに甘んじた私の苦渋の記録でもある。読者諸賢におかれては、彼女の可愛さと私の間抜けぶりを二つながら熟読玩味し、杏仁豆腐の味にも似た人生の妙味を、心ゆくまで味わわれるがよろしかろう。

新鮮だよね、単語の選び方、言葉づかい、リズム、漢字の多さ。
私は好きでした。
すごく心地よかった。
日本語の文章を読む快さを思う存分味わえた。
時々音読するとなおいっそう楽し。


ストーリーは、現代の(そう、これは明治でも大正でもなく現代の物語。の、はず。)
男子大学生である『私』が片想いする後輩の女の子の後を追いかけて、
春は夜の京都先斗町界隈、夏は下鴨神社参道で催された古本大市。。と、
季節ごと様々な場所に出かけていって彼女の目に留まらんと奮闘する話。
『私』と相手の女の子が交互に語り手となって進んでいきます。

『私』は女の子に恋いこがれているのに、女の子はそんなことはつゆ知らず、
行く先々で様々な不思議な人・不思議な出来事に出会いながら、
それを不思議とも思わず受け入れてふわふわと漂うように歩き続ける。

現実離れした筆致で現実離れした世界を描き、
唯一現実的な主人公の『私』を置いてけぼりにして物語はふわふわと進む。

いまどき珍しい文体を違和感感じることなく受け入れられて、
作者が描く、蜃気楼のような京都の町にすんなり入り込むことができたなら、
とても楽しめる本だと思いました。


ただね……私にはちょっと長かったかな……
春・夏・秋・冬の四つの章のうち、秋の学園祭だけは退屈せずに読めたけど、
ほかの季節は途中で少し飽きが来てしまいました。
起承転結がない展開だから、文体が心地いい、物語世界が楽しい、だけでは、
どんどんページをめくりたくなる!というふうにはいかなかったです。


それと、この女の子、不思議ちゃん好きの男の人が一方的に作り上げた、
完全に男の人むきのキャラクターなんだよね;
かわいいのはわかるんだけどさ。
このキャラクターが好きという女の人も多いだろうけどさ。
個人的にはちょっとイラッと来るのです、こういうタイプの子。
すごい惚れられてるのに全然気づかず、ほや~んとしてんの。
ほや~んとしてるだけなのに、なぜかいつも注目の的になっちゃうの。
うん、やっぱイラッとくるわ。ごめんね。。。


でも、かわいくて不思議なお話が好きで、
上で抜粋した文章に拒否反応起きないようでしたら、
読んでみるといいですよ。とても楽しい本です。


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